第38話 竜人の里奪還
ダンテさん達竜人族はドラゴンへと姿を変えた。その上にミサキ、ミレイ、ローザ、オレが乗る。
「行こう!」
現在、地上では大混乱だ。銃、高射砲、戦車がどんどん溶け始めているのだ。それだけではない。兵士達の身にまとっている鎧も剣も槍も全て溶けだしている。帝国軍の司令官のところに次々と報告が入ってくる。
「戦車が溶け出しました!」
「高射砲も全滅です!」
「ルミエル伯爵様。危険です。中にお入りください。」
「ザリス。何が起こっているのだ?」
「恐らく魔法でしょう。この雨は金属を溶かす魔法だと思われます。」
「どうすればいい?」
「とりあえず、手持ちの武器を雨に触れないように退避させるしかないですな。」
ルミエル伯爵は近くにいた兵士に伝えた。
「全員を雨に濡れないように陰に退避させろ!」
「ハッ」
すると、兵士達の叫び声が聞こえる。
「敵襲だ—————! ドラゴンがやって来たぞ———!」
ルミエル伯爵とザリスが陣幕から出て、上空を見上げた。そこにはたくさんのドラゴンの姿があった。
「ルミエル伯爵様。既に高射砲も銃も戦車もありません。逃げるしかありません。」
「おのれ~! このままおめおめと逃げ帰れるか! 皇帝陛下に何と言えばいいのだ!」
「ですが、このままでは全員が殺されます。」
「ザリス。皆に逃げるように言え。わしはこの場にとどまる。生きてなど帰れぬ。」
「畏まりました。」
ザリスの指示で兵士達が全員、海の方向に逃げようとしている。オレは上空を飛ぶドラゴンの背中からそれを見て魔法を発動した。
『グラビティ―』
すると、最前列の兵士達が全員が地面に叩きつけられ、後ろの兵士達も動くことが出来ない。オレ達は全員が地上に降り、ダンテさん達も人化した。地面から起き上がれないでいる兵士達は、顔面蒼白状態で体を震わせている。中には恐怖のあまり失禁しているものまでいた。
「ダンテさん。後ろの兵士達も逃がさないようにしてください。」
「畏まりました。ケン様。」
オレは魔法を解除した。再びドラゴンへと姿を変えたダンテさん達が、兵士達を取り囲んでいる。兵士達は恐怖で地べたに座り込んでしまっている者もいる。足が震えて立っていることができないのだ。それを見て、オレは司令官らしき男の近くに行った。すると、司令官を守ろうと精鋭の兵士達がオレの前に出た。
「ケン。こいつらの相手は僕達がするにゃ。」
「ケンは司令官を捕まえて!」
ミレイとローザとミサキが、オレの前に立ち塞がった兵士達に向かっていった。オレはそれを見ながら司令官の前までやって来た。
「お前がこの軍の司令官だな?」
男は黙っている。
「何故答えない! 命が欲しいのか? 情けない!」
「ふざけるな! 私はお前ら竜人ごときの指示には従わぬ!」
「そうか。なら、仕方ないな。」
『グラビティー』
オレは強めに魔法を発動した。すると、司令官の体が思いっきり地面に叩きつけられた。
「ゴキッ、バキッ」
「グワ——」
ルミエル伯爵の身体から骨が砕ける音が聞こえる。ルミエル伯爵は口から大量の血を吐き出した。それを見て、すでに兵士達を制圧したミレイがオレに言った。
「ケン。このままだと死ぬにゃ。」
オレは魔法を緩め、全員を捕虜としてとらえるように竜人族に指示する。ルミエル伯爵とザリスの他、数千人の兵士が捕虜として縛られた。
「お前達は捕虜となったんだ。オレ達の命令に従ってもらうぞ!」
すでに絶望の顔で諦めてる兵士もいれば、未だに立ち向かって来ようとする兵士達もいた。特にルミエル伯爵は縄をほどけば、オレに殴りかかってくるだろう。
“リン。こいつらを従わせるにはどうすればいい?”
“マスターが本来の姿に戻るか、恐怖を与えるのがよろしいかと。”
“本来の姿?”
“失言です。恐怖を与えましょう。”
リンの言葉が何故か引っかかったが、オレは彼らに恐怖の闇魔法を発動する。
『ダークヘル』
すると、彼らの周りに黒い霧が発生し、全員が霧に飲まれていく。
「ここはどこだ? 何も見えぬぞ! ザリスはどこだ! ザリス! ザリス!」
すると、彼らの目の前に、頭に角を生やし、背中に漆黒の翼を生やした悪魔のような者達が現れ、彼らの身体を押さえつける。
「放せ! 放せ! 化け物ども!」
すると、悪魔達はルミエル伯爵の両手、両足を斧で切った。激痛に襲われるルミエル伯爵は大声で叫ぶ。
「ギャ———! 助けてくれ————!」
無情にも、悪魔の斧はルミエル伯爵の頭を切り落とした。意識を失ったルミエル伯爵が目を覚ますと、再びあの悪魔達がいる。生と死を何度も何度も繰り返すのだ。そこに、一つの光が現れた。その光はだんだんと大きくなる。そして、その光は人型となった。
「お前は?」
「どうだ? この苦しみをまだ続けるか? この苦しみはお前達が苦しめてきた竜人族の苦しみだ。」
「もう、許してくれ。私が悪かった。」
オレが魔法を解除すると、帝国軍の兵士達は全員が安堵の表情を浮かべ、そのまま意識を失った。オレは彼らの首に『正義の輪』を付けた。
「ケン様。彼らの首にかかるあの輪はなんなんですか?」
「あれは正義の輪さ。悪事を働こうとすると輪が締まるようになっていて、酷いときはそのまま首が切断されるよ。でも、正しい行為をすれば、輪がだんだん緩くなっていって外れるのさ。」
「そのような魔法が・・・・」
「ケンは何でもできるにゃ。」
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