第4話

「とりあえず帰ったら風呂入って寝ろ。疲れたろ」


「…きれいな車に乗せてもらってすみません。お風呂入ってないのよくわかりましたね」


「そんなことは言ってない。別に汚くない」


「お風呂入らせてもらって本当にいいんですか?垢だらけで、けっこう汚いかも」


「いい。掃除したら取れる」


「うん。そうだけど…ところで、私は仕事なにしたらいいの?」


「ただ元気にしてればいい。勝手に部屋使ってくれ」


「それが嫁の仕事?」


「今日はもう寝ることだけ考えろ」


「わかった。ふぁー、なんか眠くなってきた」


他人の車で伸びをしてる。えらく余裕だな。


「風呂入る余裕あるか?」


「うん。大丈夫」


「飯は?食ってないだろ?」


「うん。お腹すいたな。でも、私今お金がないしなぁ…小銭とか入ってないかな」


肩にかけてたペラペラの薄い布のトートバッグをあさってる。あ、こいつのカジノのチップ戻すの忘れてた。ま、いいや。捨てれば。


「飯くらい家にあるぞ。なめんなよ」


「でも、お金ないよ?」


「お前嫁になるんだろ?だったら俺のもんは全部やるよ」


「…そうなの?ありがとう」


気安く話しかけられるのが、不思議だ。この顔で怯えられるのがいつものことだから。


「荷物はそれだけか?」


「うん」


トートバッグ一つ。


「着替えは?」


「洗濯してない」


「だろうな…。店閉まってるし俺の服貸す」


「ありがとう」


素直に話して、普通に会話してる。

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