▽ 酔いどれのアサリ
目が覚めると、激しい頭痛と吐き気に襲われた。いつもの二日酔いかと思ったが、それだけではないようだ。両手は背中で、両足にも手錠がつけられ、口には猿轡をはめられていた。こういうプレイの経験がないわけではなかったが、好みではなかった。どれだけ酔っ払っていても、自ら望んでするはずはない。
どうして靴も履かずに車の中にいる?
浅利は力を振り絞って暴れてみた。事態は何も変わらない。
酸素を目一杯取り込み、意識を明瞭にしようと試みる。口元が、大量の唾液で汚れた。
なんとか身体を捩り、座席に座ると、寄りかかるように窓の外を眺めた。薄暗い。倉庫だろうか? 心霊スポットの廃墟のような場所で、車は停まっていた。もしかすると、本当に廃墟なのかもしれない。使われなくなったまま放置された倉庫がいくつもあることは知っていた。
ここがどこであるのかはわからなかったが、電気が通っていることは確かなようだ。まばらな電灯が灯っていた。
光の下にいるのが誰なのかはわかった。外岡と沖中。事務所に現れたヤクザだ。そして、もう二人。チビデブとガリノッポ。こいつらにも見覚えがある。そうだ、電撃を食らって……。
記憶が蘇ると、浅利は身体にありもしない痺れを感じた。殴り合いなら十分すぎるほど経験していたが、スタンガンは初めてだ。酒以外で意識を失うなど、考えもしなかった。
浅利はまだ重い頭と二重に見える瞳で男たちを睨んだ。
デブとガリは俺を土方組に売った。今頃、金額の交渉でもしているのだろう。やつらの取引がどんな結果に終わろうが、最後に俺は殺される。急に死に直面する恐怖が込み上げてきた浅利は、半ばパニックに陥り、無駄だとわかりつつも力任せに暴れた。
車体が揺れる。物音は小さかったが、男たちの視線を引くには十分だった。
まずい。
どうにか逃れようと、浅利はさらに力を振り絞る。ドアにもたれかかっていたせいで、車体はさらに揺れ、
自らが起こした車体の揺れに捕われ、浅利は座席の下に倒れ込んだ。痛めていた肩に激痛が走り、湿った口元に埃と砂が付着し、呼吸が苦しくなった。猿轡に歯を立て、マウスピースのように噛むと、仰向けに体勢を変えた。縛られたままの足の靴底でドアを蹴る。車体の揺れは、さらに大きくなった。
今にも男たちが車に乗り込んできて、無機質な暴力を振るわれると思ったが、そうはならなかった。
花火が上がった。
情緒も風情もないミサイルのようなファイアワークス。蟻を潰して遊ぶ子供のように無邪気で残酷な花火が、倉庫中に飛散した。辺りは急激に明るくなり、轟音がこだまする。
そうだとするなら、第三の勢力が花火を放ったということだ。
夏の夜に打ち上げられるサプライズの花火のような光景を前に、浅利は正常な思考回路を取り戻していった。
全身でむやみに暴れるのではない。力を分散させず、一点に集中する––––
止まらない銃火の中、浅利は冷静に抵抗した。
最初に、両足の手錠が千切れた。元々、玩具のような代物だ。鎖の強度はそれほどなかった。両足が自由になると、不自由さは一気に軽減した。何より、心理的な安心が大きかった。
浅利は座席に座り直すと、後ろ手にドアロックを開け、
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