第7話
「う……」
起きた。ここはどこだ。俺はどうなったんだ。
「起きたか」
部屋だ。小さい個室で、大きな鏡の壁がある。取調室のようだ。
「俺は……」
「ジーク・フリードリヒ!」
そうだ、俺はジーク。龍が襲ってきて、イオについていって、それで……イオは……。
「うっ!」
「うわぁ! コイツ! きたねぇ!」
吐いてしまった。嫌でも思い出す。ぐちゃぐちゃに殺される仲間と、イオ・ウルフラム……彼の血を、俺は……舌が味を覚えていて、思い出すだけで吐きそうに、いや吐いていたな。ただ胃液とわずかな吐しゃ物しか出てこない。その口に残る不快な苦さが、龍に拘束された時にも吐いた記憶を蘇らせる。
「そうだ、俺は!」
「ジーク・フリードリヒ!」
警備というよりは、尋問官だろうか。苛立った様子で俺の名を呼んでいる。
「返事ィ!!」
「は、はい」
今気が付いたが、俺の両手両足は拘束されていた。
「貴様には龍のスパイ容疑がかかっている! 質問に答えてもらう!!」
「スパイ!?」
心当たりが全くない俺は、恐らくわざとらしいくらいに自然に驚いた。
「これを見ろ!」
荒ぶる尋問官がタブレット端末を用意した。画面には街の地図が表示されており、いくつかの赤い点でマークされていた。
「これが何かわかるか?」
「えぇと、龍の空襲があった場所ですか?」
「そうだ。どこも隊舎や武器保管庫を的確に爆撃している。そのおかげで貴重な兵力を失い、内地へ侵攻した龍に対する初動が大幅に遅れた」
それを俺に言われても困る。言ってしまえば俺だって被害者だ。だが彼の言いたいことはわかる。誰かが情報を流しているからこそ、進行してすぐに要所を的確に攻撃できたのだ。おかげで、俺達の負担が増えて、こんなことになったわけだが。
「更に、防壁だ。あの魔龍“クォーツ”が現れた時、ちょうど隊員の交代時間だった。わずかに生じた対応の遅れが、今回の惨劇を招いたわけだ」
更に防壁のシフトまで筒抜けであったと。確かにそこまでやるなら情報を横流しするスパイがいなければ話が成り立たないだろう。
「お言葉ですが、自分は防壁のシフトは知りません」
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