第5話 色んなことを聞いてみる

 散々からかわれて顔を真っ赤にしたすずは、不機嫌そうにそっぽを向いて頬を膨らませて、口を聞かないようにした。


「ふんっ……。いじわる……」


 自分で言ったことだろ、と少し笑いながら彼が言う。続けて『言ったこと、やったことにはちゃんと責任持てよ』と何やら意味深なことまですずへ向けて伝えた。


「君はそうやって自分のペースに持ち込んでいくんだから……。そうやって自分が中心の世界にしていくんだから……そりゃあ生きやすい世の中なんだろうね、君は……」


 彼が問う。お前は生きづらいのか、と。率直に正直な気持ちで、興味本位ではなく真剣に、彼は気になって心配してすずに聞いた。


「うん……。私、口下手だし、頭もそんなに良くないし、クラスではいつも一人ぼっちだし、暗いし、面倒くさい子だし、何より浮いてて陰気だし……。学校……あんまり好きじゃないかな……」


 彼は『へぇ』と相槌を打った。『学校で一緒にいられるやつとかいないのか?』という地雷を踏み抜く質問に、すずは言いづらそうになる。


「いないといえば嘘になるけど、かといって、いると完全に断言できるわけではないから……」


 すずの表情からして何かがあると勘づいたのだろう。彼ははっきりとズバッと言った。


「えっ……。今、なんて……」


 もう一度彼は言う。


「は、『ハブられてんのか?』って……? いや、そんなわけじゃないけどさ……。なかなか時間がないというかさ……」


 本当に時間がないだけ、とすずが付け加えた。


 時間がないという返しに違和感を覚えた彼は全てを理解する。一緒にいられる時間、会話する時間、それらの時間全てが他のものにあてがわれていると言うこと。


 分かった分かった、と簡単に答えを出した彼。


「な、何が分かったの———」






『お前だけ彼氏いないんだろ』






「スゥー……」


 しばしの沈黙。気まずい空気。そう思っているのはおそらくすずだけのはずだが。


「仕方ないじゃん……。だって私、彼氏できるくらいに仲のいい子、君くらいしかいないし……。そんなの……仕方ないじゃん……」


 受け取り方次第では誤解する発言。しかし彼は鈍感すぎて気づかなかった。言った本人はすぐに顔を赤らめた。


「い、いやっ……! 今の違うのっ……! あれは……」


 うーん、と悩みに悩んだ彼が言う。


「『彼氏作るか』って、な、何言ってるの……。それより、さっきの私のあれだけど……」


 頭の上にクエスチョンマークが上がっていてもおかしくないほどの困惑顔。


「スゥー……」


 鈍感な彼にまた不満げに頬を膨らませたすずだった、

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