大文字伝子が行く60

クライングフリーマン

大文字伝子が行く60

午前9時。都内のある墓地。愛宕と伝子が墓参りをしている。

「大文字、愛宕じゃないか。今まで何していた?年賀状が届かないから、死んだかと思ったぞ。」と和服美人の女性が言った。

「副島先輩。ご無沙汰しております。」「ご無沙汰で7年か。墓参りはしてくれていたようだが、私には連絡は無し、か。舐めとんのか!」

二人はその場で土下座をした。「申し訳ありません。」「偶然ですが、二人とも結婚をして失念しておりました。」もう一度、二人は土下座した。

「どうされました、師範?」和尚が声をかけてきた。

寺の庫裏。副島はるかが怒っているので、伝子と愛宕の話を、ひたすら和尚が聞き役になって聴いた。「そうですか。愛宕さんは警察に就職して警部補さんに。大文字さんは、小説家になったけれど、愛宕さんの手伝いをしている内に、悪党退治の専門家になり、EITOにスカウトされて、テロリスト対策の行動隊長になられた。こういうことですかな。」

「流石です、うまくまとめられました。私も愛宕も今年になって、正式に結婚しました。愛宕のところは、冬には子供が生まれます。」と伝子は言った。

「不調法だったことは事実ですが、二人とも深く反省しているようですし、どうでしょう。溜飲は下がらないかも知れませんが、私に免じて許してやってくれませんか?」

和尚の言葉に、はるかは折れるしかなかった。「二人とも、罰として、年賀状暑中見舞い及び中元歳暮は欠かさないこと。中元歳暮の表書きや送り状は自分で書け。分かったな。」

「はい。」二人は深くお辞儀をした。「先輩。再会ついでと言ってはなんですが、教えて貰えませんか?」と伝子は切り出した。

「実は、今の話に出た黒井なんですが、先生とは交流は無かったでしょうか?担任だったと思うのですが。」「あったよ。毎年欠かさず年賀状や暑中見舞いをくれた。父の死後は、私宛てにな。誰かさん達とは大違いだ。」「申し訳ありません。実は、彼の目の手術をした医師を探しています。」「『死の商人』を探したい、という訳か。いいだろう。明日持って行ってやる。ヒントになる情報が載っていればな。」

午後1時。伝子のマンション。昼食後。朝の一件を伝子は高遠に説明していた。「という訳だ。リストの人物は探し出せたか?学。」

「時間がかかりそうだよ、伝子さん。草薙さんにも難問らしい。人物名のリストだから調べました。実在するけれど、一人も共通点を見いだせない。暗号としか思えない。」

チャイムが鳴った。高遠が見知らぬ、和服の女性が立っていた。上から下まで高遠を見た後、「お前が大文字の婿養子か。悪くはないな。」と言った。

「あ。先輩。学、今話していた、副島はるか先輩だ。先輩、明日じゃなかったんですか?」「お邪魔だったか。昼間からセックスしているのか?」「いいえ。昼食食べた後です。」「邪魔だろうが、邪魔するよ。」

高遠は、慌ててお茶を出そうとしたが、「ホットココアはないのか、婿養子くん。」

「あっと、切らしてます。」「じゃ、ミルクティーでいい。大文字、これが見つかった。」

高遠がミルクティーを用意していると、はるかはテーブルの上に一枚の暑中見舞いを置いた。

「ジョゼフ・ワシントン先生ですか。目の手術をしたのは。アメリカで手術、か。」と呟いた伝子に、「池上先生に調べて貰おうか。」と高遠は言った。

「池上先生?教師か?」と尋ねるはるかに、高遠は、「いや、僕の中学の卓球部の後輩のお母さんで、池上病院の院長です。池上先生は若い頃、NASA所属の感染症研究センターで働いていたんです。」と応えた。

