散歩 ⑤
「いやーいい運動になりましたねー」
「まだ僕たち一周しかしていないけどね」
予定では午前中から歩き始めて昼前には解散とするつもりであったが、なんやかんやあり気づけば既に正午過ぎ。二人とも空腹が顕著に表れ始めていた。
「まだ、ってどういうことですか。私もうお腹空いたんで帰りますよ」
助手君はじっとりとした目で訴える。もうそろそろお腹の虫も起き出しそうなので内心うっすらと恐怖を抱えている。乙女云々以前に人前で腹をならすのは人としてちょっと恥ずかしい。
「うん。僕も帰るよ。これ以上疲れたら、明日は筋肉痛で歩けなくなってしまうだろうし」
「……先輩、弱すぎません?」
助手君としてはそんなことを言われてしまえば意地悪のもう一週追加を提案したいが、やはり空腹には逆らいたくない。そこんところはさすが三大欲求の一つだなと助手君は素直な感心を見せる。
「ははは……。……あ、そうだ。助手君、よければウチで昼食食べていくかい? 確か焼きそば用の麺が一玉余っているんだ」
「露骨に話題逸らしましたね。でもそれいいですね。家よりも先輩の家の方が近いですし、先輩の料理の腕もちょっと気になりますし」
「麺もソースも市販品だから、僕の腕はほとんど関係ないけどね」
二人は池の横にある駐輪場を横切り先輩の家へ向かう。そこで先輩はふと一つ気づいたことを助手君に尋ねた。
「そういえば、さっきの話の続きだけど。助手君だったらどんな異能力がいいんだい?」
「また古い話題を持ってきましたね。そういえばそんな話題あったなーって忘れてましたよ」
「僕はさっき名前まで考えたわけだからね。助手君のも訊いてみたくなったんだ」
先輩は悪戯っぽく笑って言う。どうしてそんな話題を引っ張ってきたのかは助手君にはわからないが、おそらく自分だけ答えたことが釈然としないのだろうと判断する。
「……うーん。……そうですねぇ、やっぱりぃ」
とはいえ、先にこの話題を出したのは助手君なのだ。当然ながら自分の分は考えてあった。
「『
「ただしオリジナルの劣化版しか使えない」
「なんで勝手に設定足すんですか!?」
助手ちゃんのちょっとしたズルに先輩はちょっとした罰を与え、二人は池の散歩道を後にする。
本日も実験室にけが人はなし。
実験室に怪我人は無し 星印 夢 @hosizirusi_yume
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