第4話 価値

ほとんど散り、皆落ちた花ビラを何も考えずに踏みつけてゆく。散る前は「綺麗…」とうっとり見ていたのに、散ったら誰も見向きもしない。きっと、毎年咲くのが当たり前だと思っているからだろう。こんな人達と生活するのが苦痛だ。だけど、それを言えるほど私には度胸も無ければ、権利もない。私は生きていてはいけない人なのだ。いや、人でもない。私は誰からも必要とされないなにかだ。

タイマーがなり、目を開けた。また今日が始まった。まだ、だるい鉛みたいに重い体を無理やり起こし、リビングに行く。学校に行きたくないなと思いながら学校の支度をして家を出た。大きく深呼吸をすると、春のポカポカしていてやわらかい空気が全身を巡った。登下校中は何もすることが無く、いつも通り近所の人に挨拶をするぐらいしかない。学校の裏門を通る自然とため息が出た。今日も学校に来てしまった。少し憂鬱になりながら、なるべくそれを表に出さないように、先生に挨拶をする。下駄箱で友達に会い、笑顔で挨拶をし、軽く話す。きっとみんなは私のことを明るい人と思うのだろう。階段を上がりクラスが近ずいて来ると、友達に「大丈夫?無理しないでね。」と言われ、私は苦笑いをし「ありがとう」といい、手を振り教室に入った。私はちゃんと笑えていただろうか?ちゃんと感謝の気持ちを込めてありがとうと言えたか?きっとどっちもちゃんと出来ていなかっだろう。教室に入るとまだあまり人が来ていなかった。机にリュックを置き、クラスに置いてあるシクラメンなどの植物の土が乾いていたので、水を上げた。気のせいだが、植物に「ありがとう」と言われているように感じ嬉しくなった。植物は、私のことをわかってくれる。私の努力も、誰にも気づいてもらえないことも…植物にも新鮮な空気を吸って欲しく窓を開けた。空気が一気に入ってきて、少し背筋が伸びた。今日も頑張ってるねと言われている気がしたからだ。今日も乗り切ろうと、心の中でつぶやき、さらに背筋を伸ばした。「おはよう!」とクラスメイトに言われた。ぼーとしすぎて人の気配に気づけなかった。「おはよう!今日寒いねー。」と素で明るく言えた。この子は私のことをちゃんと分かってくれている、優しい子だ。このこの前だと呼吸が楽になるほどだ。だんだんクラスもザワザワするほど人が増えてきて、話をしていると私たちの近くも声が増えて言った。周りから見たら、私はクラスに馴染めている明るい子に見えるんだろうなと思い、悲しくなった。「何かあった?」とこの子に言われた。顔を控えめに覗き込みながら、心配そうに、優しい声で言われた。この子の表情も少し曇っていた。「ありがとう。なんでもないよ。」と言うと、少しムッとした顔になったあと、「分かった。何か言いたくなったら、いつでも言ってね、聞くから。」とこの子は笑顔ででも少し真剣な顔で言った。この子はきっと私のほとんどを分かっているのだろう。私が暗い表情をしていたら、この子も私と同じ気持ちになり、暗い表情になった。私がなんでもないよ。と答えたら、本当は何かあるとわかっていながら、私が話そうとしないから、話したくないと気づき、わかったと深堀せずにしてくれている。そして、最後毎回話そうとしない私に、「何かあったら言ってね」と言ってくれる。このこの子の心はとても綺麗なんだろうなと思った。そう思うと、少しこの子を憎く感じてしまった。と誰からも必要とされていないのに、死ぬのは怖くて、みんなの荷物だとわかっているのに今日も生きている。

それからは毎日同じような日が続いた。不満がある訳では無い。辛いことをされている訳では無い。でも、私は毎日孤独を感じながら、悲しくなり、ひとり暗闇に取り残された気持ちになる。それは、波紋のようにじわじわ広がってゆく。減ることも止まることもせずにじわじわ広がってゆく。考えたくないのに起きているのにずっと夢の中にいるような状態で毎日過ごしている。

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