第32話
現在、我が
赤い髪の背の高い少女は
「うちの学校に出た幽霊の正体を暴いて欲しいんだ」
相川百華は
「……幽霊?」
「うちのクラスの委員長、
「確認しますけど、相川さんと益子さんはその幽霊を見てないんですね?」
俺は依頼人二人に尋ねる。
「……見ていない、デス」
益子怜がコクリと頷く。
「ちなみにその織幡さんって子は、どういう状況でどんな幽霊を見たんですか?」
「あれは放課後、文化祭の準備をしていたときだった。外が暗くなり始めた頃、急に委員長が窓を指差したんだ。そこには髪の長い、血みどろの女子生徒が逆さまの状態でこっちを見ていたんだって」
「ひゃあああッ!」
「…………」
情けない声を上げたのは俺ではない。小林だった。
小林はこれまでに幾つもの殺人事件を解決してきた名探偵である。が、そんな小林にも一つ弱点があった。
――お化けである。
血も死体も殺人犯も恐れない小林であるが、霊的なものだけはどうしても苦手なのだった。
本人は幽霊など存在しないと
「……小林、怖いんだったら別に無理してここにいなくてもいいんだぞ」
「だ、誰が何を怖いって? 大体、幽霊など実際にいるわけがないのだ。きっと誰かの
小林がブルブル震えながら、自分に言い聞かせるように言う。
「あたしらだって、当然それくらいは考えたよ。あたしたちのいた上の階の教室を見にいったけど誰もいなかったし、あの高さから逆さ吊りになるなんて単なる悪戯にしちゃ度を超えてるよ」
「幽霊が出た他に、学校で何か異変はありませんでしたか?」
「……異変ってわけじゃないけど、調べてみたら過去にうちの学校で飛び降り自殺があったらしいしんだ。髪が長い女子生徒で、緑のリボンってとこまで委員長が見た幽霊と特徴が一致してるって」
「ガチカチガチガチ」
隣を見ると小林が歯を鳴らして震えていた。正直、かなりうるさい。
「何にせよ、情報が不足しているというのが現状ですね。これ以上詳しく調べるには、やはり実際に現場を見ておく必要があるでしょう」
「それじゃあ、引き受けてくれるのか?」
「やれるだけのことはやってみましょう」
「……わ、私は反対だな。べ、別に幽霊が怖いからではないぞ。そんなものはこの世に存在しないのだ。誰かの悪戯か、何かの見間違いに決まっている。そんなものを、わざわざ調べに行くだなんて時間の無駄……」
「やかましい」
俺は小林の口にチュロスを突っ込んで黙らせる。
「……ええと、現場にはこの俺、鏑木が行くのでご心配なく」
「……はァ」
依頼人二人は不安げな面持ちで溜息を吐く。
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