竜人族の里

第34話 謎の竜人族達

オレ達は王城を後にして4人で王都を散策した。どうやら3人が1日交替でオレと手をつないで歩くことで決まったようだ。今日はローザが手をつないでいる。ふと考えたが、オレがローザと手をつないで歩いているとどう見ても兄妹のように見える。



「ケン兄。あの店お洒落だよね。何の店かな~?」


「入ってみようか?」


「うん。」



 全員で店の中に入った。何やら甘い匂いがしてくる。どうやら、レストランのようだ。オレ達は案内された席に座ってメニューを見たがよくわからない。城から出たことのないミサキも知らないようだ。そこで4人が、それぞれ別々のものを注文することにした。



「ケン。すべて4等分して食べるからね。」


「オレは大丈夫だけど、ミレイに言っといた方がいいぞ! 全部食べちゃいそうだからな。」


「僕はそんな食いしん坊じゃないにゃ。でも、肉ならあり得るにゃ。」


 

 ミレイの真剣な顔が面白くてみんなで笑った。しばらく待っていると料理が運ばれてきた。オムレツのような料理、包みパイのような料理、ピザのような料理、パン生地ケーキのような料理だ。4人で少しずつ分けて食べた。ミレイもローザもミサキも喜んで食べている。でも、オレには物足りない。量というよりも味が物足りないのだ。



「なんか薄味じゃないか?」


「これが普通にゃ。」


「そうかな~?」


「なんか、こう、辛いとか、甘いとか、しょっぱいとか、インパクトがないんだよね。」


「なら、この店出たら市場に行くにゃ。」



 すると、ミサキがはしゃぎだした。



「私も行きた~い! 一度でいいから市場に行ってみたかったんだ! ケン! いいでしょ?」


「食べ終わったら行こうか?」


「うん。」



 4人はお洒落なレストランを出た後、市場に向かった。途中にもいろいろな店があった。その中に、お洒落な女性服の専門店があった。



「そうだ。ミサキ。この際、ミレイとローズに靴と服を選んでもらったらいいよ。その服も似合うけど、旅に出るには少し辛いと思うよ。」


「そうね。着替えは何着あってもいいものね。でも、わざわざ買わなくても、亜空間でケンが作ってくれればいいのに。」



 確かにそうだ。だが、オレが亜空間で作ったら大変なことになる。なんせ、亜空間の中ではオレの想像が現実になってしまうのだから。考えただけでも涎が・・・もとい・・・考えないようにしよう。



「ケン兄。この店入っていい?」


「ああ、ミレイもローザも気に入った服があれば買っておいで。」


「うん。」


「わかったにゃ。」



 3人は店の中に入っていった。オレは店の前で、キョロキョロしながら周りを見渡している。すると、魔力の強い5人組の集団がオレの前を通った。



“リン。今の奴らはなんだ?”


“はい。人族以外の魔力です。恐らく、今の魔力は竜人族が人族に変装しているものと思われます。”


“竜人族が何でこの街にいるんだ?”


“わかりません。ですが魔力のマーキングをしましたので、行動は把握できます。”


“何か調べる方法はないのか?”


“それならば、私の眷属に調べさせましょう。”


“眷属?!”


“はい。私に従う者達です。”


“頼むよ。”


“畏まりました。”



 そうこうしているうちに時間が経ち、3人が店から大きな袋を抱えて出てきた。



「ケン。ありがとう。どう? 似合う?」



 オレはかなり焦った。王女がへそ出しの服を着ている。今までの短パンより短いせいか、足がすらっとしてかなり長い。



「凄く似合ってるよ。めちゃくちゃキュートだ。」


「本当? ローザとミレイが選んでくれたんだ!」



 ローザとミレイを見ると、今までより肌の露出が多くなっている。ローザが少し成長したように見えた。



「ミレイもローザもかなり似合ってるよ。でも、ローザ。お前、少し成長したか?」



 すると、ローザがもじもじしながら手で胸を隠して答えた。



「ケン兄。わかったんだ!」


「まあね。」


「ケンはいつも僕の胸も見てるにゃ。」


「べ、べ、別にオレはみんなの胸だけを見てるわけじゃないから。」



 すると、今まで目が見えず、異性との交流もなかったミサキが爆弾発言をしてきた。



「なら、今度みんなで一緒に亜空間の大浴場に入りましょ。そうすれば、ケンも堂々と見れるでしょ。」


「いいよ。もう。」



 オレが少し怒ったふりをすると、3人が慌ててオレの手をつかんでくる。



「ケン。冗談にゃ。」


「冗談だから。」


「別に怒ってないよ。それより、市場に行くんだろ?」



 手に持っていた荷物はオレの空間収納に仕舞って、4人は急いで市場に向かった。市場に行くと、肉や野菜、果物、お惣菜、調味料、家畜、家畜の飼料など様々なものが売られていた。屋台もたくさんあった。



「凄いわ。市場ってこんなにたくさん人がいるんだね。」


「何かおいしそうな匂いがしてるにゃ。」


「ケン兄。この果物、美味しそう。買って帰ろうよ。」


「そうだな。」



 オレは肉、野菜、お惣菜、卵、果物を大量に買って空間収納に入れた。



「ケンの収納って便利ね。どれくらい入るの?」


「試したことないからわからないよ。」


「ケン兄なら、きっと無限じゃないの?」


「僕もそう思うにゃ。」



 オレ達は一番端にある調味料の店に行った。すると、唐辛子や塩、砂糖、その他様々な調味料が売られている。オレは目的のものを探して、店のおじさんに聞いてみた。



「すみません。」


「何だい?」


「ピリッとするような、臭い消しのようなものはないですか?」


「あるよ。あまり売れないから、その端に置いてあるよ。」



見るとかなり大きい。オレの知っている胡椒とはだいぶ違う。



「これ、どう使うんですか?」


「ああ、細かく砕いて小さな粒にするか、粉末にして使うんだが、手がかかりすぎて人気がないんだよ。」


「なら、これ全部ください。」


「いいのかい?」


「はい。」



 オレは胡椒と思われる実をすべて購入した。それを空間収納にしまって周りを見渡すと、大量に米があった。



「おじさん。これ何?」


「ああ、それはラオだ。ラオは雑草の実さ。家畜の飼料だな。」


「なら、これも全部ください。」


「そんなにラオを買ってどうするんだい?」


「使い道があるから。大丈夫ですよ。」



 その後、ミルクを出す牛のような家畜スタインも雄雌合わせて6頭買った。さすがに牛は空間収納に仕舞えないので、屋敷に届けてもらうことにした。



「ケン。スタインなんか買ってどうするにゃ?」


「ミルクを飲むのさ。それに、デザートに使えるからね。」


「そうにゃのか?」


「この前食べたイチゴショートケーキだって、ミルクを使ってるよ。」


「え———! 知らなかった。ケン兄は何でも知ってるんだね。」



 そろそろ日が傾きかけてきた。オレ達が市場を出て屋敷に戻ると、兵士達が慌てて屋敷にやってきた。



「ダンデライオン伯爵様はいらっしゃいますか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る