第3話

 イオが背負った装置を操作する。装置から光の帯のようなものが飛び出し、四肢や胴体にハーネスのように巻き付く。淡い黄色に発行するそれは、黒の隊服も相まって色を反転させた毒蜂を彷彿とさせた。


 そして背面から光のようなエネルギーで形成された翼が一対、生成される。その翼によって浮力と推進力を得たイオ達は、上空へと飛び上がった。


 全員が背中合わせになるように飛び、常に周辺警戒をする。


「いたぞっ! 二時方向!」


 イオが指し、小隊が瞬時に編隊を組む。二名程遅れて編隊を組むが、小隊の最少人数は十名であるため、即席の部隊では致し方ないことだと、イオは気にしていなかった。


 イオが指す先には、強靭な四肢、巨大な体躯。大きな翼を持つ龍がいた。外殻は甲殻と鱗に覆われている。


 体躯に対して翼だけで浮遊は困難なはずだが、龍は反重力装置のような浮遊器官を体内に有している。


「一気に詰める!」


 一斉に加速し、板から切り出したようなライフルを構える。身の丈程ある近未来デザインなブルバップライフルで、一メートル程の銃身を備えている。


 二門あるように見える銃口だが、下部からは不可視のレーザーが照射されており、特殊なコンタクトレンズを通して銃の照準が容易に可視化される。そしてイオのライフルだけは全員にその“銃線”が見えるようになっている。


「狙うぞっ!」


 有効射程百メートル以内に接近したイオはライフルを構える。全員がそれに続いて自身の銃線を龍の頭部に合わせた。


「撃てっ!」


 そして、彼らのライフルからも龍が放つようにブレスの光線が放たれる。細身のブレス光線は単体で龍の外殻を突き破るのに、三秒以上の定点照射が必要だが、それを人数で補うことでほぼ一瞬のうちに焼き貫くことができるのだ。


「ギャウ!?」


 目論見通り、龍の頭部を一撃で貫通し、亡骸となった龍は力なく地上へ落下した。


 イオは地上への被害も考えたが、即席の小隊では余裕が無いと判断し、そのまま続行する覚悟を決めた。


「よしっ!」


 小隊の雰囲気は悪くない、いやむしろ良い。問題無く作戦を遂行できる状態だった。逸る者も、臆病風に吹かれる者もいない。程よい集中と緊張がそこにはあった。

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