自殺願望勇者
空飛ぶブタ
自殺願望勇者
あーもうどうでもいい。みんな死ねばいいのに…
私須賀恵子はただ今絶望の真っ最中。
高校1年の冬私はいじめにあっていた。特に理由もなくいきなり陽キャ軍団の1人が私の椅子を蹴り飛ばしたのがいじめの始まりだった。
クラスメイトとはそれまで上手くやってきたとは言えないが、特に嫌われてもなかったはず。なのに、いじめが始まると皆で私をいじめてくる。
意味がわからない。理由があれば少しは気が楽になるのだろうか、けれど理由が見つからない。
もう逃げたい。
そうだ、逃げればいいんだ。
そして今に至る。見渡す限り海。
絶景だ。白波が生きているように動いている。
あぁ、やっと救われる。結局これしか私思いつかなかったな。
親には申し訳ないことをした。お父さん、お母さんこんな親不孝な娘でごめんなさい、2人は長生きしてね。
クラスメイトのみんな。ちゃんと遺書は残したから私が死んだという事実をしっかり受け止めてね。
SNSには学校の名前とみんなの名前、されたこと全部投稿しておいたから私が死んだ後たのしみにしててね。
見れないのが残念だが、まぁいい。やっと救われるのだ。もう思い残すことは無い。
「それでは皆さんさようなら」
そうつぶやき私は崖から飛び降りた。10秒ぐらいたっただろうか、まだ痛みが来ない。遅くないか、そう考えていたらそばで人の声が聞こえる。
「おぉ成功だ。ついに成功したぞ」
周りがやけに騒がしい。これが天国なのだろうか、それとも地獄なのか、そう思い顔を上げるとそこにはまるまる太ったおじさんが偉そうに座っていた。
「え、これが神?それとも閻魔?ちょっとイメージと違うな」
イメージと違っても多分神なのだろう。だってこんなおじさん絶対日本に居ないもん。そう思っていると神が話しかけてくる。
「混乱しておるようですな、勇者様よ。私はセーメール王国の国王イベリ4世だ」
「イベリ4世?」
どうやら神ではないらしい。国王だったとは少し驚きだ。よく見てみれば頭にベタな王冠が乗っているし、指輪はどう考えても高そうな宝石が埋め込まれている。
しかし、何故だろう。私の聞き間違えではなければ私のことを勇者と呼んでいた。勇者ってあれだよね。
世界を救うために必死こいて無償では働くあいつだよね。私無理だよ。つーか早く死にたいんだけど。
そう考えていると耳元で誰かが叫んでいる。
「おい貴様。いくら勇者であっても王の話を無視するとは何事だ。ふざけているのか」
意味がわからない。こいつは何言っているんだ。まぁいい。取り敢えず謝っておこう。こういう時は謝るのが1番。1年間虐められたからそういうことは熟知している。
「まぁ落ち着けサーボン。勇者様も混乱しておられるのだ。何せ急に呼び出してしまったからな」
王はそういい私に微笑む。正直50代にみえる王にされても気持ち悪いだけだが。
「落ち着かれましたか勇者様よ。あなたのお力をお借りしたい。じつは魔王が我が国に攻めてきており我々では対処できません。なので勇者様を呼ばさせて頂きました。お詫びの印に魔王を討伐したならばなんでも好きなことを申してください」
なんと、素敵なことを言い始めた。まー、何となく分かってはいたが彼らは私を勇者として無銭労働させたいらしい。魔王倒したらって。詫びなら今すぐやれよと思うがまーいい。
魔王か。魔王か。あ、そうだ
「わかった。倒すよ。倒したら私を殺して?」
そうだよな。願いなんてひとつしかないよ、私は死にたいだけなんだ。うん、完璧だ。じゃー、さっさと魔王を倒すか。
「魔王討伐。意外とかかったわね」
考えてみれば長かった。四天王とか言うバカに、魔王とかいうイケメン。挙句の果てに異世界人のやつら。
私は死にたいだけなのに、いつの間にか一歳歳をとってしまった。やる事やったし、さっさと王様の所へ行こう。
「倒したわ、早く殺して」
要件を言うと王はびっくりして様子でこちらを見る。
はよ殺せよデブ。なんのために頑張ったのか理解出来ていないのか?そう思った直後背中に違和感を感じる。
振り返るとめっちゃ剣を刺してるのだが、おもちゃ?か何かだろうか。
「ねー、はやく」
遊んでる暇などない。一刻も早く死にたいのだ。マジでムカつく。こいつら殺したろうか?いや、ダメだ。私は死にたいからこいつらに殺してもらわないと。
「勇者様。もうしわけございません。私たちでは勇者様を殺すことはできません」
「は?なんで??」
「魔王を倒された勇者様と我々に力の差がありすぎるのです」
あー、そうか。ならいいや。
懐かしの記憶。私は死にたいだけなのだ。
はやくこい、次の勇者よ。私を殺して……
自殺願望勇者 空飛ぶブタ @sorawotobubuta1985
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