第33話 遠距離通話の水晶
オレは温水便座とジェットバスの制作をドワーフ職人のドルトンに依頼することにした。実物を使用してもらうために、ドルトンを亜空間に案内したのだが、ドルトンの驚き用は半端ではなかった。そして、亜空間の家の居間でオレは会社組織について説明した。
「すると、何かい。オレは国王陛下に直接雇われた工場長になるということか?」
「そうなりますね。」
「それじゃぁ、断れねぇじゃねぇか。わかった。引き受けよう。俺も最新の物には興味あるしな。」
「良かったです。」
「ところで、何度も聞くが、お前さん達は本当に何者なんだ?」
「彼女は王女ですよ。みんなオレのパーティーメンバーです。」
「そうか。王女様か。ところでお前さんは?」
「ケンはダンデライオン伯爵よ。」
「そうか。あの有名なダンデライオン伯爵っていうのはお前さんだったのか。なら、今までのことも納得だぜ。」
「ただ、ドワーフ族と違って酒は弱いですけどね。」
「酒? 酒があるのか?」
「出しましょうか?」
「おお、できるだけ強いのがいいな。今日はお祝だ。」
オレはドルトンさんに紹興酒と柿ピーを出し、女子3人組にはモンブランと紅茶を出した。
「ケン。お前さん。今どこから出したんだ?」
「ああ、この空間はオレが作った亜空間だから、オレが欲しいものは何でも出せるんですよ。」
「お前さん。神様なのか?」
「違いますから。オレは人族ですから。」
「そうか。ならいいがな。今まで失礼な態度を取っちまったからな。」
「気にしませんから。大丈夫ですよ。」
「そうかい。なんか嬉しいな。」
ドルトンさんは、信じられないことに紹興酒を一気飲みする。どれだけ強いのだろう。紹興酒以外にもウオッカや日本酒も出した。だが、意外にも一番喜んだのがギンギンに冷えたビールだった。
「今日は世話になったな。試作品を置いていってくれるか。」
“リン。遠距離の連絡手段はどうしたらいい?“
“亜空間に行って、携帯電話の機能を果たす水晶などを作られたらいかがですか?”
“ありがとう。試してみるよ。”
「ドルトンさん。ちょっと待っててくださいね。」
オレは再び亜空間に行って通信機能を付けた水晶を作って持ってきた。
「ドルトンさん。この水晶にオレのことをイメージして手を置いてみてください。」
オレは少し離れた場所に移動して試してみた。すると、オレの水晶が光る。
「ドルトンさん。聞こえますか?」
「おお、聞こえるぞ! これはすごい!」
オレは再びドルトンさんのところに行った。
「これで、いつでもオレに連絡できますから。」
「わかった。じゃあ、連絡するから。期待して待ってろよ。」
「はい。」
オレ達は家に帰った。
「ケンって本当にすごいにゃ。」
「だって、ケン兄だもん。」
「あの水晶をお父様と叔父様にもあげられないかな?」
「いいよ。」
「本当! ケン! 大好き———!!!」
ミサキがオレに抱き着いて頬にキスしてきた。
「ずる————い! ミサキ姉ばっかり! 私もキスした————い!」
その後、3人にキスされまくりだった。なんか、地球ではモテなくて辛い思いをしたが、モテすぎるのも辛い。その後、オレは連絡用の水晶を作ってジミー公爵様の家を訪ねた。すると、公爵妃のキャサリン様と一緒にクララを連れて王城に行っているようだった。そこで、オレ達も王城に向かうことにした。
「伯爵様。応接室でお待ちください。」
兵士達も慣れたものだ。オレの顔を見ると、すぐに国王陛下に連絡に行く。応接室でしばらく待っていると、国王陛下と王妃、ジミー公爵と公爵妃、それにクララが入ってきた。
「今日はどうかしたのか? 伯爵。」
「オレ達、明日には旅に出るつもりですので、連絡用の水晶をお持ちしました。」
「連絡用の水晶とな?」
「試してみましょう。」
オレは空間収納から水晶を取り出し、それを皆の前に出して見せた。そして使い方の説明をしてから部屋を出た。
「伯爵! 聞こえるか?」
「聞こえますよ!」
すると、クララの声が聞こえてくる。
「お父様。私もやりたい!」
「わかった! わかった!」
今度はクララが話しかけてきた。
「ケンお兄ちゃん! 聞こえますか~!」
「聞こえますよ~! クララちゃ~ん!」
「キャハッハッ」
オレは応接室に戻った。
「どうですか?」
「ケン殿。この便利な道具は増やすことができるのか?」
「できないことはないですけど。どうしてですか?」
「他の国の元首と話をするのに便利だと思ってな。」
「今は連絡するのにどうしてるんですか?」
「早馬か伝書鳩だな。」
「そうなんですか。なら、時間がある時に作るようにします。」
「伯爵。わしからもお願いする。」
「わかりました。」
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