「向こうにコネがあるのか。私の役目は終わったな。帰る。邪魔したな。」はるかは、さっさと帰って行った。

入れ替わりに、綾子が入って来た。「伝子、今そこで・・・多分そうだと思うけど。」

「副島先輩に会った?」「うん、見かけた。」

高遠は、池上葉子に電話していた。電話を切って、高遠は「調べてくれるって。」と伝子に言った。

「婿殿。今日はもうちちくりあったの?」「子作りは夜だよ、お母さん。」

高遠は思った。僕の周りはストレートな表現する人ばかりだな、と。

チャイムが鳴った。高峰くるみと、店長が立っていた。注文した食品を持って来たのだ。くるみだけでなく、店長自ら台所に運んだ。「済みません、店長自ら。」「いえいえ、お得意様を大事にするのは当然です。」「あ、そうだ。店長。ココアって扱ってましたっけ?インスタントでもいいんですけど。」「インスタントしかないんですけどね。」

と、くるみは店長と高遠の会話に割って入った。「じゃ、来月入れて貰えます?取り敢えず1箱。」「了解です。しかし、珍しいですね。」「実は、伝子さんが、伝子さんの先輩と再会して、さっきいらしたんですけど、ココアを常飲しているらしいんです。副部長の店には置いてないし。」「喫茶店なのに?」「副部長、ココア嫌いなんですよ。」

くるみと店長は笑った。「じゃ、これで。あ。担当部門からカタログ提供させますよ。」

「ありがとうございます。」

くるみと店長は慌ただしく帰って行った。

チャイムが鳴った。今日は千客万来だ。

編集長だった。「大文字くぅん。どうにかならないの?爆破予告。EITOでどうにかならないの?」「どこかで、抑止力を作らないといけないね。」

「国葬儀も終わったことだし、大文字くぅん、翻訳再開しない?締め切り、思い切り緩やかにするからさ。」「いいですよ。」「いいの?」「いいの?って、頼んだのは編集長じゃないですか。」「後で資料送るからね。」編集長は帰っていった。

伝子は、EITO用のPCを起動した。「理事官。爆破予告が続いているようですけど、那珂国のマフィアの方針転換でしょうか?」「うむ。国葬儀での混乱作戦が失敗したからな。雇った、国葬儀反対派より、献花の行列が遙かに多い人数だったことは想定外だったことだろう。所詮、国民性、民意が違うからな。爆破予告作戦、と敢えて言うなら、この作戦は所謂『オオカミ少年作戦』だろう。詰まり、いつかは本当の爆破をする。マスコミを牛耳っていることは、その献花の行列をまともに報道しなかったことでも明白だ。これからは、マスコミを利用した煽動をメインにするかも知れない。我々には、監視をして対応していくしか術はない。爆破予告作戦と同時にテロを行うかも知れないから、我々は監視を怠ってはいけない。」

「例の黒井の『目の手術』をしたドクターの名前が分かりました。ジョゼフ・ワシントン先生だそうです。この人物が『死の商人』とは思えないのですが、池上院長のコネで調べて貰っています。黒井は、アメリカで手術したらしいんです。」

「そうか。場合によっては、陸将を通じてFBI辺りに情報を提供して貰おう。それでは。」画面は消えた。

紙片を見ていた綾子は、「名前だけだけど、何だか神経衰弱やっている時みたいにクラクラ来ちゃったわ。」と言った。高遠は「それですよ、お義母さん。」と思わず綾子に抱きついた。

「止めて。娘の前で。いけないことだわ。」高遠は思わずハグを止め、離れた。

「学。何か閃いたのか?」「うん。」

午後3時半。高遠は、帰宅しているかも知れない、ひかるにテレビ電話をした。紙片のことを話し、「ひかる君に頼んでもいいかな?アナグラムのような気がするんだ。どうだろう、挑戦してくれないだろうか?」「高遠さん、僕も一緒に解いていい?」と、赤木が割り込んで来た。

「勿論だよ。」電話を切った高遠に、「何なの?あの子達。」と尋ねるので、高遠は「DDの少年の部。少年探偵団。」と応えた。

「あなた達の『敵』って、二十面相なの?」「まあ、みたいなもんかな。」伝子の横で、高遠はスマホに紙片の写真を撮り、ひかるに送った。

綾子はテレビを点けた。ニュースで、ジャーナリストの有田薫子が交通事故で入院した、と放送していた。

「まあ。大変。この人、阿倍野元総理の国葬儀に反対の人達にコテンパンに論破していた人だわ。ひょっとしたら、狙われたのかしら?」

「それだ!」と高遠が飛び上がったので、「ハグは止めろ、学。嫁の前で。」と伝子は窘めた。

高遠は、EITO用のPCを起動した。「理事官。今、ニュースで有田薫子が交通事故に遭ったって言ってましたが、単純な接触事故なんでしょうか?」「何か思いついたか。久保田管理官に行って貰う。後で連絡を入れる。」

