第36話 竜人族のダンテ
2人の体が真っ赤なオーラに包まれていく。今までの竜人族達とは格が違うようだ。そのオーラに周りの空気が吸い寄せられ風が起きる。
「どうだ。降参するなら今のうちだぞ!」
「それがお前達の本気か?」
オレは少しだけ闘気を解放した。オレの背後に神々しい黄金のドラゴンが現れる。
「お、お、お前は一体何者なんだ?」
「どうする? やめる?」
「いや! お前が強いことは分かった。だが、我らも竜人族最強の2人だ! 逃げ帰るわけにはいかん!」
2人が左右に分かれ、それぞれの武器でオレを攻撃してくる。一人は剣、一人は槍だ。オレは目を閉じて不動の状態で立っている。そして、剣と槍が目の前に来た。その刃を左右の手の指で掴む。そして軽く力を入れると、剣の刃も槍の刃も軽く折れた。次の瞬間、竜人族の2人は意識を失って地面に倒れた。オレの間合いに入ったことで、オレは目に見えない速さで彼らの腹に拳を叩き込んだのだ。
「なんだ?!」
「いったい何がどうなってるんだ?」
「おい、今の見えたか?」
「いいや!」
「オオ————————!!!」
闘技場は歓声に包まれた。国王陛下たちも何が起こったのかわからない。
「あれがケンの強さなのか?」
「陛下。恐らく伯爵は全く本気を出していないと思いますよ。」
「それは誠か! 伯爵はいったいどれほど強いのだ!」
「多分われわれの想像を超えているでしょう。」
オレは竜人族達を1か所に集めて、『ヒール』をかけた。すると、竜人族達が全員意識を取り戻した。
「オレ達は負けたのか?」
「まだやります?」
「いや、もうお主達に勝てないことは分かった。だが、やっと見つけた。やっとだ。」
何か訳ありのようだ。
「やっと見つけたとはどういうことかな?」
「俺達は強いものを探してこの国に来たんだ。わが里、竜人の里を奴らの手から取り戻すためにな。」
「なんか訳ありのようだね。」
そんな話をしていると、ミレイ、ローザ、ミサキがやってきた。
「さすがケン兄。でも、どうして剣や魔法を使わなかったの?」
「怪我をさせたくなかったからさ。何か訳ありのようだったし。」
「お主、ケンというのか? お主は何者なんだ?」
「ケン兄はミサキ姉と同じで人族だよ。私はエルフ族でミレイは獣人族。見ればわかるじゃん。」
「確かにな。だが、人族の中にこれほどの強者がいるとは思わなかった。」
オレは竜人族達から詳しく話を聞こうと思った。
「まあ、城の中で話をしましょう。」
「かたじけない。」
オレ達は全員で王城の大会議室に来た。そこで話を聞くことになった。
「拙者は竜人族の族長の息子でダンテと申す。この度の非礼を謝罪する。」
オレ達は全員が自己紹介を行った。そしてその後、ダンテさんから話を聞くことにした。
「何があったのか詳しく教えてくれるかな?」
「はい。我が里はこの国を南に行ったアデール山脈の南側にあります。」
すると、ジミー公爵が驚きの声をあげた。
「アデール山脈の向こうにも人が住んでいるのか? あの山脈はこの大陸の最南端だと思っていたが。」
「はい。山脈の南側に我らの里があるのですが、このユーラシ大陸の反対側に位置するオセアン大陸から、突然ブラジロン帝国が攻めてきたのです。」
「なんと! ブラジロン帝国と言えば、最強の軍隊を持つとされる国ではないか。技術が進歩していると聞くが。」
「はい。我々も戦闘能力の高い種族ですので、最初は我らが優勢だったのですが、ブラジロン帝国の武器が見たこともないものばかりで、次第に押され始めて、とうとう占領されてしまったのです。」
「他の竜人族達はどうなったんですか?」
「ほとんどの者がアデール山脈にある神の山マラヤに逃げ延びたのですが、わが父であるドラクと妹のドリエは、捕虜として捕らえられてしまいました。」
ダンテさんが悔し涙を流している。
「ダンテさん。見たこともない武器ってどんなものなんですか?」
「はい。馬を使わずに走る金属の箱や海に浮かぶ巨大な金属の船、それに兵士達は金属の長い筒を持っています。それらから恐ろしく威力のある球が飛び出してくるのです。それに、空を飛ぶ金属の鳥のようなものもいました。それが卵のようなものを落としてくるのですが、地面近くになると物凄い音を立てて爆発するのです。」
オレはダンテさんの話を聞いて、間違いなく地球にあった兵器だと思った。
“リン。この世界にオレ以外の転生者がいるのか?”
“恐らくいるでしょう。偶然、時空のはざまに飛ばされた者か天界にいる神達のいづれかによって連れてこられた者だと思われます。”
“待って! 神様って一人じゃないの?”
“神は複数存在します。”
“えっ?!”
“マスターがお会いになられたのは、この世界の創造神ガイア様です。その下に管理神のエリーヌ様、さらにその下に武神、魔法神、生命神、農業神、商業神、冥府神、転生神の7大神様、そしてその下にも様々な神が存在します。”
“そうだったんだ。リンはどのあたりの存在なの?”
“私は特別です。その枠には入りません。”
“なら、もしかしたらたくさんいる神の誰かが、オレと同じように地球から誰かを呼び寄せた可能性があるってことか?”
“はい。その通りです。”
“何のために?”
“不明です。”
“ありがとう。”
“マスターのお役に立てて光栄です。”
何故かリンが嬉しそうだ。
「国王陛下。ジミー公爵。オレ達、ダンテさんと一緒に竜人の里に行きます。よろしいですか?」
「そうだな。このままだと、恐らく帝国は我が国やこの大陸の他の国にも侵攻するだろうからな。何とか食い止めねばならん。頼むぞ。ケン。」
「はい。」
だが、どうやって竜人の里まで行くかだ。一度行ったことのある場所なら転移で行けるが、竜人の里には行ったことがない。
「ケン。どうやって行くにゃ?」
「それなら我らにお任せください。」
「どうするの?」
「我ら竜人族は本来は竜です。現在は人化していますが、元の姿に戻ります。」
「え~! ドラゴンの背中に乗れるの?」
「ミサキ! 王女がはしたないぞ!」
「だって、お父様。こんな夢のようなこと喜ばずにはいられないわ。」
「喜んでもらえて光栄です。」
「なら、明日の早朝出かけよう。ダンテさん達はオレ達の屋敷で休めばいいよ。」
「ありがとうございます。」
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