第25話 王都での新たな生活
その後、オレ達はジミー公爵様に連れられて応接室にやってきた。待ちくたびれたのか、クララ嬢は寝ていた。
「可愛いにゃ。寝てるにゃ。」
「確かにかわいいな。」
すると、ジミー公爵がクララ嬢を起こした。
「クララ、クララ。起きなさい。」
クララ嬢は目をこすりながらオレ達を見て笑顔になった。
「お帰り。マスクマン。」
「こらっ! もうマスクマンではないぞ! ケン=ダンデライオン伯爵だ。」
「お兄ちゃん。貴族になったの?」
「まあね。」
「クララ。喜べ。ケン殿の屋敷はわが屋敷の隣だ。」
「本当? お父様~? 私、毎日遊びに行く~。」
オレ達が談笑していると王族の皆さんがやってきた。オレが片膝をついてあいさつをしようとすると、国王陛下が止めた。
「やめてくれ。ケン殿。神かもしれぬそなたにそのような挨拶はさせられぬわ。」
「国王陛下。先ほども話しましたが、オレは普通に人間ですから。」
「まあよい。」
すると、ミサキ王女が急に席を立ちあがってオレの近くに来た。そして、国王陛下と王妃に向かって大声で言った。
「私はケン様と一緒にいたいです。お父様、お母様、よろしいですよね。」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。」
オレは焦った。隣ではミレイとローザが真っ赤な顔をして怒っている。すると、王妃がミサキに言った。
「ミサキ。あなたがいくら一緒にいたいって言っても、ケン殿が嫌だってこともあるのよ。相手の気持ちを考えなさい。」
「ごめんなさい。ケン様。私を一緒にいさせてくれませんか?」
「オレと一緒にいるって、それはパーティーメンバーになるってことですか?」
すると、国王が不思議そうな顔で言った。
「パーティーメンバー?」
「冒険者の仲間ってことですよ。」
すると、王妃が真剣な顔で言った。
「冒険者なんてとんでもないわ。さっきまで目も見えずに一人で歩くこともできなかったのに。そんな危険なことは許しませんよ。」
王妃の一言でミサキ王女は諦めたようだ。すると、今度はクララ嬢が言った。
「私、マスクマンと一緒にいたい。いいでしょ? お父様。」
「クララ様はまだ子どもじゃないですか?」
すると、子ども扱いされたクララが怒りだした。
「私、もう子どもじゃないもん。ローザお姉ちゃんと変わらないもん。」
「そうなんですか? 公爵様。」
「確かにクララは子どもっぽいですが、今年10歳になります。」
「えっ—————!!!」
「マスクマン。酷い!!!」
周りの人達が全員笑顔だ。なんか、神様には悪いが、約束を守れずに目立ってしまったが、
オレは嬉しかった。
その日、オレ達3人は王城に泊まることになった。それぞれの部屋を与えられたのだが、思った通りミレイとローザはオレの部屋に来た。
「一緒に寝るにゃ。伯爵様~。」
「やめてくれよ。ミレイ。オレは別に貴族になりたかったんじゃないんだ。」
「ごめんなのにゃ。」
「いいさ。」
オレは素直に謝るミレイが可愛くて頭を撫でた。なんか目がとろんとしている。危ない気配だ。
「さあ。寝るよ!」
翌朝、オレは苦しくて目が覚めた。いつもよりベッドが小さかったからか、ミレイの足とローザの頭がオレの胸や腹の上にあった。2人を起こして身支度を整えて食堂に行くと、王族の皆さんが食事中だった。
「おはようございます。」
「疲れていたようだな。」
「申し訳ありません。つい寝坊してしまいました。」
「気にすることはない。それよりも、今日の引っ越しだが、貴族となったからには使用人が必要だろう。早く屋敷に行って、執事とメイドを手配した方がよいぞ。」
「わかりました。食事をしたらすぐに向かいます。」
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