Scene11
結局、社長は全てを把握していたので、恭一と葵は本社を出た。南波に関しては、とりあえず静観するそうだ。社長としても、かつての仲間であった南波がそんなに悪いことをするとは思いたくないのだろう。
「じゃあ、俺はこれで」
恭一は、じゃ、と手を上げ、帰ろうとする。
「え、これでお別れ?」
濃い体験をしてきたので、こんな簡単に今日が終わるのが不思議な感じだった。
「今日の八時からの世界まるっとクイズの二時間スペシャルにもえたんが出るから帰らないと」
そうだったー、この人ドルオタだったー。葵は天を仰ぐ。
「だって、地上波に出るなんて快挙なんだよ? 勇姿を見届けなくちゃ。本人も実況生配信やるって言ってるし、早く帰らないと」
そう言って、恭一はいそいそと葵を置いて帰っていった。確かに、私の家はすぐそこだけど……
まあ、いっか。恭一の組織の本拠地は分かったし。目的は達したかな。葵はそう思いなおし、家の方に向かって踵を返した。私も彼が好きなアイドルがどんな人か見てみようかな。
そう思った次の瞬間、葵の全身が水色の光に包まれた。
「え、え、何これ?」
葵はそのままフワフワと宙に浮かび上がり、空高く飛んでいった。
「何これーー!」
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