第2話 始まりの物語2

「それでは母上、夕暮れ時になったら父上の家に来てくださいね!!」

「はい。わかっていますよ。それでは気を付けて行ってらっしゃい」

「行ってきます」


元気に家を飛び出したナル。

今日はいつもよりテンションが高い。

それもそのはず。今日はナルの誕生日なのだから。


心無しか走る速さもいつもより早く感じるがそれでもナルは一切疲れを感じていなかった。

今日の訓練は父上の都合で午後からとなっているため朝早く家を出る必要は無いのだがナルには違う目的があった。


「よう、ライバル!!今日こそお前に勝つ!!」

「よし、どっからでもかかってこい!!」


木刀を持ち向かい合う両者。


「やーー!!」

「ふんっ」


ナルに向かって大きく振りかぶった木刀は見事なまでに空を切り、後ろからナルが攻撃をする。


「くそー、さすがライバル。見えなかった」

「ケータも今のはなかなか良かったよ。けどやっぱ次の動きを意識しないとこうやって反撃を食らうから次はそこ意識していこう」


「ふっ、わかった。じゃー次は何する?」

「反射トレーニング」


それを聞くとケータはため息をつく。


「えー。あれやだ。お前が俺をボコるだけじゃん!」

「じゃー、今日は逆でやってみる??」

「まじで??それならやる!!」


木刀をブンブン振りながらあからさまにテンションをあげるケータ。

ナルはその様子に微笑みながら自分の目の上に布をまく。


「いいよ」

「いくぞー!!日頃の恨み、覚悟!!」


目隠ししたナルに向かって全力で木刀を振るケータ。

その速度はかなりの速さで風を切る音が聞こえてくる。


シュンっ、シュンっ、シュンっ。


しかしナルは目隠しした状態で全てかわす。

そしてナルが木刀に当たるより先にケータの体力が底を尽きたらしくケータが止まる。


「はぁ、はぁ。おいおい、まじかよ全部かわした」

「来る瞬間にびびびってなるからそこを避ければいいんだよ」


「そんなことできるわけねーだろ!!お前人間か?人間なのか??」

「もちろん人間だとも。それよりケータ、日頃の恨み、覚悟!!って聞こえたけど気のせいかな??」


ナルがケータに顔を近づけ問い詰める。

ケータはと言うと少し青ざめた顔色になって目が泳いでいた。


「い、いや。そんなこと…」

「言ったよね??」

「はい、言いました」


言い逃れが無理だと判断したケータはすぐに認めることにした。

それを聞いたナルは黒い笑みを浮かべケータに話しかける。


「今度はこっちの番ね??死ぬ気でやらないと死ぬから頑張って避けてね?」

「っ……」


言葉にならない声を上げケータは覚悟を決めたと言わんばかりに目隠しをする。


ケータは毎回この訓練をしていたのだが完全にかわすことは一回も出来てない。

ケータは考えることをやめ、必死に神経をとがらす。


「じゃー、いくよ」

「どっからでもかかってこい!!」


ケータは感じる。右上からなにか迫ってくることを。

それは徐々に近づいてくることを。

そう思った時には右肩に激痛が走る。


「いっ」

「はい、次」


今まで感じたことの無い感覚を感じ始めたケータは戸惑いを覚えた。

そしてすぐ次は左からなにか迫ってくると感じる。


ケータは考えずにその気配がするところを避けてみる。

すると、真横から木刀が空を切る音が聞こえてきた。


「………」

「………」


少しの間無言の時間が過ぎる。

そして遅れて二人が大はしゃぎする。


「え、えっ。で、出来た。できたーー!!」

「おぉー。本当に完璧だった。すごい」

「なんか感じたんだよ!ここにくるなって」

「あー、その感覚俺にもある」

「なぁ、すごくね??できたんだぜ!」


ボコッ

興奮するケータの頭を軽く木刀で叩く。

ケータは驚いたようにナルを見つめる。


「は?おい、お前。なんできゅ」

「常にできるようにしなちゃ習得とは言えない」

「っそんなこと言っても急に叩くことないだろ!!」

「ちょっと嫌がらせしたくなってな」


ニヤッと笑うナル。

それを見てケータは瞬時に木刀を構える。


「あ、やる気だね?よし、かかってこい!!」

「いくぞっ」



「はぁ、はぁ、な、なんで一発も当たらないんだよ。今日ぐらいはせめて一発」

「残念。でも鋭さがまして余裕がなくなってきたな。それにたまに俺の攻撃をかわしてるし!」


ケータは土の上で横になり、ナルは立ったまま話す。


「なぁ、ナル。お前今日で10歳なんだろ?」

「そうだね。父上が夜ご飯用意してくれてるって」


「やっぱり貴族は学校へ行くのか?」

「そうだね。多分行くことになるかな?」

「だよな。なぁ、ナル。今日昼飯は?」

「あ、もってきてない」


「じゃー、俺ん家で食べるか」

「本当に??いいの??ケータのお母さんの料理好きだ」

「っ。じゃー、早く行くぞ!!」


ケータは立ち上がりその勢いでかけていく。


「まっ、待てよ!!」


ナルもその後ろを追いかけて走る。

そしてケータの家に向かうのだった。

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