第5話 洗脳

私は小さい頃から、「あなたは何も出来ないのよ。」と言われてた。最初は、違う私には何かがあると思っていたから、違う!何かあるもん!っと言い返していたが、言われ続けるうちに、言い返すのが嫌になり、確かに私は何も出来ないと納得してしまった。今思うと、この頃から私の性格は、変わっていったのだろう。起きるのが憂鬱だ。起きたら、文句を言われる。私はダメな人間、何も出来ない人間だと言われる。と思うと嫌で嫌で仕方がなかった。しかし、親はもう仕事に行っていた。家には私がいるだけ。嬉しいはずなのに、ひとりが寂しくて、悲しくなった。みんなが私が邪魔だから避けているとまで思ってしまう。いや、それは事実だろう。私は可愛いわけでも、スタイルが言い訳でも、声が美しいわけでも、性格が言い訳でもない。そして才能もない。正直いってこんなの必要ない。些細な音がすごく大きな音に聞こえる。邪魔だ。邪魔だ。と責めたてているように聞こえる。このままじゃ何もしないで時間が過ぎるだけだから、頼まれていたおつかいに行った。空は雲がほとんどなく晴れていた。天気さえも私のことを馬鹿にしているように思えてくる。お前みたいな何も出来ないダメなやつなんか、外に出るなと言われているようだ。些細なことまで私のことを邪魔だと必要ないと言ってるように感じるようになっていた。桜を誰も見ない。一生懸命咲いて私達を喜ばしてくれた、感動させてくれたのに、全く見ない。散った花びらはどんどん茶色になってゆく。踏み付ける時になる音が花びらの鳴き声に聞こえる。痛い、痛いと聞こえないほど弱々しい声で訴えているように聞こえる。花を見て、人と同じだなと思った。仲が良かった人でもいつの間にか、気づいて貰えなくなる…ただ、一生懸命生きているだけなのに、なんで踏み付けられてしまうんだろう。その疑問の答えは一生わかるわけが無い… 四月になれば高校生になる。3月31日23時59分までは、中学生。4月1日24時になった瞬間高校生になる。不思議だ。

何故こんなに辛い思いをしないといけないのだろう。なんで、傷つけてくる奴らは幸せそうでなんで私はこんなに苦しまないといけないのだろう。その答えは…いや、分かりたくない。それを思ってしまうと自分が保てなくなってしまうから、それでも、思わずには居られなかった。答えは「人生は不平等だから」だ。それ以下でもそれ以上でもない。

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