第2話
一度目の人生は、ごくごく普通の女子高生だった。
その時の名前は
茜音って名前が好きなくらいには、自分を肯定できてたし、社会の教科書に出てくる哲学者を斜め読みするくらいには、悩みを抱えていた。
「茜音って悩みとかなさそーじゃん」
窓から聞こえたそれは、わたしにとって、何気ない日常の中で突然誰かに刺されるような感触だった。
あるよ。友達のこととか、恋愛こととか。でも、決まってわたしは笑ってこう言う。
「そうだねー。わたしってレンアイとかあんまり興味ないからねー…」
「もったいなーい。茜音カワイイのに!」
「あはは…そう、かな?」
素直で、カワイイし、優しい。
わたしとは正反対だから。
「ねぇ!茜音!このゲームしってる??」
「なに、それ?」
夏希がフリマアプリのページをわたしに見せる。当時のわたしは乙女ゲーの乙の字も知らない、ただの女子高生だったので【蒼き瞳のプレアデス】なんてゲームとはほとほと無縁だった。ちなみに、蒼き瞳とプレアデスに因果関係はない(実体験)
「このゲームねー。面白い噂があるの。それはね、ある条件を満たすとこのゲームの世界に行けるんだって」
「へぇ…」
夏希は恋バナ以外にも、こういうオカルティックな話も好物だった。曰く「九十九パーありえない話だけど、でも、ちょっとはホントかもって思って生きてたら。たのしーじゃん」。オカルトは面白半分が丁度いい。わたしもそう思う。
「暇だしさ、茜音のお兄ちゃんのゲーム機パチって、やろーよ」
「いいね!やろやろ」
暇潰しを2480円で落札した。それがわたしの人生最大の過ちの始まりだった。
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