異世界転生なんて必要ない
空飛ぶブタ
第1話 始まりの物語
「ナル様。ナル様。朝ですよ起きてください!!」
メイドのセシルの声で目を覚ます。
「あ、おはようセシル」
「おはようございます。お食事の用意ができてますので早く降りてきてくださいね」
そう言い残しセシルは僕の部屋から出る。
そして僕はセシルの後ろを追い、部屋から出ていった。
一階には母上と執事のヒイラギが待っており、机の上にはスープ、パンが並べられていた。
「おはようございます。ナル様」
「おはよう、ナル」
「おはようございます母上、ヒイラギ」
そして、僕は席につき皆でいただきますをする。
「ナル、昨日の旦那様の家の稽古はどうだったの?」
「とても充実したものでした!!本日もハヤト兄様とカーラお姉様、そして父上と稽古をすると聞いています」
「そうね、旦那様にしっかり鍛えてもらいなさい」
「はい!!」
僕の父上は貴族だ。
辺境伯という地位で、かなり上位の貴族だった。
そして僕の母はそんな父の第三夫人。
なので僕たちは父上の領地の1軒を借りて二人とヒイラギ、セシルの四人で暮らしている。
父上は母上のことが気に入っており、一週間に一度母上を本家に招いて食事をとっているらしい。
ヒイラギも次期執事長確定と言われているすごい執事だし、セシルも新人の中ではトップクラスのスキルを持っている。
「ところでナル。明日で10歳ですね」
「はい、母上。自分もいよいよ10歳になりました」
「うふふ。ナルはいい子ね。10歳に思えないほど落ち着いているわ」
いよいよナルも成人と言われる歳になった。
10歳になるということは将来のことについて考えないと行けないとしなのだ。
「ご馳走様でした。母上、それでは自分は行ってまいります」
「はい、気をつけて。旦那様によろしく言っといてください」
「わかりました。行ってきます!」
そう言い残しナルは家を出る。
そのまま走って本家へと向かう。
「おはようございますナル様」
「おはよう」
本家へと向かう途中領地の人と挨拶をし、ひたすら走る。
時間にして20分もすれば本家に着く。
それを走っていくのも訓練のひとつなのだ。
「おはようございます!!」
「これはナル様。おはようございます。旦那様たちは中庭で準備しておりますので」
「わかりました。ありがとうございます!!」
ナルは門番に挨拶をし、そのまま本家の敷地にはいる。
ナルが通り過ぎたあと二人の門番は話をしていた。
「ナル様、相変わらず礼儀正しいですね」
「そうだな。第三夫人の子供だから将来不安だろうに」
「どうしてですか??」
「お前、そんなことも知らんのか。いいか、第三夫人の子供は貴族にカウントされないんだ。だから将来どうなるか分からないんだよ」
「なるほど。けどナル様ならどうにかなりそうですよね?頑張り屋ですし」
「まぁ、そうだな。よし、俺達も仕事をするか」
ナルは中庭に到着していた。
そして父上とお兄様を見つけてより一層走るスピードを上げた。
「おはようございます!!父上、ハヤト兄様!!」
「おはようナル。今日もあそこから走ってきたのか」
「はい!いい訓練でした!!」
「よし、ナルも来たことだし始めるか!」
「「はい!」」
中庭について数分経てばもう剣術の稽古は始まる。
まずは素振り。
そして、父上への打ち込み稽古。
最後にハヤト兄様との模擬戦。
「ハァハァハァハァ。やっぱりハヤト兄様は強いですね」
「いやいや、僕はもう24歳だからね。その歳で僕といい勝負出来るなんてすごいよ」
「そうだな。ハヤトがナルぐらいの時はまだ形になってなかったからな」
「父上。そんなこと言わないでくださいよ」
ハヤトはウィルソン辺境伯家の長男だ。
長男だから家を継ぐという訳でもないが今のところ将来の辺境伯候補筆頭の人物。
「ところでナル。お前明日で10歳になるだろ?
