ⅵ.神様が遺したもの
一見すれば狼に似たシルエット。しかし、
ガルルッと喉から
エメロディオがフィーの背に突進し、前脚と頭を押し当ててぐいぐいと少女を押した。リレイは天狼の姿になって、頭上から降ってきた獣と少女の間に割り込む。
その巨体からは信じられないほどの身軽さで着地と同時に地を蹴った魔獣が、邪魔な狼を排除せんと飛び掛かってきた。実を言えば天狼の近接戦闘能力は皆無なのだが、生身ではないこの体は『水魔力』以外に弱点を持たないので怖くはない、はず。
「風魔の盾!」
短い詠唱で防護魔法を展開した瞬間、風魔力の
全身を覆う被毛は針のような硬毛。色は流氷を思わせるアイスブルー。
「氷獄の番犬……?」
かつて神様が人に与えた契約魔獣の一種であり、空を飛べる巨大獣『星鯨』に次いで戦闘能力が高かったはずだ。大崩壊で主人を失ったのか、檻が壊れて飼育者から逃げたのか、いずれにしても。
生前の記憶が正しければ、この魔獣は人を食べたりしない。今のリレイと同じく肉体を構成しているのは魔力であり、契約者が生きている限り水も食事も必要ないのだ。
と同時に残念な事実も思い出して、リレイは不本意ながら前身を低くして
ガルルッ、と声をあげ太い前足で石畳を打ち据えた魔獣から、燐光がほとばしり、氷の槍を形成して
風をまとわせ直撃は防いだものの、不利を悟った狼は歯噛みしつつ打開策を考える。
氷獄を冠する名の通り、この魔獣が得意とするのは氷の魔法だ。水の上位互換と位置づけられる『氷魔力』も同じく、リレイにとっては弱点なのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます