第7話 期待

高校でリスタートをしたかった。自分は暗闇にいて、出方を見つけもしようとしない自分。過去の自分は、変わらない。だから、これからの自分を変えるために入った。やっぱりバスケが好きだから、心が引き寄せられたから、入った。結局前と同じ理由。前とは、少し違う。前を向けているに自分に期待をして1歩踏み出した。

先輩が部室まで案内してくれた。中学の時と違い、鼻が曲がりそうな匂いはしない。臭くない。壁にあるのものを置くための棚にはマスコットや、鏡などがあり、女バスぽいなと思った。床には空気が抜けかけている風船。スパンコールか何かのキラキラしたもの達。くるくるしたカラフルな紐?があった。「荷物置いて着替えたら、体育館に行くよ!」と優しく言われた。急いで準備をしていると、焦んなくていいよ。ゆっくりでいいからね!また、優しく言われた。驚いた。前は急がないと怒られ、急いでいても遅いと怒られた。私なんかにこんなに優しくしてくれる人がいていいのかと不安になった。荷物を持って先輩について行った。「焦らなくていいからね」とさっきよりも優しい声と表情で言ってくれた。この女バスは、優しいのだろう。先輩優しいなと思っていると、トラウマを思い出し、喉がキュッと狭くなり、息がしにくくなった。バッシュに足を入れた。なんだか、目の当たりが熱くなった。もう二度と足を踏み入れないと思っていた。色々な思いが蘇る。でも、今は下を見ない。今は見ていい時じゃない。紐をきつく縛り、前を見る。少し高くなる目線。足首まで固定されている靴。あらためて、帰ってきたことを実感した。場所は違う。メンバーも違う。それでも心がじんわりと暖かくなっていく。

中学の時のことを思い出す。何出来ずに苦しんでいた日々。何も出来なくて、努力もしなかったあの日々。自分が邪魔で早く消えてしまいたいといつも思っていたあの日々。死にたいのに、死ぬのが怖い、矛盾していた日々。自分を変えたくて入った部活。私は変わった。でも、なりたい自分にはなれなかった。消えたい、苦しい、死にたいとずっと考え、努力もしなくなり、言い訳ばかり並べ、プライドは高くて、雑用しかできない。こんな人になりたくて入った訳では無い。みんなの前では常に笑顔で明るくて、努力家で、素直なかっこいい、素敵な人になりたかった。私は理想と真逆になった。

1年生の時は努力すれば褒められた。走れば走るほどどんどん走れるようになった。でも、運動は酷かった。何をしても、あってるのに、動きが変と言われ、邪魔と言われ続ける。みんなは私のことを人と思っていたのだろうか?みんな私が人だと知らなかったのだろう。でも、みんなは楽しそうだった。私のことを馬鹿にすることが。それをすることによって、自分よりも低いやつがいる。私は上の存在だ。思えるから、楽しそうだったのだろう。私が辛いと言うと、努力してないじゃん。変わろうとしてないじゃん。と言われた。仲のいい友達に言うと、なんでも言ってね。力になるからと言い。私から離れていった。結局みんな自分が大好きなんだな。めんどくさいことはしたくない。巻き込まれたくない。でも、自分の株は、あげたい。そう思っているのだろう。先輩、先生、後輩、同学年、みんな同じだ。やっぱり信じてはだめなんだ。誰も助けてくれないんだ。なんでこんな苦しい中生きているんだろう。なんで私はこんな思いをして、お前たちは楽しそうに呑気に毎日を過ごしているのだろう。なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?そう聞いたって何も答えはでない。考えたくもない。

真面目に生きている人が損をし、ずるい人たちが得をする。そう学んだ。

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小さな日々 やまの ゆき @pulcino_0111

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