第24話 とうとう目立ってしまう!
王城に呼ばれて、現在ケンとミレイとローザの3人は謁見の間で、大勢の貴族がいる中、国王陛下と謁見中である。だが、この近衛騎士団の団長に勝負を挑まれてしまった。面倒ごとを避けるため、転移で逃げようかと考えていると、リンが言ってきた。
“マスター。ここは私にお任せください。”
“えっ?!”
すると、左手の指輪が光り始め、どんどんまぶしくなる。そして、真っ白な服をまとい、背中に純白の翼を広げた美少女が現れた。
「私は大天使ナルーシャです。わが主に対するこれ以上の無礼、この私が許しません!」
オレも含めて全員が驚いた。椅子に座っている王族以外、その場のすべての人間が片膝をついた。近衛騎士団長は真っ青な顔になって震えている。
「わ、わ、私のご無礼。何卒お許しください。」
「わかればよいのです。」
ここで、国王陛下がオレに聞いてきた。
「大天使様を従えるとは、そなたは神なのか?」
「オレにも自分が何者かわかりません。」
「マスター。時期が来ればわかりますよ。今まで通りでいいんですよ。」
その言葉は慈愛に満ちていた。そして、大天使ナルーシャの姿は消え、今度は王族を除く全員がオレに臣下の礼を取る。
「皆さん。やめてください。オレは普通の人間ですから。そんなことをされたら、もうこの国にはいられなくなります。」
オレの言葉を聞いて焦ったのは国王陛下だ。
「皆の者、ケン殿がこう言っているのだ。今後、一切このようなことがないように。これは王命だ!」
「ハッ」
ここで、目が不自由な王女がゆっくりと立ち上がって、国王と王妃に言った。
「お父様。お母様。この方です。私の夢に出てこられたのは。」
「えっ?!」
「ミサキ。座るがよい。すまぬな。ケン殿。ミサキは生まれた時から目が見えぬのだ。だが、小さいころから不思議な夢をよく見てな。いつか、自分の目を治してくれる人物が現れるらしいのだ。」
「それがオレだと?」
「どうやらそのようだ。」
オレの空間収納にはキュアオールポーションがある。それを使うべきか、それともオレ自身で治療するべきか悩んだ。
“今回はマスター自身が『リカバリー』で治療することをお勧めします。”
“わかったよ。リン様!”
“私はマスターの補助をするただのリンですよ。『様』はやめてください。”
「国王陛下。ミサキ様の目を見せていただいてよろしいですか?」
「そうか。見てくれるか。頼む。」
オレはミサキ王女のところまで行った。オレが何をするのか興味があるようで、貴族達も全員が食い入るように見ている。オレは、ミサキ王女の目に手を当て、全身の魔力を手に集め治癒魔法を発動する。
『リカバリー』
オレの手から神々しい光がミサキ王女を包み込んでいく。そして、ミサキ王女の体が暖かく柔らかい光の中に包まれ見えなくなった。しばらくして光が収まった。もう、その場の貴族達も兵士達も驚きで口を開けたままだ。
「王女様。ゆっくり目を開いてくださいね。」
「はい。」
ミサキ王女がゆっくりゆっくりと目を開いて行く。その隣では、国王と王妃が心配そうにミサキ王女の手を握っている。
「どうですか? 見えますか?」
「はい!!! 見えます!!! お父様の顔もお母様の顔も見えます!!!!!」
「よかったです。」
オレは、ミサキ王女から離れて、元居た場所に戻った。
「やっぱり、ケンは凄いにゃ!」
「ケン兄! 神様みたい!」
「違うから! 神様に失礼だから!」
国王陛下と王妃、ミサキ王女は抱き合って泣いている。貴族や兵士達の中にはもらい泣きしている者達もいた。ここで、ジミー公爵が国王陛下に声をかけた。
「陛下。ケン殿を待たせてはいけませんよ。」
「そうであったな。」
国王と王妃が自分の席に戻った。そして、国王は席を立ちその場の全員に言った。
「ケン殿に褒美を与える。ケン殿は本日より我が国の伯爵位を授ける。法衣貴族として王都に住むこととする。なお、屋敷は公爵家の隣地の旧王家の屋敷を与える。さらに大白金貨100枚を与える。以上だ!」
焦ったオレは報酬を辞退しようと国王陛下にお願いした。
「陛下。お待ちください。オレは世界中を旅します。爵位や屋敷をいただいても、お役に立つことができないかもしれません。」
「ケン殿。良いのだ。ケン殿は今まで通り自分の思った通り生きればいい。これは、この国からの感謝の気持ちなのだ。」
「ならば、オレがいただくお金ですが、貧困者のために使ってください。オレがそんな大金をもらっても使い道がありません。それよりも、この国で貧困に苦しむ人達に仕事を与え、親のいない子ども達を保護してあげてください。」
「ケン殿。そなたには欲がないのか?」
「ケン兄は目立ちたくないんだよね。」
「そうなのか? ケン殿。だが、なぜじゃ?」
「ある人と約束しましたから。」
「そうか。ならば、その申し出を受けよう。ケン殿の報酬の大白金貨100枚はジミー公爵に預ける。ケン殿の願いを叶えてやってくれ。」
「ハッ。承知しました。」
ここで、公爵様が言った。
「ケン殿。そなたも今日より我が国の貴族だ。家名を述べるがよい。」
急に何もかも決まってしまった。それに、家名とか言われても困る。オレはしばらく考えた。すると、ある言葉がオレの頭に浮かんだ。
「オレの家名は『ダンデライオン』にします。」
「ケン殿よ。どういう意味だ? 教えてくれぬか。」
「オレの故郷の花の名前です。道端の雑草で、踏まれても踏まれても立ち上がります。そして最後には、幸せの種が空いっぱいに飛ぶんです。」
ここで目が見えるようになったミサキ王女が声を発した。
「見てみたいわ。この目で。・・・・ケン様。あなたと一緒にいつか見てみたいです。」
隣で、ミレイとローザが怒った顔をして頬を膨らませている。
「では、本日ここにケン=ダンデライオン伯爵が誕生した。よいか皆の者!」
「ハッハッ——————」
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