第4話 ご飯食べてみる
目を覚ました時にはすでに一時を回っていた。昼は日差しが強くなり、窓から流れる光は眩しいほどだった。
「あふ……。あ、私……寝ちゃってた……」
すずは思い出して顔を赤く染めた。
「あっ……。そ、そうだった……君が、私の首のところに……き、きききき、キスしてきたんだ……。それで私、びっくりして気絶しちゃったんだ……」
ふん、と鼻を鳴らして知らんふりをする彼。すずは無責任な行動をとり、なおかつ反省の色を示さない態度が気に食わなかった。
「も、もうっ! これでキスマークが付いたらどうする気なのっ……! お母さんたちに見られでもしたら、絶対に怒られちゃうじゃん……!」
また鼻を鳴らす彼。『なら見られないところならいいんだよな?』と強い口調で言ってきた。
「えっ、えぇ……? ちょ、何言ってるの……? どこでもいいとか、そういう問題じゃ———」
腰を上げてすずに詰めよる彼に、なすすべなく覆いかぶさられてしまった。すずはこの状況に戸惑いながらも拒絶はしない反応だった。
「『どこでもいいってことだろ?』って……。うん、いい、よ……」
受け入れる姿勢のすずを見て、彼はすぐに立ち上がる。
「あれ……? えっ……?」
困惑しながら台所に入っていく彼。
「な、何してるの……? いや、つづき……は……?」
彼は『何言ってんだお前?』とすずの発言に理解できない様子。それより腹減ってんだろ飯作ってやるよ、と続けて言った。
「く……うぐ……くふぅ……」
恥ずかしい思いをしたすずだった。
****
ほらよ、と差し出された皿。盛り付けられたのはドーム状のお米だった。それもただのお米じゃない。黒色のおかげが入っていて、そこかしこに焼き豚のカット肉が敷き詰められている。
「チャーハン……だね」
卵まで入って彩豊か、とても美味しそうなチャーハン。
「すごいね。君、自炊もできるんだ……」
元々得意だったからな、とそっけなく言ってみせた彼。
「ん。いただきます……」
一口食べて、感想が自然と出る。
「おいし……」
彼は口角を上げて笑った。
「『だろ?』って……。まあ、君が作ったものだから、それはそれはおいしいごはんだったけどさ……」
もじもじと何か言いにくそうな仕草をしたすずだった。
「私は、まったく料理できないし……いつも作ってもらってばっかりだから……。なんだか憧れちゃうなぁって……」
それにね、とすずは続けた。
「君みたいな男の子が旦那さんだったら、料理教えてもらえるのかなぁって……思って……。えっ……あれ?」
気づいた頃には遅く、彼はからかおうと意地悪な表情にすでになっていたのだった。
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