タベルナ1500m

ライリー

[読切]

 同志達へ


 俺は今走っている。ここは火星人のアジト、通称「タベルナ」である。古代ヨーロッパで食堂を意味するらしい。

食っちゃ寝、食っちゃ寝、食っちゃ寝...

俺はそんな火星人に捕まり、食材にされようとしている。俺にもしものことがあった時はこの通信を××大佐に伝えてくれ。しかしチャンスはある。奴らは食材達に1500mのレースをやらせるという奇妙な催しを開催すると聞いた。そしてそこで一位になった者は解放されるとも!そして今そのレースの真っ最中だ。

 俺は今先頭にいる。参加者はトマト星人、キャベツ星人、パイナップル星人と、いかにもトロそうな奴らばかりだ。地球人は幸い俺だけのようだ。これなら優勝できる!となれば良いが、さっきから後ろに嫌な気配がする。ゴールまであと300mと言ったところだが、体力ももう限界が近い。何事もない事を祈るしかないようだ...

な、なに!後ろから栗が大量に転がって来た!妨害か⁉︎

 いや、栗の上を滑って来た栗星人!

「気の早い奴らだねえ、俺の旬はもう少し後だのに。」

ま、待ってくれ、俺はまだ死なない、家族もいるのに、ああ...

うわ、火星人どものうるさい声だ!

「ばかいえー!秋の味覚といったら栗だろうが、みすみすにがしてたまるか!」

う、火星人が上から大きな手を伸ばしてくる、栗星人をつまみ上げた!

「うわー!たべるな、たべるな!」

「ああーこれはいい、クッチャネクッチャネ!」

クチャ、クチャ...

うわ、食われた...

という訳で俺は助かった。この通信データは捨ててくれ。ああ、栗ばっか見てたら栗ご飯食いたくなってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

タベルナ1500m ライリー @RR_Spade2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る