第37話 いざ竜人の里へ!

 オレ達は、ダンテさん達を連れて屋敷に戻った。人造人間の執事やメイド達が出迎えてくれる。屋敷に来たダンテさん達は、執事やメイドを見て全員が驚愕している。



「どうしたの? そんなに驚いて。」



「今の執事やメイドは人族ではありませんよね?」


「どうして?」


「人族以外の魔力を感じます。それも、かなり大きな魔力です。彼らは何者なんですか?」


「彼らはケン兄が作った人造人間よ。すごいでしょ!」



 ローザがオレの腕を掴んで自慢げに言った。



「作った?!」


「そうよ。ケン兄は何でも作れるのよ。」


「それは誠ですか?」


「何でもじゃないけどね。」


「ケンさん、いや、あなた様は何者なんですか?」


「さっきも言ったけど、普通の人族だから。けど、ちょっと能力が高いかもしれないね。」


「ちょっとどころではありませんよ。拙者の目に狂いはなかったようです。」



 その後、全員で夕食を取ってから、それぞれ風呂に入って寝た。当然、オレのベッドには女子3人組がいる。広いはずのベッドが何故か狭い。


 翌朝、オレ達が庭に出ると、ダンテさん達が準備をしていた。



「おはよう。早いね。ダンテさん。」


「はい。早く我らの里を何とかしたので!」


「そうだね。オレ達も準備できてるよ。」


「では、ケン様。参りましょうか?」



 何故か、竜人族達がオレ達のことを『様』をつけて呼ぶようになった。そして、5人の竜人族全員がドラゴンの姿に変身する。



「すご~い!」


「本当にドラゴンにゃ!」


「ミレイ姉! ミサキ姉! 触ってみて! なんかツルツルだよ!」



 女子達は大喜びだ。オレ達はダンテさん達の背中に乗って竜人の里に向かった。オレは空気抵抗を考えて、すべてのドラゴンを包み込むように結界を張る。



「この結界はケン様ですか?」


「そうだよ。」


「ありがとうございます。いつもより楽に飛べそうです。」



 この国はユーラシ大陸の最南端に位置する。王都はこの国の中心だ。アデール山脈までは本来馬車で1か月ほどかかるのだが、途中1度休憩しただけで2日で到着した。オレ達はアデール山脈の中腹に降り立った。そこには避難している竜人族達が大勢いた。



「ケン。竜人族の女性って胸が大きいよね?」


「まっ、そうかもね。」


「ケン。顔がにやけてるにゃ。」


「そんなことないよ。」


「ケン兄のスケベ!」


「だから、別に喜んでないから。それより、これだけの竜人族達の食料はどうしているのかな~?」


「ケン様。それは心配ありません。我らは空を飛べますから、みんなそれぞれ飛んで狩りに行きますので。」


「そうなんだ。じゃあ、オレ達が食料を調達しなくてもいいんだよね。」


「ご心配いただきありがとうございます。食料は大丈夫です。」


「なら、帝国の軍隊の様子を見に行こうよ。」


「これからですか?」


「そうだよ。だって早い方がいいでしょ。」


「お気遣いありがとうございます。すぐにご案内します。」



 オレ達は山脈を下り、見晴らしのいい場所まで来た。下を見ると、そこには広い平原が広がっていた。そして、遠視の魔法を使ってみると、やはり地球にあった『戦車』が100台ほどいた。兵士が手に持っているのは明らかに銃だ。ところどころに防空用の高射砲まである。



「ダンテさん。相手の武器の正体が分かったよ。」


「さすがケン様です。」


「ケン。どんな武器にゃ。」


「ああ、兵士が手にしているのは『銃』と言って、筒状の棒から鉄の玉が出るんだ。かなりのスピードだから要注意だよ。それから、自動で動く鉄の箱は『戦車』と言って、先の長い筒から銃よりも大きな鉄の玉が出るのさ。恐らくその鉄の玉には細工が施してあって、爆発するようになっているね。最後に注意しなければいけないのが、ところどころにある巨大な銃だよ。『高射砲』と言って、上空からの攻撃を鉄の玉で撃ち落とすのさ。」


「ケン。かなり厄介ね。」


「そうだな。ミサキもミレイもローザも接近戦では負けないだろうけど。」


「ケン兄。どうするの?」



 相手が近代兵器なら、こっちには魔法という武器がある。



「全員を殺していいなら簡単なんだけどね。でも、あの兵士達にも親兄弟、家族がいるだろうしな。できれば生かして捕らえて捕虜にしたいんだ。」


「ケンは優しすぎるわ。」


「そういえば、ケン兄は今まで魔物は殺したけど、人は殺してないよね?」


「そうだにゃ。ケンは優しすぎるにゃ。」



確かにオレは甘いかもしれない。けど、地球で育ったオレには人を殺すことに抵抗感がある。でも、それだけじゃない気もする。



「ケン。それでどうするの?」


「ちょっと考えるさ。」



“リン。あの近代兵器を無力化する方法はないか?“


“ありますよ。”


“どうすればいい。”


“あれらはすべて金属です。ならば金属を溶かしてしまう魔法を発動すればよろしいかと。”


“そんなことできるの?”


“はい。無属性魔法を使いこなすマスターなら可能です。”



 その日、オレ達は一旦みんなのところに戻って休むことにした。その間にオレはリンから魔法の説明を受けた。そして翌朝、オレ達は昨日の場所までやって来た。いよいよ魔法を発動するのだ。



「オレが魔法を発動するから、そしたら一斉に攻撃に移るぞ! ダンテさん達も準備してください。」


「了解しました。ケン様。」



 オレは広大な平原の全域にリンに教わった魔法を発動する。



『メタルメルトレイン』

 


 すると、上空に真っ黒な雲が現れ、空全体を覆っていく。ポツリポツリと地上に向かって真っ黒な雨が降り始めた。



「この魔法は金属類をすべて溶かすから、ここにいる全員の武器には溶けないように結界を張るよ。」



 オレは全員の武器に結界でコーティングを施した。



「いいかい! みんな! なるべく相手の兵士は殺さないようにね。けど、自分の身が危ないと思ったら殺しても仕方ないから。じゃあ、行くよ。」

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