第26話 ミサキ亜空間に驚く!

 伯爵となって王都に屋敷を与えられたオレ達は、執事とメイドを雇うために商業ギルドに行くことになった。



「お父様、お母様。私もケン様達と街を歩きたいのですが、いいですよね?」



 国王陛下と王妃は困り顔だ。



「陛下。オレが守りますから安心してください。」


「伯爵がそういうなら任せるとしよう。」


「ありがとうございます。お父様。」



 ミサキ王女は目が不自由だったこともあり、城下にはほとんど出かけたことがない。何よりも、自分の目で見て歩けることが嬉しかったようだ。



「ケン様。街に出かける際はお呼びください。」


「食事をしたらすぐに出かけますよ。」


「なら、着替えてきます。」



オレ達は食事をとった後、ミサキを加えて4人で城を出た。ミサキはミレイやローザのへそ出しルックに比べれば地味だが、ショートパンツにTシャツ姿でかなりかわいい。



「ミサキ様は王女だから、もっと王女のような服装かと思いましたよ。」


「変ですか?」


「いいえ。良く似合ってますよ。」


「でも、ミレイさんやローザさんのような服が欲しいです。」


「彼女達は冒険者ですから、動きやすい服を選んでるんですよ。」



 オレ達はジミー公爵の屋敷にあいさつに行き、すぐ隣の屋敷に来た。



「ケン兄。すごく大きいね。でも、お掃除が大変そう。」


「ローザちゃん。そのためにメイドを雇うんですよ。」


「ああ、そうか。」



 建物の中に入ると、久しく使っていなかったようで、床や家具にホコリがたまっていた。中には古く使い物にならないような家具もあった。天井にはクモの巣が張っている。



“リン。この屋敷ごときれいにできる魔法はないかな?”


“ありますよ。『オールリニューアル』を発動すれば、きれいになるだけでなく、すべてが新品になります。”


“ありがとう。さすが、リンだね。”


“どういたしまして。どうせ私は頭をなでてもらえませんけど。”


“えっ?!”



 オレは屋敷に出て、外から建物全体に魔法をかけた。



『オールリニューアル』



 すると、空から光の粒子が降り注ぐ。ものすごく神秘的な光景だ。全員が見とれた。光が収まった後、屋敷の外観も新築のように奇麗になっている。



「ケン。きれいにゃ。」


「ケン様。何をされたんですか?」


「魔法をかけたんですよ。」


「ケン様。私にもミレイさんやローザちゃんのように、敬語なしで話してくれませんか?」



 ミサキがもじもじしながら言ってきた。



「いいよ。なら、オレにも敬語なしだよ。それに『様』もね。あ~! 肩が凝った!」

 


 全員がその場で大笑いした。



「やっぱり、ケンは堅苦しいのが苦手だったにゃ!」


「そりゃあそうだよ。平民なんだから。」


「ケン兄。ケン兄はもう伯爵様なんだよ。それより、早く中を見ようよ。」



 そう言ってローザがオレの手を引っ張って家の中に連れて行こうとする。



「ケン兄。早く~。早く~。きれいになってるかどうか確かめたいよ~。」


「わかったから、手を引っ張らないで。」



 オレ達が中に入ると、建物の中はピカピカだった。家具も調度品もすべて新品だ。



「凄~い、凄~い。まるで、亜空間の家みたい!」



 ローザが大はしゃぎだ。だが、ミサキは不思議そうな顔をして聞いてきた。



「ケン。亜空間の家って何のこと?」


「ああ、オレが作った亜空間に家を建てたのさ。建てたって言っても、ただ想像しただけなんだけどね。」


「私も行ってみたい! いいでしょ!」



 オレは亜空間の扉を出した。



「えっ?! 急に扉が!」


「ここが入り口にゃ!」


「ミサキ姉。早く行こうよ。」



4人でその中に入った。すると、すぐにミレイとローザはウサギ達のところに走っていった。ミサキは大きな口を開けて立ったままだ。



「ミサキ! ミサキ! 大丈夫か?」



 我を取り戻したミサキはオレに聞いてきた。



「この空間はなんなの?」


「オレが創造した空間さ。」


「あの山も空も小川も、全部ケンが作ったの?」

 

「そうさ。あのうさぎ達も、それにあの家もだよ。」


「ケン。あなた、本当に何者なの?」


「・・・・・」


「ごめんなさい。驚きすぎて。そうよね。自分のことを忘れてるんだよね。」


「いいよ。それより家の中に入ってみようか?」


「うん。」


「ミレイ~! ローザ~! 家に入るよ~!」



 オレはミサキの手を引いて、白いログハウスの中に入った。すると、真っ白なソファー、真っ白なキッチン。すべてが純白だった。そして、温水式のトイレにジェットバス。極めつけはそれぞれの部屋だ。



「この部屋何なの? 私の部屋よりもはるかに王女っぽい部屋よ。」


「ああ、ミレイとローザの部屋さ。彼女達はオレの部屋に入りびたりだから、ほとんど使わないけどね。」


「やっぱり私もケンさんと一緒にいたい。」


「えっ?!」


「もう一度、お父様とお母様にお願いしてみるわ。」


「なら、ミサキの部屋も作ろうか?」


「本当? 本当にいいの?」



 オレは頭の中でもう一つ部屋を想像した。すると、壁にドアが現れ、そのドアを開けると真っ白な壁に真っ白な天井。そして、大きなベッドにはピンクの花柄の布団があった。



「今何したの?」


「ミサキの部屋を作ったんだけど。」


「作ったって・・・・」


「この空間の中では、オレが想像したものがすべて現実になるんだよ。」


「そうなの。不思議ね~。」



 そこにミレイとローザがやってきた。



「ミサキ。ずるいにゃ! ケンを独り占めしてるにゃ!」


「ミレイにもローザにも声をかけただろ!」


「聞こえなかったにゃ。」


「この部屋がミサキ姉の部屋?」


「そうだよ。」


「ベッドがピンクだ~! 私のベッドもピンクがいい。ケン兄。ピンクにして~!」


「だって、ローザは自分のベッドなんか使わないだろ!」


「いいの! 一人で寝るときもあるから!」


「わかったよ。」



 オレはローザの部屋に行って、ベッドの布団をピンクのウサギ柄にした。



「ケン兄。ありがとう。ウサギさんだ~! かわいい~!」

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