Scene38
そこから、二人で何度か試したが、なかなかうまくいかなかった。やはりお互い、真向かいにポジショニングすることが難しい。毎回ずれてしまって、双方向からの攻撃でも、受け流されてしまう。
おまけに自分の危機を感じ取ったからか、風船オバケは葵と南波を脅威と認識したようだ。ピンポイントで執拗に攻撃するようになってきていた。
「どうしようかなあ」
南波がまいったなという顔をする。
「ねえ。もうあれほっとこうよ~ 私もう帰りたいんだけど」
葵は明らかに飽きてきていた。
「ごめんね~ もうちょっと付き合ってよ。あれ呼び出しちゃったの僕のせいっぽいから」
「え~、しょうがないなあ」
葵はなぜかクネクネと嬉しそうだ。今は何とか誤魔化せたが、短期決戦に持ち込むしかない。南波はそう思った。
「ねえ、もうちょっと二人が位置合わせられるような便利グッズ生み出してよ」
葵が南波にそう言った。葵なりにも、方策を考えているようだ。
「うーん。そうだねえ」
南波は顔をしかめた。正直言って、このアーマーのコントロールだけで限界だった。
「よし、じゃあここは俺がやるしかないな」
後ろから声がした。
「あ、恭一!」
南波も振り返った。そこにはいつもより小ぶりな龍に乗った恭一がいた。
「やあ。思っていたよりも復活が早かったね」
「あんなのでやられる俺じゃないわ」
「そうだったね」
南波と恭一が軽口を交わす。
「恭一もアーマーつけて戦おうよ! オソロオソロ」
「できるか、そんなこと!」
恭一が葵に噛みつく。
「えー」
「自分にできることとできないことを客観的に認識することは重要だよ」
そんな掛け合いをしていた二人を見ていた南波が冷静に言う。
「全く同感だが、お前に言われるのは非常に腹が立つな」
「これってそんな難しいの?」
葵の言葉を、恭一は無視した。難しすぎて自分には出来ませんとは、明言したくないのだろう。
「とにかく、さっきから見ていて何がしたいのかは大体わかった。俺がサポートに回る」
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