第2話
「イオ!? あぁ、主席の!」
無線の向こうから聞こえたのは忙しそうな若い女性の声だった。更に無線は“取り込み中”らしい戦闘の音も拾っていた。
「そのあだ名はちょっと……。どの隊ですか?」
「私はスレイ。グラディア隊の隊長よ」
「あの……グラディア隊長ですか」
グラディア隊といえば最前線部隊として有名なのである。イオは本部の下手な人員に当たるより遥かに都合がいいと考えた。
「隊舎が空襲に遭い、被害規模は不明です。現状、動けるのは十二名程で、最低限の小隊は組めます」
「飲み込みが早くて助かるわね……。察しの通り防壁が突破されたわ。魔龍による攻撃ね。内地にいくらかの龍を引き連れて入ったんだけど、防壁に別動隊の大群が現れて私達は身動きが取れない。内地の部隊には追って通達が行くけど、トレースしている龍の討伐をお願いするわ。隊舎や保管庫が狙われて、今すぐ動ける部隊が少ないみたいね。負担をかけることになる」
「それが俺達の仕事です」
「頼もしい返事ね。頼んだわよ」
「了解です」
イオは無線を切って、装備の最終確認を行った。
「よし、話は聞いての通りだ。即応できるのが俺達しかいない以上、内地の龍は俺達で対処するしかない」
生き残った十一人の表情は険しい。だが、異を唱える者は誰も居なかった。彼らがイオという男を知っているからである。彼の部隊に入ることが、第一目標になっている新人も多い。それだけ小隊長としても有能なのだ。だから、即席の小隊であっても十分な戦果を期待していた。そうすれば、自分達は高い評価を受けることになるからだ。
「今日生き残って、明日英雄になろう」
彼が力強くそう言うと、全員が応、と返す。
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