第21話
俺、
当たり前の話だが、殺人事件には必ず死人が存在する。名探偵が謎を解き、事件を解決しても、死者が生き返るわけではない。犯人の罪が軽くなるわけでもない。
事件が解決しても周囲の人間の悲しみや心の傷は、決してなくならないのだ。
〇 〇 〇
鏑木探偵事務所は今日も開店休業状態。
「……小林、お前はあの結末で本当に良かったと思っているのか?」
「何のことだ?」
小林はテレビに視線を向けたままだった。
「例の
「……何が言いたい?」
小林はやはりこちらを見ずに言う。
「
「ふん、それがどうした? ならば大崎が傷つかないよう、殺人事件を見て見ぬふりするのが正しかったとでも言うつもりか?」
「……そうじゃない。そうじゃないが、もっと丸く収めることもお前ならできたんじゃないのか、と思ってな」
小林はそこでようやくこちらを振り返り、軽蔑したように俺を睨みつける。
「鏑木、お前が私に何を期待しているのかは知らないが、
「……傷を負う?」
「当事者と同等とまでもいかなくても、私自身も何かを失わなければ、探偵として他人の秘密を暴く資格はない」
――そうか。
小林としても、折角仲良くなれた同級生から恨まれるのは辛いことだったのだ。
俺は自分の無神経さを恥じた。
「そして鏑木、お前は少々物事を深刻に捉えすぎるきらいがある」
カランコロンと鈴の音がした。
事務所のドアが開いたのだ。
そこには、大崎
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます