現在 恭一  能力と向き合っているころ

Scene39

 恭一は早速、風船オバケを一直線上で挟み込めるように、光の進路を創り出した。風船オバケの移動や攻撃に合わせて、細かく微調整する。

 何度目かのトライのあと、絶好のタイミングが訪れた。風船オバケの攻撃は、恭一が生み出したおとりに集中している。

 その隙に、風船オバケの両方のちょうど真横にポジショニングできた。今だ!

 葵と南波は、同時に飛び出した。恭一が通信装置付きヘッドセットをつくってくれたので、タイミングもピッタリだ。

『いけぇーーーーー!』

 三人の声がシンクロする。二人が、風船オバケに突っ込んだ。風船オバケがみるみる変形していく。

『いけるか?』

 遠くから見ている恭一の、期待の声が聞こえる。

 しかし…… 


バイーーーーーン!

 

 風船オバケの形が勢いよく元に戻り、葵と南波がはるか彼方にふっ飛ばされた。


「キャーーーーーーー!」

 特に、葵の方から、悲鳴がよく聞こえる。恭一が急いで二人を回収に行った。

「あー、まだ心臓バクバクいってる」

 三人は集まって雲の中に隠れ、作戦会議を始めた。

「ねえ、あれそこらへんの絶叫マシンよりよっぽど怖かったよ? そもそも私絶叫マシン苦手なのに……」

 葵のテンションがどんどん高くなっていく。

「いや、俺だって見てて度肝抜かれたよ。とんでもないスピードだったから追いつくのがすごい大変だったんだからな」

「いや、その節はどうも」

「あ、いえいえお気になさらず」

「そういうのあとでやってくれないかな?」

 南波が珍しくも、葵と恭一の即興コントを制す。そのときだった。


ゴロゴロドンガラガッシャンシャーン ブオブオーーーーーン


 とてつもない轟音が、辺りに響き渡る。急いで雲の中から出ると、風船オバケが落雷と竜巻を地上に無差別に降り注いでいた。

「うわ! ありゃやべえ!」

「刺激しすぎたね。完全に怒らせたみたいだ」

「あれじゃ絶対ほっとくわけにはいかないじゃない!」

 葵が頭を抱えて叫んだ。

「どうすんの? 私達まだ何の対策もたてられてないけど?」

 南波は唇を噛んだ。思っていたより、手強すぎる。

「どうする、恭一?」

 葵は、そんな南波の顔色を見て、恭一に尋ねた。恭一は、とりあえず口を開いた。口に出しながら、考えがまとまることも多い。

「南波が立てた方向性はあってたはずだ。直接攻撃が、あいつには一番効く。だが、さっきはそれじゃ無理だった。あいつの弾性力を舐めていた。威力が足りなかったんだ」

 恭一はぶつぶつとそんなことを呟く。そして、その呟きが止んだかと思ったら、顔を上げた。

「もう一回やるぞ」

 恭一は高らかにそう宣言した。

「ええ! でもさっき無理だったじゃん」

「説明は後だ。迷っている暇はない」

 葵は、今度は南波を見た。

「うん。恭一がそう言うってことは。何か勝算があるんだろう。信じるよ」

「さ、動け動け! 時間がないぞ」

 恭一が手をパンパンと叩く。葵と南波は、急いで飛び立った。


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