涙を拭き取ったのは…
「助けてくれてありがとう。桜の
僕は、今だけ降り積もった罪悪感に蓋を閉め、俯いていた彼女の前髪に咲いていた
「あの男の話は…本当ですか?私があの男と性行為していたのは…でも、私はそんな記憶もありません」
——気にならないわけがないよね。現在は、僕が彼の契約するはずだった神を横取りしたから、もうそんな事が起こる事はないとはいえ…僕自身がこの世界のキャラクター達の親である以上、少なからず、責任がある。
「人集まっているから…少し距離を離そうか」
その後、入学式で使われる可能性が低い食堂棟の方へと彼女の手を引っ張り走り出す。実践棟から食堂棟までの距離は、徒歩五分程で到着した。
「最初に僕とあの男の共通点は『生まれる前の記憶』を持っているところだけだと伝えておきたい。それでも…残念だけど、あの男が話したのは事実…だけど、実情は異なるんだ…。なんていえば良いかな〜…」
ただでさえ、如月健斗の言葉に傷ついている玲緒奈へ
淡々とした事実を告げてしまうのはダメだ。だから、優しい言葉で伝えるためにも、一旦、言葉を濁すことで、その間に頭を全力で巡らせた。
「ここで生活する前の僕達が住んでいた所では、この世界は漫画と呼ばれる娯楽品だったの。その物語の中で、僕も、君も、他たくさんの人がさっきの男と性行為していたのは事実だよ」
——この説明で通じてくれると良いんだけど…
「つまり…私のいま住んでる世界とは別の世界で..って事…ですか…?私であって私でないなら…うん…」
——玲緒奈の表情は下唇を噛み締め、拳を強く握っている…。優しいはずの彼女にそうさせてしまった…。勇気を出して、拳から庇ってくれた彼女を僕は守れなかった…。その事実は、死ぬ前に襲ってきた三重苦よりも、よっぽど、僕の胸を抉った…。
「なんで…私よりも知っていたはずの…あなたが…小さい雨を降らせているんですか…?」
僕は隣で顔を左右に振って、ひたすらに謝り続けることしかできなかった。
玲緒奈は、そんな僕を見兼ねたのか…制服の胸ポケットからハンカチを取り出し「あなたには…きっと、今日の空のように晴れた笑顔が似合うと思います…」と僕が眼から流した小さな雨を優しく吹き去った後、入学式会場の実践棟の方向へと戻っていった。
——そんな彼女に思わず、見惚れてしまい…ってダメ!!なんで僕の方が堕ちそうになってるの…!!
気合を入れ直すために、両頬を叩いた後…僕自身も実践棟へと戻る。すると、先程よりも人の波があり、会場の入り口に入るために行列の最後尾へ並び、空を眺めながら、僕の順番が来るまで待ち続けた。
約十分後に、会場の中へ入れるようになったのは幸運と言えるだろう。
中に入ると…日本の高校をモチーフにしていただけあって、幅広くできていた、しかも、この実践棟の床は日本でお馴染み体育館の床とほぼ同じ構造である。
実践棟の床の上には、大量のパイプ椅子が置いてあり、右奥、左奥にはそれぞれ、教師陣と来賓の方々と思しき人達がいた。
——来賓まで描いてたっけと思いながらも、入室順に座って行くであろう空いてる席に座って待つ。
「ただいまより…レスタ魔法学院の入学式を開催致します。まずは、弥生秀春校長よろしくお願いします」
周りの小さい声と後ろから次々と入室する足音が鳴り響いていたのが、急に止み、入学式の会場全体に届くような大きなアナウンスが流れた。
「おはよう御座います!!ただいま、ご紹介に預かりました弥生秀春と申します!!新入生の皆様、来場へお越しの方々、冬の厳しさを乗り越え、新たな春の訪れを感じる季節に沢山の方々に出会えた事、誠に嬉しく思います」
——あの、弥生校長の頭だけはまだ冬を乗り越えられてませんが…ゴホッ、それはともかく、僕はこの弥生校長にもこだわりがあるのだ。それは…
「皆様がこの伝統あるレスタ魔法学院の一員になった事を嬉しく思います。しかし、ここは学びの場です。生徒には、自主性及び積極性のある方が多いことを期待してます。これにて、私の挨拶を終わらせていただきます」
——ご覧の通り、話が簡潔であることだ。中学生の頃に猛暑の中、体育館で行われた——当時、校長の長話により、脱水症状を起こした苦い経験がある僕は、エロ漫画でも、校長に強い拘りを持つ。
会場から盛大な拍手が行われた弥生校長による挨拶の後は、在校生代表の三章ヒロインにして、レスタ魔法学院生徒会長:
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誤字脱字ございましたら、即時訂正致します。
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後半の文訂正致しました。
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