第3話 煽ってみる
そんなこんなで始まった彼VSすずのスト2対決。すずは女の子キャラクターの春麗を使用した。彼はガイル。
「負けないからね……。久しぶりだけど……」
彼は鼻で『ふん』と笑った。できないことを口にしているすずがなんだかおかしかったのだ。
それなりに何回か対戦して、迎えた五回戦目。これまで四回は全てすずの敗北。それも全部サマーソルトにやられている。
いい加減対策しろよな、とアドバイスをする彼。すずは強がって『こ、これでいいのっ』と返した。
「わ、私には必殺技があるから……だ、大丈夫……」
困惑した彼の顔がスタート前の暗転する画面に映った。そして始まる。
すぐにすずはその必殺技を使った。
「ふ……ふぅ〜……」
『ッ!?』
ゾワゾワと耳の感触が異質なものだと感じた彼は耳の方に手を動かし、同時にすずの方を驚いた様子で向いた。
「あ」
すずの春麗の攻撃が当たった。彼の体力ゲージはゼロとなり、この一戦のポイントはすずのものとなった。
ようやく一本目を先取したすずは、ラウンドが切り替わる瞬間の映像が流れてくる画面を見て、その間に彼の顔を見た。
「や、やった……。かった……! 勝った、よね……? 私勝ったんだよね……?」
ま、まじか、と彼は驚きの表情を隠せていない。
「や、やった。ようやく私が勝ったんだ……。今の今まで一度も勝てなかったのに、やっと私が勝てたんだ……!」
すずは喜びのあまり何度も画面を指差しては、彼に正真正銘の勝利であることを伝えんとしていた。そんな子供じみたすずの行動が可愛かったのか、それともはしゃぎすぎていて気に食わなかったのか、彼は目を合わせずに静かに『まぐれだろ』と言った。
「ど、どうかな……! あんまり帰ってこないから腕が落ちたのかもね……! 私も対して上達なんてしてないけれど……」
珍しく自慢げに鼻を高くしているすずは、勢いのままに彼の耳元で言ってしまった。
「これをずっとしてれば勝てちゃうんだね……。良いこと発見しちゃったぁ……」
無言となる彼。すずの首筋をじっくりと見つめて、視線を感じたすずに指摘される。
「もう始まってるよ? これだと私が———」
瞬間、すずの首筋に当たる。柔らかい、そして触れている時に音が鳴った。艶かしくて水っぽいような音。
「えっ……な、何して……。そんな首筋、なんて……」
彼はすずの首筋に口づけをしていたのだった。
すずは動揺を隠さず、何が何だか分からない状態でゲームをして、当然のように負けた。半分くらい意識の状態はショートしたようだった。すぐに寝転んでしまった。
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