あとがき
あとがき
この作品は自分の変身願望と神話趣味を融合させた作品です。そして自分は社会的に死んでいるのではないかという問いに対し、「否!」と言う意味も込めて闇世で咆哮する社会的意味や意義も込められている。もちろんマイナーなペルシャ神話を普及させたいという思いも込めて書き上げた作品です。
また「谺する=木霊する」という高度成長期あたりからもう廃れた文語まで使っています。厳密には谷が深くてまるで咆哮に近い反響の音や声を「谺する」と書くので厳密には「木霊」とは意味が違う文言ですが。しかも本作に登場する「谺」は深き洞窟で人間が暗黒竜として生まれ変わったことを誇りとして咆哮する声です。「そういう表現は文芸的にもおいしいから令和の世に復活させて使ってみては?」という隠れた作者からのメッセージ性もある作品でもあるんです。そういうメッセージを出すのが本当の意味での文芸かなって私は筆を執ったのです。もちろん「谺」だけでは無いですよ。「頑健巨躯」(体が大きく健康で強き者という意味)などの言葉もしかりです。「頑健なる巨躯」という語はかの甲賀三郎氏が『支倉事件』(1956)で書いた言葉で有名なのに。拙著は「なる」という語を削って「頑健巨躯」という一つの単語にしていますが意味は同じです。「咒術」という語も本来は呪術と同義ではなく「咒術」の咒とは「真言」(マントラ)を唱える時に使う仏教用語で要は宇宙の真理を明かす術という意味になり呪術という語とは比べられないほど強い力でかつ神聖な意味を持つ語です。別名「神咒」とも言い物語の作品のラストにこの「神咒」という言葉も登場させました。「我慾」も我欲という語に比べて意味がより強く「独占欲」という意味が付加されます。
このように令和の世ではもはや誰も使われなくなった言葉も「闇」の中に消えたものです。文字通り闇の咆哮を聞いて私は拙著にて消えた言葉を再び世に現しました。
しかも「体」、「躰」(体と心を含む全て)、「躯」(胴体のみを指す)、「腔」(体内の空間のみ指す)など同じ「からだ」と呼ぶ漢字に対しても微妙な変化の違いを駆使しながら変身シーンを楽しめるように既存の漢字表現にまで工夫を凝らしました。
さらに「絶望」というワードはこのあとがきも含めてなんと合計一〇八回も使用されているとのことです。煩悩の数は一〇八あるとされ絶望の根本原因です。よってよりこの作品の完成度を高めることに成功しました。
本作は二〇〇八年に執筆を開始しました。執筆の途中で二〇一一年に東日本大震災が生じ、原子力災害の悲惨さを思い知らされました。なので、第四部は木質バイオマスや汚染地帯など当時の事件を反映しています。タウスに投げられた「殺す気かよ、電気流せよ!」という言葉は本当に記者が輪番停電説明の会見中にそう言ったのです。本作の執筆の完成は翌年の二〇一二年です。
一応の完成はしたもののその後二〇一九年に投稿サイトに投稿した後の読者の反応等により大改修が始まり三点リーダー、会話文、アラビア数字を漢数字に、回想部分(心の声)はこのようなかっこ文にするなどの改修を行いました。そのうえで語彙も増やし表現豊かにしたのです。真の完成は二〇二四年となりました。実に十六年かけての完成となりました。
ただ筆者は今作の最後に葛藤もありイラン最大の英雄とされるロスタムをこんな最後にしていいのかとか、親族同士の骨肉の争いはゾロアスター教でも地獄行かもしれぬという判断とそれでも悪をも救うことで自分もある意味救われるという最後にして良かったのだろうかという疑問を残した。みんなも考えてほしい。正道を歩みながら悪の道に進んでしまった者は果たして救われるのかどうかという事を。
まだまだ未熟者ですがどうかよろしくお願いいたします。
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