第5話 冒険者としての人生

ーー 冒険者として独り立ちする。


オーク討伐から戻ったアレフは、冒険者ギルドでギルマスに呼ばれていた。

「アレフよお前が今回のオーク討伐で、一番活躍した事はギルド証で確認済みだが、俺はお前の実力が高すぎることが疑問なんだよ。」

と言われアレフは

「この剣が原因ですよ。俺が鍛えた刀があまりにも良く切れるので、活躍できただけであれ以上の魔物だったら歯が立ちませんよ。」

と言いながら刀を差し出して見せた。

「確かにいい剣だ。そうか疑問は残るがまあいいだろう。お前をランクFからランクDに格上げするからカウンターで処置してもらえ、報酬ももらっておけよ。」

と言われ、受付で新しく書き換えられた冒険者証と報酬金貨25枚と銀貨30枚をもらって帰った。


家に帰ってアレフは、両親に

「冒険者となって生きていける目処がついた、王都に出て独り立ちするよ。」

と言うと最近変わってきた息子を見た両親は

「ええ、アレフがオークの討伐で大活躍したことは聞いていたよ。貴方も男になったんだね。頑張りなよ、いつでも帰ってきていいからね。」

と言う母親と黙っているが頷く父親に挨拶すると、荷物をまとめて家を出たのだった。


その足でアレフは、宿泊所に泊まらせていたスノーを迎えに行き、二人で買い物をした後王都に向けて定期便の馬車に乗り込んだ。


王都までの日程は馬車でおよそ6日、ザンカ子爵領、コーザス伯爵領、セガール公爵領を経て王都セガールに至る。


馬車はとてもゆっくり進む、3日目に子爵領に入り、一泊する。

始めて違う街に来たアレフは、心持ち浮かれていた。

一緒に行動し始めた、スノーと名乗り出した少女は同じ年齢の割には博識だった。

「お前、いいとこの子供だったのか?」

「私は過去を振り返らない女よ。」

と言うと話をはぐらかした。


6日後に予定通り定期馬車は、王都セガールに到着した。



王都セガール。



アレフ達は、冒険者ギルドに向かうとスノーの身分証を作るために、冒険者登録をした。

その後宿の情報を聞いたのち依頼を眺めていたスノーが、

「アレフ、南の森の魔物を狩りに連れていって」

と言うので、宿を取った後に常時依頼のゴブリン討伐に向かうことにした。


「ここでいいな。」

と宿を10日分支払うと二人で歩いて南の森に向かった。

スノーの武器は、アレフが鍛えた小刀「小桜」だ。

「この刀という武器とても綺麗ね。私気に入ったわ。」

というスノーを見てると、武器の扱いにも慣れている感じがした。



南の森。



森に入り、直ぐに単独のゴブリンを見つけた。

スノーは走り寄るとゴブリンの首を一呼吸で切り裂いた。

声を上げることもできずにゴブリンは息絶える。

その後も3匹までのゴブリンであれば、スノーは問題なくゴブリンを狩ることができた。

証明部位の右耳を切り取りそれ用の袋に入れる。


昼を挟んで、約40匹のゴブリンを狩った。

ギルドに戻り依頼完了の報告と報酬をもらう。

スノーのランクがEに上がった。


宿に戻り、宿では珍しい風呂に入り夕食を食べに一階に降りる。

「ここの料理当たりだね。でも宿代を考えると今日の報酬じゃ足が出るわね。」

というスノーに、ここは一泊金貨1枚だ、オークの宝を持っているアレフは特に慌ててはいないが、家を買おうかとも考えだしていた。



スノー  side



私はある王国の貴族の娘、決められた結婚が嫌で家を飛び出した私は。

護衛の二人とセガール王国に密入国した森の中で、オークに襲われて・・二人の護衛は死んでしまい私は囚われてオークの集落に攫われた。

もうこれで最後なのかと思っていたところに、一人の少年が助けに来た。

私は運命を感じ、その少年と生きることを決めたのだ。そのために名を捨て過去を捨てたのだ。


でも彼は普通では無かった、冒険者としての腕はもとより、彼が鍛えた刀という武器の切れ味は、我が家にあった宝剣以上だった。

私も彼から「小桜(コザクラ)」という少し短めの刀を渡され使っているが、美しい波紋の刃はいつも濡れたように光っていた。



ーー 家を買おうか。


冒険者の依頼を受けながら、アレフらは家を探し始めた。

ギルドの紹介で商会に向かい物件を探す。


「お求めに会う条件からするとこの二つですね、内覧に向かいますか?」

との問いに頷き物件を見にいく。

一つ目は、とても大きな屋敷だった。

「ここは大きすぎて持て余すな。次を見せてくれ。」

アレフはそう言うと馬車に乗り込む。


次の物件は、商業街の南門近くにあった。

ここは地上2階地下一階で、部屋数は10で、大きなお風呂が備え付けてある。

広い食堂に充実した厨房、大きな商会の持ち物だったようだ。

「気に入ったここにしよう。」

と言うとその場で代金を支払うアレフ。

「屋敷の維持をするための者を手配したいが、どこに頼めばいいのかわかりますか?」

と商会の者に聞けば

「商業ギルドで斡旋しますよ。これから行くならそこまで乗せて行きますが。」

と言われた馬車に乗り込む。

「スノー必要な人手を考えてくれ。」

と言われたスノーは

「料理人2名、メイド2名、執事1名、御者兼庭師1名の6名ね。」

と直ぐに答えるスノーを見ながらアレフは、

「流石慣れてるな。」

と呟いた。

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