午後4時半。堀田病院。有田薫子の病室。高速エリア署の藤村警部補がいる。

久保田管理官が入って来る。「藤村君。聞けたか?」「はい。運転手や有田さんによると、後方からわざとぶつかって、あおり運転で、何かいちゃもん付けるのかと思ったそうです。偶然、反対側車線から白バイが来たので、そのまま去って行ったそうです。当て逃げですね。強いむち打ち症に、打撲が凄いらしいです。」

「お巡りさん・・・でいいのかしら?ナンバープレートが隠されていたわ。」「やはり、狙われていたんですね。」「反対派の人かしら?」「そうかも知れません。」「もう、国葬儀終わったのに。」「連中の頭の中では終わっていないんですよ、きっと。」

管理官のバイブが鳴った。管理官が廊下に出て、電話に出ると、理事官からだった。

「交通事故は、殺人未遂でした。対向車線に白バイが走っているのを見て断念したのでしょう。」電話を切って、廊下に出てきた藤村に、「有田さんは、また狙われるかも知れないな。一応、張り番の手配をしてくれ。ここは任せる。」「了解しました。」

伝子のマンション。「爆破予告の方は順次対処していくが、こちらは厄介なことになったな。大文字君、あのリストは殺人予定リストかも知れないな。3番から始まっているのも気になるが。」

「この紙片は2枚目かも知れませんね。連絡ありがとうございました。」

伝子は理事官との通信を切った。

高遠が改めて眺めている紙片には、こう書かれていた。


3.野村昭信

4.和田新右衛門

5.エミ・北上

6.田坂耕史

7.小島太郎

8.三田賢次郎

9.湯田実

10。宇野まみ

11.下村ありさ

12.田ノ上慎一

13.桑田桂子

14。石川夏子

15.松本貞次


午後5時半。綾子は夕飯の支度を始めた。高遠のテレビ電話が鳴った。

「高遠さん、出来たよ。煎餅1年分だな。」「ありがとう。それで?」

「番号を無視して、名前をひらがなに直して、並べ替えしてみたんだ。それで、見つかった名前が『み の し ま ゆ う た』と『く わ た え い こ』。」

「高遠さん。簑島裕太と桑田映子は、どちらも、辛口コメンテーターで、国葬儀の反対派の暴挙やマスコミの対応に警鐘を鳴らしている、まっとうな人達だよ。」と、横から赤木が言った。

「まっとうな人が狙われる世界か。ありがとう。助かったよ。煎餅のことは副部長と相談するよ。」二人は笑いながら、テレビ電話を切った。

伝子はすぐに、EITO用のPCを起動させ、理事官に報告した。「すぐに行方を追う。」画面が消えた後、伝子はイエ電で利根川に電話した。「顔の広い利根川さんを見込んでお願いがあります。」「何です?」「簑島裕太と桑田映子の事務所と連絡を取りたいんです。彼らがテロリストに狙われています。」「そりゃあ大変だ。すぐに調べましょう。」

10分後。綾子が食事をテーブルに並べていると、利根川から伝子のスマホに電話があった。伝子はメモを取った。高遠は、そのメモの電話番号を愛宕に電話し、伝えた。

偽電話だと後で問題になるからだった。

午後7時。3人が夕食のカレーライスを食べていると、EITOのPCが起動した。愛宕からの連絡に、EITOからの出動要請だった。

「食事中に済まない。出動だ。蓑島裕太の方は、今大阪のラジオ局で収録だ。港区のオーケイラジオだ。一方、桑田映子は、芝浦埠頭の近くで、新しいクルーザーの出発祝いパーティーに出席しているらしい。クルーザーの持ち主は女優の小栗杏だ。オスプレイが向かった。」「了解しました。」

