第22話 王都の冒険者ギルド

 翌朝、オレ達は亜空間から出て王都を歩いている。ポーションを売るためだ。作ったポーションはすべて魔法の鞄に入れてある。



「どこに売りに行くにゃ?」


「冒険者ギルドか、商業ギルドか、薬屋だね。」


「ケン兄。一番高く買ってくれるところがいいんじゃない?」


「そうだな。じゃあ、全部聞いて回るか?」


「そうするにゃ。」


 

 なぜかオレの右手はミレイが、左手はローザが握っている。オレ達は最初に冒険者ギルドに行った。朝の時間だけあって、ギルド内には冒険者達が沢山いる。オレ達はまっすぐに受付の女性のところまで行った。



「すみません。ギルドではポーションって買取してますか?」


「大丈夫ですよ。こちらに来てください。案内しますね。」



 オレ達は奥の部屋に案内された。そこには様々な色のポーションが置いてあった。



「ここに出してみてください。」



 オレは魔法鞄からローポーションとミドルポーションを取り出した。そして、最後にハイポーションを取り出すと受付の女性の顔色が変わった。



「少々、お待ちください。」



 受付の女性は一言いって、どこかに走って行ってしまった。しばらく待っていると、ガタイのいい冒険者風の男性と戻ってきた。



「ポーションを売りたいというのは君達かい?」


「はい。」



 男性はポーションを一つずつ手に取ってじっくりと見ている。



「これは、ローポーションだね。1本銀貨3枚だな。こっちのミドルポーションは1本大銀貨3枚だそう。最後にこのハイポーションは1本金貨3枚でどうだ。」


「ありがとうございます。相場が分からないので、商業ギルドにも聞いてみます。」


「おいおい、待ってくれよ。もしかして、高い方に売るってことか?」


「はい。商売ですから。」


「なら、銀貨5枚に大銀貨5枚に金貨5枚でどうだ?」


「初めて作ったんで、本当に相場がわからないんですよ。だから、商業ギルドにも聞いてみたいんです。」


「お前、今、初めて作ったって言ったよな?」


「はい。」


「これ全部、お前が作ったのか? しかも初めてなのか?」


「はい。」


「お前、ギルドカード持ってるか?」


「ええ。」


「見せてくれ。」



 オレはギルドカードを見せた。



「ケンっていうのか。Fランクじゃないか。」


「そうですけど。」


「Fランクでハイポーションが作れるわけないだろう?」



 まずいと思った。買ってきたと言えばよかった。もう後の祭りだ。



「オレ、魔力だけはなんかすごいみたいなんですよ。」



 オレは何とかごまかしてこの場を切り抜けようとした。だが、男性は受付の女性に魔力量を測定する水晶を持ってくるように命じた。



「ギルマス。水晶を持ってきました。」


「ここにおいてくれ。」


「はい。」



 今、オレの目の前には魔力測定のための水晶が置いてある。



「この水晶に手を置いて魔力を流してみろ。」



オレは疑われないレベルで魔力を流そうと、男性に言われた通り水晶に手をのせた。次の瞬間、水晶がまぶしく光ったと思ったら砕け散ってしまった。



「パリン」



その場の全員が目を大きく見開いて驚いている。オレ自身もだ。



「お前、何者だ?」


「普通に旅のものですよ。怖い顔にならないでくださいよ。わかりました。この3本はここに置いていきます。それでどうでしょう?」


「『この3本は』ってことは他にもあるんだよな~。」


「あまり困らせないでくださいよ。オレも十分妥協してるんですから。」



 オレは少しだけ闘気を解放した。すると、男性の顔色が変わり、受付の女性は地べたに座り込んでしまった。



「わかった。わかった。わかったからその闘気は抑えてくれるか?」


「はい。わかっていただければそれで結構です。」



 オレ達は代金をもらって、商業ギルドに向かった。オレ達が立ち去った後、ギルドマスターの部屋には先ほどの男性と女性がいた。

 

 

「ギルマス。先ほどの少年達は何者なんですか?」


「わからん。だが、少し前にピッツデリーの街でドンキ盗賊団50人がたった一人の少年に捕らえられたそうだ。全員が片足を失った状態なのに、足から血が出ていなかったんだと。それに、スピカの街でもコルベット子爵を主犯とする誘拐犯達が全員捕らえられたそうだ。その時、犯人達は不思議な首輪をはめられ、しかも転移魔法で運ばれたそうだ。その時、犯人達を捕らえた者はマスクをしていたようだが、少年だったそうだよ。」


「2つの事件は同じ人物の仕業なんでしょうか?」


「恐らくな。」


「もしかして、今日のあの少年が。」


「もしかしたら、もしかするかもな。公爵様にすぐにお伝えするぞ!」


「はい。」



 ギルドマスターは慌てて、王都にある公爵様の屋敷に向かった。



 そんなことになっているとも知らずに、オレ達は商業ギルドに向かっていた。



「ケン。まずいにゃ。あの闘気は。」


「私も少し体が震えちゃった。」


「ごめんよ。オレ短気だよね。次は我慢するから。」



 2人の頭を撫でながら謝った。すると、安心したのか2人の顔に笑顔が戻った。その日は、そのまま亜空間の家に戻り、亜空間の庭を散策して休むことにした。そして、翌日あらためてポーションを持って商業ギルドに向かった。

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