少女たちの秘密
第14話 新しい住人
「お前ら、新しい住人が加わるからよろしく」
「へえ、いつ来るんですか?」
ゴールデンウィーク最終日の朝。リビングで朝食を食べているところに暁先生が声をかけてきた。
「今日、これから」
「なんで直前に言うんですか!? 」
「言い忘れてたわ。ま、とにかくだ。今日は椎名と栞しか動けるやつ居ないから、対応頼んだ。部屋は203号室に入居だ」
希以外の他の住人では栞しかツムギ荘に残っていない。他の住人たちは今日の夕方頃まで実家に戻っている予定だった。と言ってもみなとが外出したところを希は見たわけではないのでなんとも言えないのがほんとのところ。
「ちょ、先生は?」
「俺はお仕事。こう見えて、結構忙しいんだからな」
そう言って暁先生は足早に出ていってしまう。
「名前、聞いてなんいやけどなぁ」
朝食を食べ終え食器を持ってキッチンへ移動する。
「おはよう、希」
「おはようございます、お嬢さま」
食器を洗っているところに栞がやって来る。
「のぞみ~、お茶入れて」
「少々お待ちを」
食器を洗い終えてから、お茶を入れて栞に出す。
「ありがとう」
お茶を飲み一息ついたところで希は栞に今日の予定を訊ねた。
「ところでお嬢さま、今日のご予定は?」
「ん~。イラストを描くわよ」
「ですよね。分かってました」
「どうかしたの?」
「いえ、何か今日、新しい住人が来るみたいで……」
「へぇ……そう。今日だったのね。縁が来るの」
「誰が来るか知ってたんですか?」
「うん。おじさまから聞いてたから」
なんで毎回直前に聞かされるんだろ。って、ゆかり?もしかして……
「誰が来るかも詳しく知ってた、ってことですか?」
「えっ? うん。
「ゆかりさんって言ったら、本姫ですか。でも確かに彼女は、一般寮に住んでるんじゃ」
「家賃滞納? ……寮だから寮費滞納ね。それで追い出されるみたいよ。だから寮費が比較的の安い、ツムギ荘に移るみたい」
本姫とは高須縁さんのあだ名。見かける度に違う本を読んでいる読書家で、その佇まいの美しさから陰で本姫と呼ばれている美少女。
それにしても寮費滞納とは、いったい何があったのだろうかと思う希であったが、すぐになんとなく思い当たる理由に行き着く。
「そうなんですね。っとお嬢さま、お食事はどうしますか?」
「朝食はいいわ。昼食で簡単に摘まめるものをお願い」
「じゃあサンドイッチですね。後で差し入れます」
「お願いね」
栞はお茶を飲み終えて自室へ戻っていく。
希はコップを片付けると自室に戻り本を読み時間を潰す。
ピンポーン
玄関のチャイムの音がなる。本を置き、玄関に出迎えに行く。
「今開けます」
玄関の扉を開けるとゴールドブラウンの髪色をした美少女が立っていた。
「今日からお世話になります……って、みーくんじゃない!」
「ツムギ荘へようこそ、ゆかりさん。部屋は二階の203号室だって。寮内を案内するよ」
「はーい! ありがとうね」
彼女が高須縁さん。本姫と呼ばれている彼女の周りからのイメージは、必要以上は馴れ合わない人、高嶺の花、読書家の姫様。見た目はそのイメージ通りだが実際のところは、心を許した友人にはフレンドリーで可憐な美少女。
希と縁は、同じ読書家と言う
「そう言えば、みーくんもこの寮に住んでいたんだよね」
「まぁな。それで、聞きたいんだが」
「なになに、何が聞きたいの?」
「寮費滞納して一般寮追い出されたって聞いたけど、本当?」
「あ~うん。やっちった。本買いすぎて寮費払えない、ってのが一度二度あって、三度目でアウト。ついに追い出されたてわけ」
「んなことだろうと思った……。寮費まで手を出すなよ、まったく」
「今後は無いように気を付けるよ。それにみーくんが居るなら、読むのには事欠かないでしょ」
希と縁はお互いに買う本のジャンルが違うので、読むものが無い時はお互いに貸し借りしている間柄にある。
「まぁ、お互いに読むものに事欠かんな」
だいたいの案内を終え最後に203号室に行く。
「さて、引っ越しの手伝いはいる?」
「んー、大丈夫かな」
「ん。じゃあ昼御飯は?」
「そっちも大丈夫だよ」
「K。他の細かなルールとかは、夜の歓迎会の時に話すから」
「りょーかい!」
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