第2話 新しき人生

ーー 新しき人生。



目を覚ますと男は、アレフに成り代わっていた。

「これも面白いかもしれない。」

人生に何の面白味も感じなかった男が、この世界では興味を持つことがあるようだ。

「魔法。魔物。生きてるって感じられそうだ。」

と呟いた。


アレフと言う男は、小さな街の鍛冶屋の息子で自分で作った武器で魔物を倒したいと、考えては森に行き怪我をして帰るような子供だった。

今年で13歳になる。


カーリーはその幼馴染で、隣の薬師の娘だ。



次の朝。



目を覚ましたアレフは、勢いよく飛び起きた。

「目覚めがいいぜ。」

朝食を食べると、アレフは工房に行く。

慣れた手つきで釜に火を入れると、鉄鉱石を火に入れる。

この世界の鉄鉱石は、地球の鉄とは性質が違う。

元々強く粘りがある、それに日本の技術を取り入れるのだ。

何度も折りたたむように重ねていく、形を整えて日本刀のような片刃の反りを持つ、「刀」ができた。

「うまくいった。」

そう呟くとアレフは、つかと鞘を作り上げる。


「次は鍔か。」

鉄鉱石を鍛えて一枚の鍔を作り上げる、刀に嵌め込み研ぎを行う。

ある程度研ぐと付与魔法を与える。

「切れ味向上」「不壊」

アレフは、魔力を高めて刀に注ぎ込むようにして付与する、一瞬刀が光り馴染んでゆく。


「出来たようだ、今までできなかったが新しい力が良かったようだ。」

刀を腰に下げ、街を出るアレフ。


1人で森に入ると目を閉じて気配を探る。

「分かるぞ、森中の気配が。」

ニヤリと笑うアレフの姿は、魔王のように見えたかもしれない。



ーー 初魔物、初レベルアップ。



森に入り小さな気配の生き物を探す、ゴブリンだ。

1匹でいるようだ、俺に気づき棍棒を振り上げて向かってくる。

俺は刀を構える、元々居合と古武道を大学までしていた記憶が蘇る。

こいくちを切り、背の低いゴブリンをさらに低い位置から斬りあげる。

すれ違うゴブリンは突然命ごと斬り飛ばされたようだ。

ずれるように上半身と下半身が別々に倒れるように崩れ落ちる。


[経験値を獲得しました。レベルが上がります。]

と言うメッセージが頭に響いた。


身体に力が漲る、『これがレベルアップか。』

次の獲物を探す、次は3匹。

問題なく切り捨てると次のレベルアップを体感する。


そして次に5匹10匹と数を増やして、目の前にゴブリンの集落にようなものが見える。

およそ7・80匹ゴブリンがいるようだ、これで今日は最後にしよう。


走り出した俺は、柵を軽々と飛び越えて集落の中に。

手が触れる場所のゴブリンから次々に首を刎ねていく。

10匹、20匹と斬り伏せるにしたがい、ゴブリンも落ち着きを取り戻したか。

弓や剣で攻撃して来たものもいた、しかしそれも問題でなかった。

折れず曲がらず切れ味が変わらない刀は、次々に紙のようにゴブリンの首を斬り飛ばす。

どのくらい時間がかかったのか、全てのゴブリンが息絶えていた。返り血を浴びた俺はそのまま川に向かい身体中の返り血を洗い流す。

「ふー。流石に疲れた。何度レベルアップを聞いたかわからない。」

そう呟きながら街に向かって歩き出す。

夕陽がやけに綺麗に見えた。

「こんなに綺麗な夕日はいつぶりだろう。」


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