第6話 知らない学校

明日は入学式だ。同じ学校の人は私を入れて3人しかいない。知らない人ばかりだ。つまり、私は明日から、新しい世界に進むことになる。不安だ。同じ学校の人、友達がいても上手くいかなかった私が、他人と話せるわけが無い。私は、何も出来ない。何も無い。だから、「友達になろう」なんて言えない。緊張して、気持ち悪く吐きそうだった。失敗したら、また、辛い、苦しい日々が続いたら、思うと怖くて怖くて、死にたくなった。普段からあまり寝れないのに、この日はいつも以上に寝れなかった。

何もかもが違う。電車通学。可愛い制服。見慣れない景色。それらが私の不安をよけい煽った。学校が見えてきた。これから、私は毎日ここに通うと思うと少し心が弾んだ。でも、すぐに不安が襲った。慣れない環境。慣れない生活。上手く過ごせる自信が無い。下を向きながら、学校まで行く。足が重い。まるで、学校に言ってはダメと足止めをされている気分だ。そんなことを考えていても学校にはドンドン近付いて行く。汗が垂れてゆく。血の気が引いていく感じがした。足に力は入らなくなり、顔もどんどん青くなってゆく。学校に着いた…周りはザワザワしていた。きゃっきゃと笑う可愛らしい女子の声。不安そうにため息をついてる子。その子を勇気づける母親。色々な感情が集まっていた。背筋を伸ばし、前を向いた。覚悟は出来ている。門を大きな1歩で踏み出した。

昇降口に入るとみんな自分が何組か友達と一緒かを確かめていた。さっき聞こえていた明るい声はこの子達なんだろうなと思いながら自分のクラスを確認し、教室に向かった。階段を上り進んで行く。慣れないロファーをコツコツ響かせながら1歩1歩進んで行く。教室に着き、扉に貼ってある座席表を見て、自分の席を探す。自分の席が分からず、3回も見直したが、やっと自分の席につけた。でも、不安になり後ろの席の女子に確認のために声をかけた。

入学式で、同じ学校の子に会い、ニコッと微笑みあった。式で私がしたことはそんなことぐらいだった。

教室に戻ると、女子が数人話しているだけで、あとの人は困ったような顔をしながら、焦った顔をしながら、口をもごもごして黙っていた。友達を作りたいのだろう。一人だと不安だから、仲間が欲しいのだろう。でも、誰に話かければいいのかが、分からないのだろう。私もそのひとりだ。結局誰にも話しかけられずに帰りのホームルームが終わった。

私のクラスは他のクラスより早く終わり、1人寂しく昇降口近くにいた。1人には話しかけなければと、張り切っていても、気持ちが前に進むだけで、足は進まない。そんなことを繰り返している間に同じ学校だったこが来た。ひとりじゃなくなったことの安心感で、体に入っていた、余計な力が抜けた。少しぎこちないけれど、ほとんどいつも通りに過ごしていると、友達と新しい友達作りをすることにした。しかし、誰に話しかけていいのかが分からない…2人で出しては足を引っ込めてを繰り返す。時々、「1人は友達を作らなきゃ。」「このまんまじゃ帰れない」などとぼそぼそ言いながら、時間が過ぎて行くだけだ。時間もあと少しだ。私は勇気をだして、「あの子に話しかけよ?」と友達に言った。私の席の後ろの子だ。雰囲気がふわふわしていて、話しかけやすそうだった。ねぇ。と声をかけると少し目を見開いたあと、不安そうな、不思議そうな顔をしていた。そのひとつひとつの仕草が可愛くて、自然と口角が上がった。きっと、この子とは仲良くなれる。楽しい学校生活をおくれると思った。LINE交換しよ?と言うと、パァーと顔が明るくなった。同じクラスの事、まだ、慣れないところで不安なことなど少しおしゃべりをした。

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