恋する乙女は美しい
————カランカラン。
ドアベルが鳴り、1人の若い女性が店に入って来た。
ユーマはすぐに入り口に向かい、キョロキョロと店内を見回す女性に声をかける。
「いらっしゃいませ。ゼロカフェへようこそ! 何名様でしょうか?」
「ひ、1人です⋯⋯」
自信なさげに小さな声で話す女性は、ブラウンの髪に青い瞳という、この街ではごくありふれた
「かしこまりました。では、お席にご案内しますね」
ユーマはにっこりと笑って、一人用の席まで女性を誘導した。
「こちらのお席へどうぞ」
そう言って、
「メニューはこちらですが⋯⋯⋯⋯」
(この人、オレたちのお客さんだな)
女性客のようすからそう見抜いたユーマは、密かにほくそ笑む。そして、メニューを
「お客さん⋯⋯お名前は?」
「⋯⋯⋯⋯え!?」
突然のことにビクリと肩を揺らした女性は戸惑いながらも「リリアーナ⋯⋯」と己の名を口にした。
「リリアーナさん、僕の名前はユーマ。⋯⋯突然だけど、リリアーナさんは何か悩んでることがあるんじゃない?」
「なぜ⋯⋯?」
思いがけない質問に意味が分からないという顔をするリリアーナを、ユーマは
「貴女を見ていたら分かるよ。僕は、リリアーナさんの力になりたいんだ」
リリアーナの顔がみるみるうちに赤く染まっていく。ユーマは自身の容姿が女性を
ここまで来れば後もう一押しと、リリアーナの手に優しく自らの手を重ねる。
「絶対にここで聴いたことは口外しない。リリアーナさんの秘密は守ると誓うよ。ね? だから僕に話してみませんか?」
ユーマは
すると、ぼうっと
「⋯⋯実は————」
✳︎✳︎✳︎
「そんなことがあったんだね」
「ええ⋯⋯」
話し終わる頃には虚ろだった瞳に光が戻り、リリアーナはハッと我に返る。
「私⋯⋯なんでこんなことを貴方に⋯⋯⋯⋯」
心底混乱したようすのリリアーナを見たユーマはクスリと笑って口を開いた。
「話してくれて嬉しいよ。じゃあ、僕はこれから紅茶を
ユーマはそう言って、パチンと軽くウインクをする。
未だに困惑しているリリアーナは、少しでも落ち着きを取り戻そうと、テーブルの上に置いてあるグラスの中の水を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます