魔女研編⑦:活動計画!
「えー! 新しい人、増えたんですか!?」
木曜の放課後、
彼女の右隣には、前日に突然現れた槇村さんが腕を組んで座っている。ちなみに僕は槇村さんを挟んだ反対側に座っており、ふたりの表情をそっと伺っていた。
目を見開いて固まっている葉那に対して、槇村さんは腕を解いて申し訳なさそうに会釈する。
「あー、いきなりごめんね。あたしは二年の槇村。渡瀬のクラスに転校してきたんだけど……」
「それで、かのんちゃんのお友達なんですって。これも何かのご縁ってことで入ってもらったのよ」
と、突然割って入った会長さん。すると葉那はゲーム中の吉田さんと槇村さんを交互に見てから、手をぽんと叩いた。そして次の瞬間には、槇村さんの手を勢いよく掴み取り、上下にぶんぶんと振り回していた。
「あー! なるほど! 一年の
「事態を飲み込むの早いな!」
葉那のあっけらかんとした様子に、思わずノリツッコミみたいな真似をしてしまった……。
「えへへ。いいじゃん
「それに五人揃えば文化祭の人数問題も解け」
「あの、会長さんは黙っていていただけませんか!」
むやみにボケ役が増えるのは困るので、僕は慌てて会長さんの言葉を遮った。
ちらりと左を見ると、槇村さんは僕らひとりひとりの様子を興味深げに眺めていた。どうやら会長さんの問題発言はあまり気にとめていないようで、少しだけほっとする。
やがて彼女はふっと息を吐き、はにかんだように笑った。
「……半分強制加入だったけど。まあ……よろしく……」
僕はそれを見て――。
「こういう活動は久しぶりだよ。実際、数合わせでもあたしは構わないからさ」
――問題発言、思い切り気にとめているじゃないか!
会長さんは何が問題なのかまったく解っていない様子で微笑んでいる。吉田さんはまた窓の外を眺めているし、葉那に至ってはいつの間にか席を立って物置棚でお菓子を物色しているではないか。部員たちがまったくあてにならない中、僕は急いで弁明しようと口を開いた。
「あの、槇村さ……」
「いいよ渡瀬。部員が足りなかったことは、かの……吉田さんから聞いてる。そもそもそこの会長さんが、この前からでかい声で言ってるしね。ここ、文化系の部活が盛んなんだろ? それなら各部が人をほしがるのは当然だよ」
お、大人だ……。大人の対応だ……。
彼女の態度に、僕は感動にも似た何かを覚えた。
「
と、そこで今まで黙りこくっていた吉田さんが口を開いた。
まさか、先輩兼友人として何かフォローを入れてくれるのだろうか。さすが三年だ。
そう思って、吉田さんに期待のまなざしを向けると……。
「ここ、同好会。部活じゃないよ」
「あ、そうだったな。悪い悪い」
思ってた指摘と違った!
続けて吉田さんはふう、と息を吐くと、少し顔を赤らめて槇村さんの目をちらりと見て……って、あれ?
「あと、確かにここでは先輩後輩だけど、無理してさん付けとか、しなくていい」
「いや、あなたが言うべきはそこじゃないでしょ!?」
恐ろしいことに、ボケ要員が増えてしまった……。
当の吉田さんは、目を丸くして首を傾げている。さも、僕がおかしなことを言っているかのように。
「……? 渡瀬、なに?」
「もういいです……」
もうひとりの当事者である槇村さんはというと、なぜかやさしい表情を浮かべていて……。
「はは、変わらないよな、
「ん」
彼女たちは、今度こそ目を合わせて笑顔を見せ合った。
……なんだかいい話風にまとまってしまったんだけど。これって納得いかない僕がおかしいのかな。
それからも、槇村さんは穏やかに笑っていた。本当にあの冷たい目はどこへやら、昨日よりもさらに険が取れて柔らかくなっているのを感じる。その雰囲気のせいか、下級生の葉那も特に怖がってはいないようだ。
「……はあ」
なんだか僕はひとりでツッコミ疲れたが。
まあ、教室での様子やここで話した感じを見るに、槇村さんは見た目よりもずっと柔和でやさしい人のようだ。実際のところ彼女は昨日からたびたびクラスの女子たちに話しかけられ、それらに丁寧に対応するものだから早速モテているらしい。だからこそ、一番最初に見せた底冷えするような目が気になるのだが……。
「ま、参加するからにはきちんと活動するつもりはあるよ、会長さん」
――今は野暮なことを言うのはやめておこうと思った。葉那もなんだか楽しそうだし。
「ああ、そうそう」
こんな風に場がまとまったところで、槇村さんは思い出したように尋ねた。
「ところで、ここって何する同好会なの? 特に、文化祭に向けてさ」
それは僕もぜひ聞きたいところだった。
結局、
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