明日は母と一緒に本家に来るといい。
食事を用意しておく。それに儀式もここでするからしっかり正装で来るように」
「わかりました父上。母上にも伝えておきます!」
「ナルは剣の才能があるけど魔法はどうだろうな?」
「そうだな。私もハヤトも他の子供も魔法は一属性しか使えないから期待せずにおろう」
「確かに。だからナル心配しなくていいからね?」
「はい!けどやっぱりいっぱいの属性が欲しいですね」
「よし、稽古も終わっし僕が魔法の勉強を教えてあげよう!いいですか父上?」
「まぁ、いいぞ。魔法が使えなくても知識があるだけでも大切な武器だ」
「父上、ハヤト兄様。ありがとうございます!!」
「じゃー、私は仕事があるから帰るぞ」
「了解しました!じゃー、ナル。僕達はここでお勉強だね。ニーシャ、僕とナルのお弁当を作って持ってきてくれるかい?」
「わかりました。では直ぐにお持ちします!」
「よし、まずはナルは魔法についてどれぐらい知ってるんだ?」
「えーと、5大属性と初代国王様の話ぐらいです」
「なるほど。歴史を知っているってことか。じゃー、説明できるかい?」
「はい!初代国王レイヤ様は大賢者とも言われていて、火、水、土、木、風の五つの魔法を使い分け魔の森に国を作りました。それがレイヤ王国の起源です」
「うん、ちゃんと勉強しているようだね。それで実は魔法はその後属性の他にあと二つあるんだけど知ってるかい?」
「すみません、分かりません…」
しょぼんとなるナル。
それを見てハヤトはクスリと笑いながら話し出す。
「まぁ、その歳で知ってる方が稀だからね。あと二つは光と闇なんだ。それで魔法の特徴とか何も分からないよね?」
「はい」
「じゃー、まず見てて」
そういうとハヤトの指先から火がでる。
「すごい…」
「これが僕が使う火属性の魔法だよ」
そう言いながら指先から出した火を浮かべて右左へと移動させる。
「これがこの魔法単体で出せる最高速度なんだ」
「え?歩くより遅いんですか??それだと攻撃できない気がしますが?」
「そう、これだとただ火をつける事ぐらいしかできない。だから魔法使いは色んな工夫をして推進力をつけるんだ」
「推進力??」
「まだ分からないか。例えばこの弓を放つとどうなる?」
ハヤトは訓練に使う弓をおもむろに取り矢を構える。
「飛びます」
シュッ パン
「そう、こうやって飛ばす。これは紐が戻る力を使って推進力を出しているんだ。だから僕の魔法ではそれを再現して、さらに上乗せさせる」
今度は弓を置き再び指先から火を出す。
そしてその火は瞬く間に変化していき弓と矢が完成する。
「僕の魔法はまずは火を弓の形にする。その時持つところの温度調節をして触れるようにするんだ。それで本物の紐の部分を再現して、放つ。放つと同時に火の弓を操作してブーストをかけるんだ」
そう言いながら実践する。
火の矢はさっきとは比べ物にならないスピードで飛んでいき目の前の木を貫通する。
「すごい。凄いです兄様!!」
「ありがとう。けどこれは燃費が悪くて奥の手としてしか使えないんだけどね」
そう笑うとハヤトはナルの頭を撫でる。
「ナル、お前は明日魔法を手にする。不安かもしれないが楽しむことが大切だぞ」
「あ、はい!ありがとうございます」
「やっぱ魔法ってすごいなぁ。自分も早く….」
「僕の母さんがナルにいじわるで変なことを言うかもだけど気にしないでほしい。あれは無視しとけばいいから…」
「あ、すみません。何か言いました?」
「いや、別に?」
こうして稽古は終わりナルは成人を迎えるのだった。
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