第33話
「どうだー
俺は小林とテレビ電話を繋いだ状態で、四階の教室から紐で結んだスマホを吊り下げている。
依頼を受けた翌日、俺は
現場を調べるにはちょうどいいともいえるが、他に幽霊を見たという生徒を探そうと考えていた俺としてはあまり都合が良くなかった。
「それはあんまり意味ないと思うよ。時間結構遅かったし、あのとき校舎に残ってた生徒はあたしら三人くらいだったし。探しても多分見つからないと思う」
「……私もそう思う、マス」
ともあれ一度現場を見ておこうということになり、二年四組の真上に位置する空き教室に来たのだった。
「やはりここから吊り下がって二年四組を覗いていたというのは無理がある」
スマホ画面の中の小林は仏頂面でそう言った。
「そう思う根拠は?」
「無論、危険なのもあるが、もう一人が幽霊役の女子生徒を引き上げたとなると、ここを立ち去るまでに結構な時間がかかってしまう。
「……五分、くらい?」
益子が自信なさそうに答える。
「だったらタイミングとしてはギリギリアウトですね。四階の上は屋上になっているようですが、そこへ行く方法は?」
「昨日話した過去に自殺した女子生徒ってのが、屋上への扉をピッキングしてこじ開けたんだって。それからは屋上への扉は鍵が二つ付けられて、ピッキングなんかじゃ開かないものに取り替えたって話だ」
「ならばそれは考える必要はないでしょう。そうなると残された可能性は、女子生徒の幽霊は命綱なしでここから下まで降りたということになります」
「いやいや、それはないっしょ。文化祭の準備をしていたあの日、あたしらがいた真上の教室で飛び降り自殺があったってこと? でも地面に死体なんか残ってなかったし、最近うちの生徒が亡くなったって話も聞かないけど?」
「本当に?」
小林は今や完全に何時もの調子を取り戻していた。織幡
「亡くなった生徒に心当たりがなくても、行方がわからなくなった生徒はどうですか?」
「あ」
相川百華が思わずといった様子で声を上げる。
「……いやいやいや、軽音部の先輩に一人いるけど、でもその人はしょっちゅう家出とかする人だし、仲のいい友達にはちゃんと
「頻繁に家出を繰り返しているのなら、家族もいちいち警察に届けを出していない可能性が高いですね。InstagramやTwitterにしても、本人が送信したものとは限らない」
「……アンタさァ、何が言いたいわけ?」
「おそらく家出したことになっている先輩は既に何者かによって殺されていて、殺人現場はこの教室の中でしょう」
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