第8話:デートの練習って、相手が人形でもいいですよね?
「ここが人形屋と呼ばれるところか…」
あら、お店の外で言ったり来たりしている人がいますね?お客さんでしょうか?
「あの、うちにご用ですか?」
「あっ…この店が人形を貸し出してくれる店で間違いないのか?」
「はい、当店が人形の館で間違いありません。そして私が店主のサーリアです。」
「そ、そうか…では、人形を借りたいのだが相談にのってくれるか?」
「もちろんです。どうぞ中にお入り下さい。」
相談からとは、なかなか良いお客さんですね…常連さんになってくれると良いのですが…
「はぁ…デートの練習相手ですか…」
「ああ、女性と付き合ったことなどなくてな…どんなところに行ったら喜ぶかとかがわからなくて…」
「それって、人形相手で練習は無理なのでは…」
「ここならどんな人形も貸してくれると聞いてきたのだが…やはり無理なのか…」
人間相手に練習して下さい…でもどんな人形でも貸すのはうちのモットーです。それを無理と言われるのは嫌ですね…
「一応、あなたのお相手を出来る子が2人ほどいますが…」
「いるのか?」
「ええ、すごく我が儘な娘とすごく怠惰な娘です…」
「それはまた極端だな…」
まぁ、素晴らしく出来が良い代わりに性格的に破綻してしまった娘達ですからね…本当に性能はとてもいい娘達なのですけどね…
「どうされますか?デートのお相手として務まるかどうかはわかりませんが、貸し出しが出来る娘は現在2人だけですね…」
「うむ…さすがに怠惰な娘は無理があるな…我が儘な娘の方がいい気がするな…」
「わかりました。それでお相手はどの様な娘なのですか。村娘ですとか、貴族だとか…」
「鍛冶屋の娘でね、気立ては良いんだがちょっときつくてね…」
「なるほど…それなら少し我が儘な娘でも大丈夫そうですね。ミリー、聞こえてましたか。」
『えぇ~かぁさま…私は我が儘じゃないですよ。自分に正直なだけですぅ~。』
それを我が儘というんですよ…本当にそんなところは人間っぽいのですから…
「あの子が人形なのか?」
「ええ、恥ずかしながら出来の悪い子です。」
「どこが出来が悪い物か、まるで人間じゃないか。」
『そうですよねぇ、お客様はよく分かってらっしゃいます。』
「ミリー、そう言うことは言わなくていいの。」
『はーい…』
だんだん人間っぽくなってきますね…今度オーバーホールして、教育し直しましょうか…
『かぁさま…変なこと考えてませんか?』
「いいえ、ごくごく普通のことを考えてますよ。あなたのメンテナンスとか再教育とか…」
『ま、マスター今回のお仕事を教えて下さい…』
そんなところも人間みたいですよ…
「ミリー、あなたはこの人の恋人としてデートをしてきなさい。」
『デートですか?我が儘とか言ってもいいのです?』
「ほどほどになさい。後で確認しますからね。」
『は、はい。マスター』
よほど確認されたくないようですね…普通でしたらかぁさまと返事しているところですよ…
お相手の情報を色々細かく聞いて、それっぽく振る舞うようにミリーに言い聞かせます。
しっかり言っておかないと何をするかわかりませんからね…
「それで、デートの予行演習はいつになさいますか?」
「明日でも構わないだろうか?」
「はい、構いませんよ。それで貸出期間はどうなさいますか?」
「ああ、その日のうちに返しに来るよ。」
「半日ですね。では銀貨6枚となりますがよろしいですか?」
1日貸し出しで金貨1枚ですからね…半日なら銀貨6枚で良いでしょう。
「わかった。では明日の朝迎えに来る…」
「ミリー、あまり変な物をねだったりしてはいけませんよ。」
『宝石とかはいけませんか?』
「いけないに決まってるでしょ…」
確かに女の子でしたらアクセサリーの1つもねだるでしょうが、宝石はいけません…
『では聞きますが、何なら良いのですか?』
「そうですね…相手の負担にならない程度のアクセサリーとかでしょう。後は花とかが欲しいというのはいいと思いますよ。」
『なるほど…かぁさまはデートとかしたことはあるのですか?』
「ミリー…明日の朝までにしっかりと再教育しましょうか…」
『ご、ごめんなさい…かぁさまがデートしたことないなんて知らなかったです…彼氏もいたことないんですよね…ごめんなさい…』
あなた、一言余分ですよ…明日はしっかりデートしてくるんですよ…
今回の収入
汎用ドール…銀貨6枚
貸し出し 1体 半日
合計 銀貨6枚
追記
デートの予行演習は上手くいったようで、デート本番も上々だったそうです。
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