第16話 エルフの少女ローザ登場
体の一部を欠損し、重い病にかかったエルフの少女を奴隷商人から買い取ったオレは、他の人間に見られないように、街の外に転移することにした。
「ミレイ。オレはお前が旅に同行することを許可した。秘密は厳守だ。約束したよな。」
「わかってるにゃ。」
「ならオレの腕に捕まれ。」
ミレイがオレの腕を掴んだ。ミレイの大きな胸がオレの腕に当たる。柔らかい感触だ。オレはエルフの少女を抱えて、そのまま街の外の森に転移した。ミレイは急に景色が変わって目を白黒させている。
「どうしたにゃ? 何が起こったにゃ?」
「転移したんだよ。」
「転移にゃ~?!」
「ミレイ。秘密は守れよ!」
「わかってるにゃ。でも、ケンは何者にゃ?」
オレはミレイを無視して、エルフの少女を地面に降ろして、魔石を手に持ち『ヒール』を発動した。だが、様態がよくならない。しかも欠損した手はそのままだ。
「ケン。やっぱり無理にゃ。」
“リン。この子を助けたい。この子を治したい。何か方法はないか?”
“ないことはないですが。ただ、この魔法は究極の聖魔法です。今のマスターに使えるかどうかわかりません。”
“無理でもいい。教えてくれ! リン! 目の前に苦しんでいる者がいるんだ! 何とかしたいんだ!”
“ならば、『リカバリー』を使ってください。やり方は教えます。”
“ありがとう。リン。”
オレの頭の中に魔法と発動方法が浮かんでくる。オレは自分の魔力を右手に集中させた。そして、一気に魔力を解放する。
「ミレイ。もう一度やってみるよ。」
『リカバリー』
すると、エルフの少女の身体が眩しく光り出す。そして、その光からは温もりが感じられた。少女を見ると、顔色がどんどん良くなり、欠損した手がどんどん元に戻っていく。やがて光がおさまると、少女が目開けた。
「間にあって良かった。もう大丈夫だ。心配ない。」
「ありがとう。お兄ちゃんが助けてくれたの? 体が楽になったよ。」
「良かった。腕の動きも確認してごらん。」
エルフの少女は自分の腕を見た。そして驚きの声をあげる。
「う、腕が元に戻ってる————!!」
すべてを見ていたミレイは口を開けたまま気絶していた。
「ミレイ! おい! 起きろ!」
オレが声をかけると、目をぱちぱちしながらミレイが意識を取り戻した。
「ケン。今の魔法は何にゃ? 腕が、腕が生えてきたにゃ。」
「ああ、『リカバリー』って言って欠損した部位を治す魔法さ。」
「そんなすごい魔法を使えるにゃか? ケンは魔法使いだったにゃか?」
「オレは剣も魔法も使えるのさ。」
エルフの少女に話を聞くことにした。
「オレはケンだ。君の名前は?」
「私はローザ。」
「僕はミレイにゃ。ローザ、何があったにゃ?」
「うん。私の住んでた村が盗賊に襲われて、お父さんもお母さんも殺されたの。お母さんが私を逃がしてくれたんだけど、途中で盗賊達に見つかって・・・・」
ローザは思い出して辛くなったのか、泣き始めてしまった。
「わかったよ。もういいよ。それよりこれからどうするかだな。」
「何もできないけど、私も一緒にいさせてもらえませんか?」
オレはミレイと顔を見合わせた。ミレイは頷いている。
「いいけど、約束して欲しいことがあるんだ。」
「なに?」
「オレがローザに使った魔法のことや、これから知ることを絶対に秘密にして欲しんだ。」
「わかりました。では、これから主様とお呼びします。」
「やめてくれよ。ミレイと同じように、ケンでいいよ。」
「わかりました。」
「ところで、ローザはいくつだ?」
「私はエルフ族ですから、あまり当てにはならないと思いますが、20歳です。」
「えっ?! 20?」
「でも、人族の年齢では恐らく10歳ぐらいだと思います。」
「そうだにゃ。そのちっちゃな胸を見ればそのぐらいだにゃ。」
すると、ローザは胸のあたりを手で隠しながら言った。
「まだ成長途中ですから。ケン兄様に気に入ってもらえるような体になります。」
「別にオレはローザを性奴隷としたいわけじゃないから。そういうのはいいから。」
「ケン兄様は、私が嫌いですか?」
「別に違うから。それより、街に戻ってローザの服を買わないとな。ああ、それと、『様』はいらないから。」
「なら、『ケン兄ちゃん』でいいですか?」
「いいよ。ローザ。」
「はい。」
「お腹が空いたにゃ。ケンもローザも早く街に戻るにゃ。」
オレ達は森から再び街の中に転移した。
「最初に服屋に行くにゃ。服を買ったらご飯にゃ!」
「いいけど、ローザの服はダンジョンに行っても大丈夫な服を買うようにな。」
「ダンジョンですか?」
「ミレイが行きたいんだってさ。」
その後、みんなで服屋に行った。オレは店の外で待っている。すると、ミレイがローザを連れて出てきた。ミレイと同様で上下セパレートのへそ出しルックだ。ものすごく可愛い。
「似合ってるじゃないか。ローザ。」
「あ、ありがとうございます。」
「まだ、敬語になってるぞ! 敬語じゃなくていいから。」
「は、・・・うん。」
それから食事をして、冒険者ギルドに行ってローザの登録をしたら、夕方になってしまった。その日はもう遅いので宿をとることにしたが、どこの宿も冒険者で一杯だ。街のはずれまでくると、そこに1軒だけ宿屋があった。どうやら冒険者がほとんど泊まっていないようだ。
「お客さん。部屋はいくつ必要だい?」
すると、ミレイがせき込むように答えた。
「1つにゃ。ベッドは2つにゃ。」
「分かったよ。なら、1泊2食付きで1人銀貨6枚ね。」
オレ達が部屋に行くと、部屋にはトイレと風呂がついていた。それに、大きめのベッドが2つあった。部屋自体かなり広めになっている。最初は少し値段が高いと思ったが、部屋に入って納得だ。部屋に入ると、すぐにミレイが服を脱ぎ始めた。
「ヤッタにゃー! お風呂にゃ~! ケンもローザも早く脱いで入るにゃ。」
「オレは後で入るから。」
「そうかにゃー。背中流したかったにゃー。」
2人は一緒にお風呂に入りに行った。2人が出た後、オレもゆっくりと一人で入った。なんか生き返る。本当に風呂は気持ちいい。すると、出たはずの2人が再び入ってきた。驚いたオレは慌ててタオルで隠した。
「どうしたんだ? 2人とも。」
「やっぱり、背中流すにゃ。」
2人をチラッと見ると、しっかりタオルを巻いていた。
「ふ~! 焦るじゃないか?」
「何を焦るにゃ?」
「別に!」
お風呂から出た後、手から温風を出して2人の髪を乾かした。生活魔法レベルだけど、基本属性魔法が使えて本当によかったと心から思った。
「ケンの魔法は便利だにゃ~。」
「本当、ケン兄ちゃんは何でもできるんですね。ありがとうご・・、ありがとう。」
「ローザ。無理しなくていいよ。少しずつ慣れていけば。」
「うん。」
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