⑤'無限を呼ぶ無限 補足(2022年執筆)

 この作品については、よく憶えている。高校時代に友人たちと、「人が死んだ時、その背中が割れて着ぐるみみたいに中から別の人が出てきたら面白いのではないか」というコンセプトだけを決めてリレー小説を書くことにした。そこで完成した『新シリーズ:無限』という作品があり、複数人で書いたこともあり、まとまりがなく、強引に畳まれている無理のある代物なのだが、その作品をかろうじて説明可能にするための設定を「ゲーム」という形に落とし込もうとしたのが、本作である。

 何しろそういう背景で書き始めたものだから、取扱い説明書の部分を書き上げたら力尽きた。それらしいストーリー設定や「エンディングが複数存在する」ようなことが記載されているが、具体的に複数の物語の構想があったわけではないと思う。登場人物の名前は、『新シリーズ:無限』から借りている。

 『新シリーズ:無限』は、私以外の人間も執筆に関わっているので、今迫直弥名義でカクヨムに投稿することはできないので、その無茶苦茶さを公開できないのは残念だ。私が書いた第一章は、「ドッペルゲンガーを見たら死ぬ」という言い伝えを現実にするために、「自分と同じ顔の人を見た」と主張する人間を殺す役割を担っている殺し屋が、ターゲットを誤り、人間ではなく化け物であるドッペルゲンガーの方と対峙してしまい、返り討ちにされるというあらすじである。ドッペルゲンガーを見ると死ぬという言い伝えに対し、「そういう役割を担っている殺し屋がいる」という逆説的なアイデアを返し、その妙なターゲット選びが自らの死につながってしまうという皮肉な結末を描いた。ショートショートとしてはありそうな話で、上手くまとまっているのではないかと思う。ただ、良くなかったこととして、リレー小説の次の人間は、「死んだ人の中から別の人が出てくる」という続きを書かなければならず、中から別人が出てきて驚く役どころを担うのはその場に残された登場人物ということになり、必然的に、殺し屋を返り討ちにした「ドッペルゲンガー」という化け物が居座ることになってしまい、「人間」と「ドッペルゲンガー」の対立を描くような作品になることを運命づけてしまった。そんな厄介な話が、複数人で書いてうまくまとまるわけがない。


 先日、実家で本作品の世界観に関する手書きのプロットが発掘されたので、それを自力で文字起こししたものを転載(パワーポイントでなければ再現できなさそうな『図解』も書いてあったのだが、こちらは割愛)して、解説を終えたい。どうやら「1.始まり」の展開についての説明らしいのだが、読んでも全く意味が分からない上に、『新シリーズ:無限』や『無限を呼ぶ無限』と一致する場面がないので、そもそも別のシナリオらしい。本人の中でだけ何らかの整合性がとれて納得しているような点からは、ただただ狂気を感じずにいられない。



1.始まり

『連鎖』の最初は『ドッペルゲンガー始祖』バルバロッサ

☆ドッペルゲンガーとは→もう一人の自分

 ここでは、様々な能力を持った超人的な存在

 バルバロッサは、実兄であるゲーラの求愛に心を惑わされ禁断に踏み込まぬように自らの意志で『もう一人の自分』を作り出し、そこに逃げ込んだ。それがドッペルゲンガーの走り。

 また、そのゲーラ(『禁断』)の延長として『元凶』が現れる

 ここでの対立は、

『ドッペルゲンガー始祖』バルバロッサ vs. 『禁断』ゲーラ

 ↓

 実は、後に連なるのは『切断オリジナル』だが……?

――『ひきがね』木村がバルバロッサを殺す

  このとき、木村のドッペルゲンガー『魔物』クレメンシー(慈悲の男)が誕生する

☆ドッペルゲンガーを殺したものは、そのたびにドッペルゲンガーが増える

――『傍観者』レイヨルドゥ公そのが木村を部屋世界から外に連れ出す

  このこうどうにより、レイヨルドゥ公は『傍観者』から『黒幕』へ

――バルバロッサの遺体から、ドッペルゲンガー『狩人』ハントが出てくる

――ハントがゲーラを殺す

――ゲーラの中から『元凶』バルバロッサ(ドッペルゲンガーを作り出す前の人間)が出てくる

◎後に、このバルバロッサは『ドッペルゲンガー始祖』と同一視されてしまう

――『元凶』バルバロッサがハントを殺す

――ハントの中から『調停者』一郎があらわれる

――『黒幕』レイヨルドゥ公園が、『魔物』クレメンシーを部屋世界に送り込む

――バルバロッサからドッペルゲンガー『裁き』エーリッヒが出てくる

――クレメンシーが『裁き』エーリッヒを殺す

  このとき、クレメンシーのドッペルゲンガー(人間)『善』ブラッドサースティー(殺気の男)が誕生

☆ドッペルゲンガーにとってのドッペルゲンガーは人間である

――エーリッヒの中からドッペルゲンガー『倍する闇』サイダー(新キャラ)が出てくる

――サイダーが一郎を殺す。一郎の中から人が出てくる前にクレメンシーを殺す

――クレメンシーが本当に死ぬ直前、『黒幕』レイヨルドゥ公園が外に引きずり出す

――一郎の中から『ドッペルゲンガー始祖』バルバロッサが復活する

――バルバロッサがサイダーを殺す

  このとき、バルバロッサのドッペルゲンガー(人間)『切断オリジナル』ルトが誕生

――サイダーの中から待機状態だったドッペルゲンガー『悪夢』シャルロッテが出てくる

――『ドッペルゲンガー始祖』バルバロッサ vs. 『悪夢』シャルロッテ


◎同じ顔

 『ドッペルゲンガー始祖』バルバロッサ=『元凶』バルバロッサ=『切断オリジナル』ルト=『悪夢』シャルロッテ

 『ひきがね』木村=『魔物』クレメンシー=『善』ブラッドサースティー


◎レイヨルドゥ公の位置づけ(1.始まり のみ)

・唯一、部屋世界の外にいながら中に鑑賞できる

・もともとは、この部屋世界を、我々に伝えるための語り部

・連鎖を起こした張本人


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