PCの画面が消えると、伝子はスプーンを置き、着替えに寝室に戻った。

高遠は、台所の出入り口を開け、バルコニーをセットした。伝子は綾子に言った。

「学は私ノだから、手を出すな、クソババア。」高遠は綾子から渡された火打ち石を打った。すぐに縄梯子が降りてきて、伝子は空に消えた。高遠は出入り口を閉めた。

「うーん、意地悪、誘惑しようと思ったのに。」「だから、お義母さん、笑えませんって。」綾子は高遠を無視して、伝子の分のカレーライスも食べた。

EITOベースゼロ。伝子が到着すると、伝子のスマホがバイブで鳴った。ひかるだった。

「大文字さん、あのリストだけど。シリアルナンバーが3から始まっているよね。あの紙片。手帳の一部みたいだけど、1枚目があるよね。もし、そうなら、二人分の名前が書かれていたと思うけど、アナグラムじゃなくて、そのままの名前だと思うんだ。」「根拠は?」

「ハーフの人なら別だけど、普通日本人の名前で『ら行』で始まる場合って少ないと思うんだ。だから、有田さんは、そのままの名前じゃないかな、と。それと、国葬儀反対の人を非難していた人で狙われるなら、こっちは根拠ないけど、有名人に一人いるよ。」

「誰だい?」「瀬名政則。昔、スイングとかいうバンドやっていた俳優さん。」「分かった。ありがとう。」

理事官が「4人目の候補か、大文字君。」と言った。

「今、調べました。瀬名は、個人事務所の所属で、事務所発表の今日のスケジュールは書いていませんね。自宅かも知れません。住所は港区です。」と、草薙が言った。

午後8時。瀬名の自宅。青山警部補と愛宕が訪問した。

「警察の方ですか?やましいことはやってませんよ。刑事の役もやったことがあるから、やましいことは出来ないんですよ。」

「存じ上げております。実は、瀬名さんが狙われているという情報が入りまして。」「狙われている?」「ネットで、国葬儀反対の人達を批判されているとか。」「ああ。SNSで絡んでくる輩は大勢いますよ。でも、私を狙う?行き過ぎでしょうね。」

「実は、今日のお昼に有田薫子さんが交通事故に遭われました。」「ああ。ニュースで聞きましたよ。」「公にはしていませんが、有田さんの追突事故は、殺し屋に狙われた形跡があります。有田さんも、国葬儀の反対派を批判していた有名人で、世間に影響力があります。それで、瀬名さんを警護させて頂きたいのです。テロリストの魔の手から。」

瀬名と愛宕のやりとりを聞いていた青山警部補は、「取り敢えず、お宅の周辺で張り込ませて下さい。」とウインクして、瀬名にバッジを渡した。DDバッジの簡易版である。

瀬名は大きく頷いて「そういうことでしたら、よろしくお願いします。」と言って、玄関ドアを閉めた。

二人が去ると、拳銃を持った男が背後から言った。「警察に知り合いがいるのか?」「いないね。刑事の役はやったことがあるが、それで警察と親しくなる訳じゃ無い。何が目的だ?金か?あんまり財産ないんだよな。」「命だよ。あんたは邪魔なんだ。消えて貰う。」

男が拳銃の引き金を引こうとした時、ブーメランが飛んできた。男の拳銃は下に落ちた。継いで、男の両膝にシューターが突き刺さった。

ワンダーウーマン姿の女、金森とあかりが二人出てきた。「なんだ、おまえらは。」「正義の味方、いや、警察の味方かな。」

金森が玄関ドアを開けると、青山警部補と愛宕が出てきた。愛宕が「確保!殺人未遂で逮捕する。」瀬名は青山警部補にバッジを返した。「勉強になりました。」と、瀬名は言った。

同じく午後8時。芝浦ふ頭近くの特設会場。舞台では、桑田映子と小栗杏がハグをしている。桑田が、お祝いのスピーチを始めた時、ダイナマイトを腹に巻いた男がライターを持って登壇した。

