第2話 同胞

城に向かって歩き始めた時だった。

「お!同胞じゃねーか!調子はどうだー?」

見知らぬ青年に肩を組まれた。もしかして彼は僕のことを知っているのだろうか。記憶を取り戻せるかも知れない。

「えっと・・・、同胞ですか?僕たちはどこかで会ったことがあるんでしょうか?」

「いやいや、俺たちが会ったことはないはずだ。さてはお前初めてなんだな?色々戸惑うことも多いだろうが、お前の思うままに行動していけば良い。俺たちは本能に逆らうことができないからな。」

初めて?本能?彼は何かを知っていそうだが、誤魔化されているような気がする。僕には言えないことなのだろうか。でも今の僕にとって彼が唯一の手がかりなのでここで引き下がるわけにはいかない。

「あの、もう少し詳しく教えてもらえませんか?初めてというのは何のことなんでしょうか。それに本能って何ですか?僕があなたの同胞だとわかった理由も教えてほしいです。実は僕、記憶喪失みたいで何も分からなくて。何でも良いので知っていることがあれば教えてほしいです。」

「ごめんな。俺も教えてやりたい気持ちは山々なんだが、決まりがあって教えられないんだよ。ただ同胞だとわかった理由は説明できるぜ。俺たちにはこのブレスレットがある。お前にもあるだろう?これをつけている奴らはみんな同胞だ。悪い奴はいない。」

そう言って彼は左腕についているブレスレットを見せた。腕を見てみると僕にもブレスレットがついている。今まで周りしか見ていなかったので気がつかなかった。

「決まりというのがあるんですか。じゃあ、これからどうすれば良いのかだけでも教えてもらえませんか。」

「うーん、それは俺も分からないんだ。なるようになるとしか言えないな。俺はとりあえず歩き回ることにしてる。お前は初めてで不安だろうし、俺がついて行ってやろうか?これからどうするかなんて全く考えていないが、一人でいるよりかはマシなんじゃないか?」

「本当ですか!お願いします!」

「良い返事だな!じゃあ俺のことは先輩とでも呼んでくれよ。あと敬語は要らねぇよ。」

「はい、じゃなくて、うん!これからよろしく。」

先輩が来てくれるというならしばらくは安心だ。記憶が戻るかはまだ分からないが、何とかなるだろう。

「お前はどんなことをしでかしてくれるんだろうな。」

「え?何か言った?」

「いや、何でもねぇよ。とりあえずここら辺を歩いてみようぜ。こんなに賑やかな場所なんて滅多に見られないからな。」

先輩が今までどんな場所に行ってきたのかという話を聞きながら通りを散策し始めた。

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