役割を果たした先

琥珀

第1話 発生

気がついたとき僕はこの世界の上に立っていた。今まで何をしていたのか、どうしてここにいるのか、何もわからない。ただ僕の中にはこの世界にという奇妙な感覚だけが残っていた。

「ここはどこだ?僕はさっきまで何をしていたんだろう。まさか記憶喪失とかじゃ無いよな・・・?」

何かを思い出せるかもしれないし、とりあえず周りを見渡してみることにする。ここは商店街のようでたくさんの人で賑わっている。僕はこんなに賑やかな場所で急に記憶喪失になったんだろうか。正直信じられない。まぁ、それは今考えても仕方がないか。とにかくまずは情報集めだ。店の人に聞いてみたらここがどこかくらいは分かるだろう。あそこで饅頭を売っている気さくそうな女性に聞いてみよう。

「こんにちは。僕、ここに来るのは初めてなんですけど、とても賑わっていますね。この辺りは有名な場所なんですか?」

「いらっしゃい。あんた、ダイヤモンド通りを知らないってのかい!?ここはストーン国で最も栄えている有名な城下町、その大通りだよ。この通りを真っ直ぐ行った先に王様の住むお城があるんだ。王様の人気もあってここらは常に賑わっているのさ。」

「そうなんですね。」

「そうだ!この通りを知らないってことはあんた、遠くから来たんだろう?この国の者なら皆知っていることだけど、ここストーン国には勇者様がいるんだよ。その勇者様というのはね、この国の平和を脅かしている魔王を討伐するために極秘で探し出された国の最強の戦士いう話なんだが、まさかあんたが勇者様だったりしないかい?なにしろ魔王に対策されないためという王様の意向で勇者様のお姿はあたしら国民でさえも知らないからね。あんたはここら辺に詳しくないようだし、もしかしてと思ったんだけどどうなんだい!」

「すみません、僕は勇者ではないですよ。」

今の僕は記憶喪失だから本当にそうなのかは分からないけれど、否定しておくことにした。

「あはは!そうだろうね。こんな簡単に勇者様を見つけられていたら国民がそのお姿を知らないわけが無いだろうよ!変なことを聞いて悪かったね。お詫びにこの饅頭をあげるよ。今日は楽しんでいきな!」

僕は軽く礼を言って、その場から離れた。場所だけで無く魔王や勇者と言った存在を知れたのは僥倖だ。けれども何かを思い出せそうな気配は無く、何となく城に向かおうと歩き始めた。

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