会場からは悲鳴が上がった。「誰?」「正義の為の使者だ。」「正義の味方ってこと?どう見てもテロリストじゃないの。」「正義の為に皆で死のう。」

桑田と犯人の会話を遮って、「みんな、嫌だって言っているぞ。」という声がした。

現れたのは、ワンダーウーマン姿のなぎさだった。ブーメランが飛んできた。ブーメランは男のライターを弾き飛ばし、なぎさが受け止めた。

ブーメランを投げたあつこもワンダーウーマン姿で登場した。違う方向からシューターが飛んできて、男の両腕両脚に刺さり、男は仁王立ちになった。

ワンダーウーマン姿の早乙女が男を背後から羽交い締めにした。あつこは、すぐに男の体を点検し、「起爆装置はない」と言って、ダイナマイトを切り離した。

結城警部が登壇し、「緊急逮捕!」と言って、男に手錠をかけ、みちると連行して行った。なぎさ、あつこ、早乙女はサッと散って行った。

そこに利根川が現れた。「どうも。押しかけ臨時MCの利根川です。EITOと警察の活躍で、テロリストは今、連行されました。もう安心です。さあ、パーティーを続けましょう。桑田さん、お久しぶりです。」

散っていた観客は、元の位置に戻った。

同じく午後8時。オーケイラジオ。簑島裕太がDJをしようとしていたら、いきなり男が乱入し、簑島に拳銃を突きつけた。簑島は手を挙げたが、男も手を挙げた。男の首にスタンガンを突きつけたのは増田だった。「残念だったな。」

みちるが入って来ると、男に平手打ちをし、「確保!」と叫んで手錠をかけた。

「警官が暴力を振るっていいのか?」と男が言うと、平手打ちの効果音が流れた。2度、3度と。

「ラジオだと思って、適当なことは言ってはいけないわ。ファンの皆様の心情に合わせて『効果音』を流して貰っただけなんだから。」そう言って、みちるはディレクターにウインクをした。

午後9時。堀田病院。有田薫子の病室。消灯になった。

暫くして、男が侵入し、有田にナイフを突き刺した。ベッドは蛻の殻だった。男はシーツを被せられた。大町はシーツ越しにスタンガンを撃ち、田坂が電磁警棒をあてがった。

男は身悶えして倒れた。

「ご苦労様。大文字さんによろしくね。」高速エリア署の藤村警部が手錠をかけ、連行して言った。

陰で見守っていた、車椅子の有田が出てきて、深くお辞儀をした。「どうか、ご内聞に。」という大町に、「勿論ですわ。」と、有田は応えた。

午後9時半。埠頭の岸壁。

「幾ら待っても、仲間から成功の連絡は来ないぞ、ディック・ワシントン。何故、『死の商人』になった?」

「お前が大文字伝子か。黒井の同級生だそうだな。奴は泣いて頼んだよ。同級生だから見逃してくれ、と。組織の命令だから、仕方がないだろう。俺は、あんたには恨みはないよ。恨んでいるのは・・・。」「恨んでいるのは、アメリカのドクター・アソシエーションか。あんたの親父さんは名医だった。でも、手術に禁止薬物を使った。だから、ドクターの資格を奪われた。それで、あんたは那珂国に亡命した。アメリカ憎し、で日本壊滅作戦の一翼を受け持った。」

「黙れ!!やっちまえ!!」どこからか、パラパラと那珂国の者らしいごろつきが現れた。

馬越、右門がワンダーウーマン姿で現れ、三節痕で対峙している伝子に加勢した。いつの間にか、ワンダーウーマン軍団は勢揃いし、伝子と闘った。

100人いた、ディックの配下は全て倒された。ディックは、ただ見ているだけだった。

配下と一緒に連行されるディックに伝子は「段ボール作戦って、いつやるんだ?」と呼びかけた。ディックは無言だった。

久保田管理官がやって来た。「実在する作戦だったみたいですね。」と伝子は管理官に言った。「ああ。無言だったからな。反対派攻撃で狙われていたのは4人だけかな?」

「3枚目のメモ、ですか?考えたくないな。」「帰ろう。高遠君が待っている。」「はい。」

午後10時半。カレーライスはもうないだろうな、と未練がましいことを考える伝子だった。

―完―


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