第18話
柊との関係が始まって二週間は経っただろうか。なんとなくだけど、お互いの距離感に慣れてきた。少し冷たい態度やキツい言葉遣いも同様だ。
人狼化の制御のほうについては、芳しくない。
予め柊との接触やもしかしたら、という状況に陥る前の準備、もとい心構えをしていれば大丈夫なんだけど、突発的なことには弱い。
「大上くん。あなた最近中々人狼化しなくなってきたわね」
学校。休憩時間のちょっとした隙間でモフりたい衝動に駆られた柊と体育館の壇上裏で人目を避けて隠れるようなやりとり。なんだかイケナイことをしている気分だ。
「俺にとっては喜ばしいことなんだけどな」
「そうね。ところ構わず誰彼見境なく反応してしまっていた最初の頃とは大違いだわ。飼い始めの頃手を焼いていた主がキチンと言いつけをきくようになったペットを感慨深く眺めているのと同じ気持ちよ。あなたが目の前にいなかったら泣いていたわ」
嘘つけ。内心毒づく。
「喜ばしいことなんだけどね。私個人としては不満よ。お陰で思う存分モフれなくなっているのだから」
やっぱりその件に関して 恨みつらみの部分が大きいんだろう。だけど俺としてもどうしようもない。
柊は家に来てから、少し変わった。無理に人狼化させることに拘らなくなったという か、ところ構わずモフろうとしなくなったなんてことはない。むしろ前にも増して激しくなっている。
それは俺が人狼化しにくくなっているのと比例している。人狼化しにくくなればなればなるほど柊は存分にモフれなくなっているという図式になっているからだ。
なんだろう、このジレンマ。
「このところ授業にも集中できないし、夜も眠れなくなっているのよ。それだけストレスが溜まっているの。そして気がつけばあなたのことを考えているのよ。食事も満足に手がつかないほど」
字面だけ見たら完璧に恋する乙女なんだけどなぁ。
「だけど、こればっかりはしょうがないじゃないか」
「あなたにとっては喜ばしいことでしかないわよね。でも私にとっては死活問題なのよ。それに、まるで女性としての魅力がない、私に飽きたと示されているみたいじゃない」
「そういうことじゃなくて・・・・・・なにか別の手段を考えたらどうだよ」
「別の手段? それって一体ーーああ、なるほど。そういうことね」
俺は暗にモフモフを控える方向、同じように耐えたり改善を志してはどうかと伝えたかった。
「変態」
何故かいきなり罵倒された。
「つまりもっと過激なことをしろということなのでしょう」
「なんでそうなる!!」
曲解がエグすぎる。
「でも、お生憎様。私は自分の理想とするモフモフを味わえるのなら喜んで貞操だろうとなんだろうと捧げる覚悟はできているの。残念だったわね。ふっ」
「ふっじゃねえよ! なに勝手に思い込んで人を鬼畜に仕立てあげてるんだ! というかそんな覚悟捨てちまえ!」
「いいこと? 例え私の身体を自由にできても心まで自由にできるとおもわないことね」
「昨今の女騎士か! 俺はオークでもゴブリンでもねぇんだぞ!」
「当たり前じゃないそんなこと。あなたは人狼でしょう?」
く、この・・・・・・!
「そんなこと言っといて、いざとなったらしり込みするだろ!」
「あら、信じられないのね。じゃあ証拠を見せてあげる」
そう言うなや。柊はワイシャツのボタンを一つ一つ外しはじめた。白い素肌と下着がチラッと見えてしまい、くるりと背中を向けた。
「なにやってんだこの痴女!」
「失礼ね。私はペットの目の前で着替えたり裸になって、興奮したことなんて一度もないわ」
「してたらヤバいだろ!! そりゃあ俺はペットじゃねえからな!?」
「いい? 大上くん。これはあなたのためでもあるのよ。人狼の体質改善、それによる他者との円滑なコミュニケーションのきっかけに繋がるのよ。何故拒むの」
「だからって飛ばし過ぎだからだろ! もう少しゆっくり段階踏めや!」
「とにかく。もう時間がないのよ。それじゃあ私が充分にモフれないーー時間の無駄。そしてはだけ損じゃない」
「全部お前の都合じゃねぇか! てゆうかやっぱそれが本音か!」
こいつのおもいどおりになんてさせてたまるか。一種の意地が芽生えた。
「そう。なら強行手段ね。これならどうかしら?」
いきなり口のマスクを外され、頬に手を添えてきた。ひんやりとした冷たいスベスベの触感。そしてそのまま頬をすり、すり、とゆっくり撫でていく。擽ったさとむず痒さが合わさってなんともいえない心地、敏感にピクピクという反応をせざるをえず。
「な、なにやってんだ!」
「実力行使」
否が応でも、ムズムズとした衝動が高まっていく。視覚を閉じているからか残りの五感がいつも以上に吐息、香り、肌に触れる掌。一切が鋭敏な刺激となってクラクラと沸騰しそうだ。
ついには堪えきれなくなって払い除けようとしたために目を開いてしまう。そこには水色のブラジャーと控えめな胸の谷間。
ついと視線を上げると、バッチリ真正面からぶつかり合う。
隠しきれていない羞恥に染まっていく表情。憂いと悔しさがない混ぜになった切なそうな瞳。反応に縫いつけられたように、目が離せない。
「・・・・・・」
「スケベ」
「!」
それがトドメだった。
我慢に我慢を重ねてギリギリ耐えきれていたところに、大きな後押しを受けた形で破られた。
「ふん。大きなことを吐いていたけど、あなたも所詮は只のもふ――――♪♪♡♡」
「せめて最後まで言い切れぎゃああああ!!」
待望していたものを眼前に言語能力、自我、尊厳、面貌。一切が崩壊した柊に蹂躙されていく。
ヌッポヌッポチュブチュブちゃくちゅくヌメヌメじゅるじゅるごくごくでれんでろんのぐっちょぐちょんぐっっぽぐっぽジュリュリュ・・・・・・・・・ゴクゴク、ああああ――――♡ んはっ♡ ああっ♡ ギュイイイイイイン!! ブボ、ブボボボ・・・・・・・・・♪ ヌチョネチョ♡ ポオンポオン、しゃぷしゃぷ、ぐっぽぐっぼシャブシャブチュッチュシャップカミカミハムハム♡
ただ皮膚で味わうだなんてまどろっこしい! とばかりに這い回る舌が全身を駆け巡る。蛞蝓か蛇が体中で踊り狂っているみたいだ。しかもヌルヌルベチョベチョの体液を撒き散らしながら。
それも支離滅裂な言葉。いや、雄叫びか嬌声か。正体不明のモンスターが発する鳴き声にしか聞こえない音を発し続けている。
狂気しか垣間見れない。
ここ最近の学校での柊と俺は、大体こんなかんじになっていいる。
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