第10話 とある森の物語
「なぁー、ししょー。何やっでるんだ??」
仮面を被った男が奥で作業している女の子に話しかける。
女の子は振り向き返事を返す。
「なに、少し探し物だよ」
「そーか。なぁー、ししょー。仮面のちょうじが悪いるだが」
「あー、確かに悪そうだな。そこ置いといてくれ。後で直す」
「りょーかい」
男が仮面を外す。その顔はとても醜かった。
肉は腐っており、所々骨が見てる。
いわゆるゾンビと言われるものに近い形状をしていたのだ。
「よろじぐ」
「あぁ。君、前より話すの上手くなったな」
「あー、れんじゅうじてるから」
「喋るリッチはたまに居るがお前は上手い方だな」
「もどにんげんでずから」
そういい悲観した感じではなく冗談のように笑った。
それを見た女の子は何かいいこと思いついたいたずらっ子のような笑みを浮かべる。
「なぁ、君。このチョーカー嵌めてみてくれ」
「い、いや。えんりょじどぎます」
そう言いながらリッチは後ずさりしていく。
しかし目の前で浮いているチョーカーがリッチを追う。そして首にチョーカーが巻きついた。
『うわぁー。また変なのつけやがったロリババアめ』
「ほうほう。ロリババアか」
女の子の頭に血管が浮き上がる。
リッチはもう機能していないはずの心臓が慌ただしく動いているように感じ咄嗟に胸に手を当てる。しかしもちろんのこと心臓は動いていない。
『やべぇ。口に出てた??ししょー怒るとマジで何するのかわからんからいやなんだよ』
「じゃー、次はなにがいい??蛙にすればいいか?それとも悪魔を召喚させようか?」
『蛙だけは…蛙だけは…。悪魔はちょっと楽しそう。ってえ?また声出してた??馬鹿か俺。』
「いや、声は出てないぞ??」
『じゃー、なんで??』
「あー、そのチョーカーのせいだな。成功しているがやっぱ調整が無理なのか。君が考えてること全て垂れ流しになってしまう」
そう言いながら耳を塞ぐ女の子。
そして指を振るとリッチの首に着いていたチョーカーが外れ机の上に置かれる。
「ほい、調整終わった。さっきのチョーカーは調整できないからまた使いたいなら攻に教えてもらうんだな」
「なんであいつに?」
リッチは仮面をつけながら質問をする。
それを聞いた女の子は笑いながら答える。
「はっはっ。気づいてなかったか。あれは攻の祝典、念話を元に作ったやつだからな」
「へぇー。おい!攻起きろ!!」
リッチはそばにかざってあるとても豪華で派手な首飾りに話しかける。
『うっさいなぁー。なんだよ』
「なぁー、念話ってどうやってやるんだ??」
『あぁ??晃がなんでそれ知りてぇーんだよ??』
「いいから教えてくれよ。攻」
死体と首飾りが話す。
それを見ていた女の子はそこに加わった。
「攻、付き合え。私の研究の為だ」
『は、はい!!喜んで!!おい、晃早くやるぞ!!』
「お、おう」
さっきまでと同じ人間??いや、首飾りとは思えないほど順応に動く攻。
それを見てリッチの晃は一瞬戸惑う。
しかしいつもの事なので普通に話を進めた。
「念話の出来るチョーカーをつけたんだけど思ってること全部垂れ流しらしいんだわ。感覚がわからん」
『あー、わからん。俺の場合普通に喋ってるような感じだからな』
「ふむ、なるほど。念話は道具だから調整出来るということか。ふむふむ。それとも生まれつき魂と結ばれてないと難しい??いや、祝典の魔道具化は通常祝典よりもデメリットが大きくなる。その制約なのか??」
二人…(大変なので以下から二人と表記することにする)の会話を聞きボソボソと呟く女の子。
『カレン様。あのー、祝典にデメリットがあるんですか??』
カレンのつぶやきに素朴な疑問を持った攻は質問をする。転生者にとって祝典とは生まれつきのもの。それにデメリットがあると聞けば質問せずにはいられなかったのだ。
カレンは普通の顔をして答える。
「あるぞ。別に大したことないがな」
「例えば??」
「そうだな。よし、例えば君の祝典は魔導士だな??」
晃に向かって指をさす。
「はい」
「魔導士のデメリットは魔法への愛が強くなることだ。たまにこの魔法可愛いとか思ったりしないか??」
思い当たる節がありまくるせいで言葉が出ない晃。その様子を見ていた攻は晃をからかう。
『お前。変態だな…』
「べっ別にいいだろ!!かわいいんだから!!愛おしくてたまらないよ。特に闇魔法が可愛いね。どこが可愛いか言ってやろうか??」
『えんりょ』
慌てふためく晃。顔は仮面に覆われているためよく分からないが多分慌てている。
実際見たら皮がないので気持ち悪いだろうが…
そして逆に攻は落ち着いていた。
念話のデメリットは何となく分かるからだ。
「次に念話のデメリットだな。これは初の例だからわからんが恐らく喋れなくなることだろう」
ほらねって顔でドヤ顔を決める攻。
(ただしその顔は無いので誰にも伝わらないが…)
しかしその後に続く言葉があることは予想出来なかった。
「まぁ、祝典とは関係ないが何かしら道具に魂が宿ると起こる現象がある。元々の魂が道具に宿った場合と無垢の魂が宿った場合も例外なく道具扱いされることに喜びを覚える」
「………ッぷ。あははっ、わーはっはっ。腹痛てぇ。お、お前あーはっはっ。」
『そ、そんなことねーよ。別に普通だし!!』
そうと言いつつ攻にも心当たりしかない。
確かにカレン様に使われる時喜びを感じるのだ。何度幸せと思ったことか。
「お前も変態だな。あーはっはっ」
『あー、わかったわかった。認めるよ。正直心当たりしかない!!それでいいか』
煽り散らす晃に向かって少し怒りながらも自分もさっき言った手前歯切れが悪い返事をする。
「まぁ、ここまで言って私の祝典のデメリットを言わないのもフェアじゃないな。別に大したことないが」
二人のやり取りを遮るようにカレンが話し始める。
「私の祝典は魔道具士。魔道士の亜種と言ったところだろう。私以外に知らないが私は魔道具への愛情がすごい。恐らくそれがデメリットなのだろう」
「じゃー、要するにデメリットってそんな大したことない??」
晃が言う。確かにどれもデメリットというデメリットはない。道具が喋れないのは当たり前。魔法や魔道具に異常な愛があっても別に何も問題ないのだから。
しかしその結論はいささか早とちりと言わざるおえなかった。
「別にそういうことじゃないぞ。私や君たちが軽いだけだな。例えば我が親友レイヤの場合はデメリットに苦しんでいた…。長くなるがいいか?」
『別にいいですよ』
「なら話そう。レイヤは苦しんでいた。奴の祝典は大賢者。効果は四つの並列思考が可能というものだった。それにより魔法を4つ合わせた融合魔法などを使って無双していたのだ」
「何その能力すげぇー」
「しかしその力のデメリットはかなりきつかった。常に4つの思考がある状態だったのだ。それに苦しみ奴は生きることをやめたってわけよ」
「えっ」
『すみません…。カレン様に辛いお話を』
暗い雰囲気になる部屋。
しかしカレンだけは明るかった。
「なに、気にするな。別に奴が死んでも何も変わらん。それに200年生きたんだから生きすぎぐらいだ。私はまだまだ魔道具を作らないといけないからな」
「あ、あのー、全く関係ないんだけどそのたまに光る水晶も魔道具??」
晃の指の先には小さく光る水晶があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます