⑥'蘇生 補足(2022年執筆)

 デスゲームものには、人を惹きつけてやまない魅力がある。私も、このジャンルの作品は大好きであり、『バトルロワイヤル』を筆頭に様々な作品に影響を受けてきた。『蘇生』は、どう見ても、1997年の映画『CUBE』にインスパイアされて書き始めた作品である。

 飛行機事故で死ぬはずだった108人の人間が、立方体の部屋が連続している空間に集められ、「敗者復活」的な蘇生のチャンスを求めて試行錯誤する、というワンアイデアが全てである。部屋の扉が忍者屋敷の回転扉のようになっており、180度回転させると二度と開かなくなるというギミックと、参加者全員に拳銃が配られていて容易に加害者になれる環境、参加者が記憶喪失の上、人間と少し異なる外見にさせられているという設定だけで、特段の落としどころを決めずに話を書き始めた。ドライブ感とアドリブ力だけで書けたのが、17000文字だけだった、という顛末である。

 主人公は四本腕の少年であり、当時の私は、「人間の腕が四本だったら、などという突飛な設定を思いつくのは自分くらいだろう」と本気で考えていたのだが、カイリキーというポケモンを知らなかったことを恥じるほかない。今読むと、カイリキーの一人称小説みたいでシュールである。17歳の少年が「私」という一人称で、妖精の少女が「ボク」という一人称である点は、私自身の作風から、少し意外性があって、不思議な感じがした。もしかすると、生前の姿として、前者が大人で、後者が男性であるといったような「意外な正体」を考えていたのかもしれない。

 頭の中に直接話しかけてくる『声』の居場所を探し出すことがゲームの目的となっているが、肝心の居場所として、しっくりくるようなオチを思いつくことが出来なかった記憶がある。物理的に、どこかの部屋というのが答えであれば、作中でも指摘があるように、スタート時点でゴールに近い人と遠い人が現れるのでゲームとして破綻している。謎のゲームの目的と関わりのある、もっと観念的なものにする必要があるだろう。他人事みたいな意見で言えば、その「居場所」というのが作中で明らかになった時に、これまでちりばめられた謎の全てが一つに繋がり、伏線の意味がわかるような、そういうカタルシスを感じさせる設定を思いつくことができれば、本作は非常に面白いものになったはずである。そんなアイデアをすぐに思いつくような人間だけが、作家をやっているのだと思う。私には到底できそうにない。

 主人公とヒロイン以外に、どれくらい名前のある登場人物を出すべきなのか、そのあたりにも迷いがあったことが伺える。デスゲームものといえば、名前があって愛着の湧いてきたキャラクターさえどんどん死んでいく、そういう容赦のない展開も魅力の一つであるが、本作では、登場キャラクター数が増えないまま、だいぶ文章量が嵩んでいる。出来る限り、主人公とヒロインの二人だけで話を進めるつもりだったのかもしれない。デスゲームと、こういう「キミとボク」系の枠組みは上手くかみ合いそうにないが、いずれか片方しか助からない、みたいな(できれば必然性のある)悲劇的な結末が用意されていれば、「あり」なのかもしれない。ただでさえ悲惨な設定なので、少しは救いのあるラストであってほしい、と、この世に存在しえない物語の結末に対して、そのように希望している。

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